オレオサイエンス
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9 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集総合論文
  • 河合 武司
    2009 年 9 巻 5 号 p. 165-173
    発行日: 2009/05/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    界面活性剤分子の吸着挙動は界面科学の重要な問題である。近年, 気液界面や固体表面の単分子膜は生体膜, 二次元のパターン形成, 光応答挙動あるいは分子認識などのモデルシステムとして大いに関心が持たれている。不溶性単分子膜や固体基板上の単分子膜のミクロな構造や形態の解明にはさまざまな測定手法, たとえばX線回折法, 非線型分光法, ラマンや赤外分光法, さらにはブリュースタ顕微鏡法などが用いられてきた。一方, 気水界面に吸着した水溶性界面活性剤の単分子膜の解析法は限られている。本総説では, 非破壊で分子のコンフォメーションに敏感な振動分光法を界面活性剤単分子膜のキャラクタリゼーションに適用した例について紹介する。
  • 酒井 裕二
    2009 年 9 巻 5 号 p. 175-182
    発行日: 2009/05/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    エマルション化粧品を皮膚上に投与すると, エマルション膜が形成される。この状態がエマルション化粧品の保水性, 閉塞性, 使用感等に大きく影響を与えることから, エマルション膜の状態の解明を試みた。ポリオキシエチレン系界面活性剤を用いたエマルションのエマルション膜は, エマルション滴が消滅していた。一方, ポリグリセリン脂肪酸エステルの方は, エマルション滴が維持されていた。保水性, 閉塞性は共に良好な結果を示した。これを連用することで, 角層状態も改善した。またアルギン酸プロピレングリコールエステルを用いたエマルション膜は, 上層に水和ゲル膜を作成した。そのため, 油相量を多くしても, べたつき感がなく, 良好な使用感を得ることができた。
  • 石井 宏明, 山田 健一
    2009 年 9 巻 5 号 p. 183-188
    発行日: 2009/05/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    サンスクリーン剤の塗膜の構造に着目し, 特異的な膜構造を形成するための制御方法とその機能を検証した結果に関して述べた。耐水性を向上させる事を主たる目的として, 表面にハスの葉のように周期的な微細凹凸構造 (MPUS) を形成するサンスクリーン剤を開発した。MPUSは, 塗膜を水に接触させる方法および溶媒を揮発させる方法の2通りの方法で得る事ができた。効果的にMPUSを形成させるためには, 粉体の分散性と溶媒の揮発性を調整することが重要であった。得られたMPUS形成型サンスクリーン剤は, 従来の擾水型サンスクリーン剤と比較し, 耐水性が高く, 海水浴等の水に晒される状況においても高い紫外線防御効果を発揮することが明らかとなった。また, 高耐水性のみならず, 特徴的な光学特性, 引っ張り特性を有した。
  • ポリジメチルシロキサン超薄膜の特異な摩擦・潤滑機構
    山田 真爾
    2009 年 9 巻 5 号 p. 189-195
    発行日: 2009/05/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    表面力測定装置 (SFA) を用いて, ポリジメチルシロキサン (PDMS, Mw≈80000) 超薄膜の摩擦特性を評価した。PDMSの液滴を雲母基板問に挟んで垂直圧力によって薄膜化すると, 分子は表面問から排出され, hard-wall膜を形成した。せん断中の膜厚と摩擦の測定から, PDMS分子は薄膜中で規則的な層状構造を形成し, 分子レベルでの摩擦は配向したPDMS分子層の界面で生じていることが明らかになった。多くの炭化水素系の高分子液体は薄膜状態で乱れた膜構造を有し, せん断時にレオロジー的な応答を示すのに対し, PDMSの膜構造と摩擦特性はそれとは根本的に異なるものである。SFAを用いた摩擦の測定により, PDMS薄膜の分子レベルでのユニークな摩擦機構が明らかになったが, これは, PDMSを用いた潤滑表面における巨視的な摩擦現象を理解する上でも有用と考えられる。
  • 田村 隆光
    2009 年 9 巻 5 号 p. 197-210
    発行日: 2009/05/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    泡膜は膜厚みに応じてその安定性を支配する主因子が変化する。泡膜の排液の駆動力には重力, キャピラリー圧, 表面張力があり, 排液はキャピラリー圧が泡膜の分離圧とつりあって平衡膜厚みが示される。泡膜が厚い状態では, 流体力学的な液体物性に依存して排液が進む。その過程で熱ゆらぎが観測され, これが激しくなると局所的に液膜の両而が接触して黒膜を形成する。薄膜となると平衡膜厚みに近づくにつれ分離圧効果が現れるため, DLVO理論に従って電気二重層反発力とファンデルワールスカの合算で膜厚みが決まる。気泡は高い表面張力を持つため疎水性と考えられ, 疎水性相互作用が合一の頻度を高める。界面活性剤濃度が低くなると, 気泡の疎水力が合一で重要な役割を担い, それが高くなると界面活性剤の表面濃度勾配による膜弾性が重要となる。本稿では, 水平膜と垂直膜を用いた界面活性剤の単一液膜物性を, 流体力学および平衡状態解析から明らかにした膜研究を紹介する。応用事例としては, 泡膜安定化に用いられる種々の添加剤の機能をまとめた。
  • 杉原 伸治
    2009 年 9 巻 5 号 p. 211-219
    発行日: 2009/05/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    近年のリビング重合をはじめとする精密重合技術の発展により, さまざまな機能性高分子の分子設計が可能になっている。そのような高分子合成技術の発展は, ナノ粒子の合成に少なからず影響を与えている。本稿ではまず, ナノ粒子を均一型, コアシェル型, ハイブリッド型の3つに分類し, それぞれの特徴をまとめた。その中でもとくにコアシェル型に注目し, 精密重合によって合成されるシェル架橋型ミセルを取り上げた。このシェル架橋型ミセルは, カプセル特有の内包・放出機能だけにとどまらず, インテリジェント乳化剤, ナノキャリアー, ナノリアクター等, 化学的な高機能剤としての応用が展開されている。このような精密重合技術に基づいた “ナノカプセル化技術” を中心に, われわれの成果も含め概説する。
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