プラスマローゲンはリン脂質のサブクラスの一種で,動物組織全般に広く分布し,食品としてもある程度日常的に摂取しているリン脂質である。しかし,その吸収に関しては不明な点が多い。またプラスマローゲンは,ビニルエーテル結合による抗酸化作用が考えられ,リポタンパク質中のプラスマローゲンによるコレステロール酸化抑制および動脈硬化症の予防効果が示唆されている。我々は,長年,このリン脂質について研究をおこなってきた。本稿では,プラスマローゲンの吸収特性と血中プラスマローゲンの動脈硬化症のバイオマーカーとしての可能性に関して紹介する。
古くから 「規則正しい食生活は健康に秘訣だ」 といわれているが,最近になり時間生物学の進歩が概日時計の転写ネガティブ・フィードバック制御を明らかにしてきた。体のすべての細胞がその時計システムを備えており,肝臓の時計はインスリンの作用を介して摂食のタイミングにより同調を受けることが明らかとなった。そして,そのタイミングが不規則になると例えばコレステロールの異化代謝の律速酵素であるCYP7A1のリズムの異常を介して血中コレステロール濃度を増加させてしまうことが明らかとなった。 さらに,摂食タイミングは肥満など脂質代謝に大きな影響を及ぼすことも明らかとなってきた。
糖尿病患者数の増加は世界的な問題となっており,2035年にはおよそ6億人に到達すると予想されている。特にアジア太平洋地域での2 型糖尿病患者数の増加は顕著であり,アジア人特有の低インスリン分泌能という遺伝的背景に加えて,食習慣の欧米化や身体活動量の低下といった生活環境の変化がその主因と考えられている。本邦を含む,東アジア諸国では脂肪摂取量が半世紀で約3倍に増加しているが,脂肪摂取量の増加が2型糖尿病の発症を増加させるか否かについては現在も一定した見解は得られていない。 本稿では,脂肪摂取と2型糖尿病発症に関する臨床的・基礎的な知見を整理すると共に,筆者らが選抜交配により作出した高脂肪食投与時の耐糖能が異なる新規モデルマウスの解析結果を紹介し,脂肪摂取量の増加という現代の食環境下での2型糖尿病発症を決定する要因について考察したい。