オレオサイエンス
Online ISSN : 2187-3461
Print ISSN : 1345-8949
ISSN-L : 1345-8949
12 巻, 10 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集総説論文
  • 眞岡 孝至
    2012 年12 巻10 号 p. 485-494
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/14
    ジャーナル フリー
    KuhnとKarrerによるβ-caroteneの最初の構造決定(1930年)から2004年までに約750種の天然カロテノイドが報告されている。NMR,MS,HPLCなどの分析機器の進歩によって極微量な天然カロテノイドの構造決定が可能となり毎年いくつかの新規天然カロテノイドが報告されている。本論文ではカロテノイドの定量分析,同定,構造研究に用いられる抽出,分離精製,化学的誘導やHPLC,UV-VIS,MS,NMR,CDなどの機器分析について具体的な例を示しながら解説する。
  • 小竹(奈良) 英一, 長尾 昭彦
    2012 年12 巻10 号 p. 495-501
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/14
    ジャーナル フリー
    カロテノイドは,抗アレルギー,抗がん,抗肥満作用等の特徴的な生物活性を示すことから,高い注目を集めている。日常的な食生活では,約40種類ものカロテノイドが摂取されているが,いくつかのカロテノイドと,それらの代謝産物と考えられるものだけがヒト組織中に見出される。このような特定のカロテノイドだけが吸収・蓄積されるメカニズムについては良くわかっていない。カロテノイドのような脂溶性成分の腸管吸収機構は,従来,単純拡散によるものと考えられてきたが,近年では,吸収受容体による促進拡散の関与が報告されている。このような受容体の特異性により,特定のカロテノイドが選択的に吸収されている可能性が考えられる。さらに,吸収後の代謝変換等の体内動態もカロテノイドの蓄積に大きく影響している。本稿では,食品カロテノイドの腸管吸収と代謝について最近の知見を紹介する。
  • 前多 隼人
    2012 年12 巻10 号 p. 503-508
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/14
    ジャーナル フリー
    フコキサンチンはワカメやコンブなどの褐藻類に特徴的に含まれる,カロテノイドの一種である。近年,抗肥満,抗糖尿病,抗酸化,抗がん,血管新生抑制作用など,フコキサンチンの様々な生理機能が報告されている。これらの機能の中でも脂肪組織を介した抗肥満,抗糖尿病作用は特に注目されている。 フコキサンチンは,肥満による様々な疾患の原因となる白色脂肪組織の肥大化を抑える。その作用機構としてuncoupling protein 1(UCP1)タンパク質の,白色脂肪組織での異所性の発現誘導が考えられている。また,脂肪組織から分泌され体内の組織のインスリン抵抗性の惹起に関わるアディポサイトカインの分泌調節や,筋肉組織での糖取り込みの正常化により抗糖尿病効果を示す。近年ではフコキサンチンの体内動態とそれら代謝物による作用も明らかになりつつある。本項では特にこのようなフコキサンチンによる脂肪組織や筋肉組織を介した抗肥満作用,抗糖尿病作用の作用機構について解説する。
  • 菅原 達也, 真鍋 祐樹
    2012 年12 巻10 号 p. 509-514
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/14
    ジャーナル フリー
    カロテノイドは様々な健康機能が知られているが,これまでI型アレルギーの炎症反応に重要なマスト細胞の脱顆粒反応に与える影響は知られていなかった。そこでフコキサンチン,アスタキサンチン,ゼアキサンチン,β-カロテンについて評価したところ,マスト細胞の脱顆粒を抑制することが確認された。 これらのカロテノイドにより,高親和性IgE受容体(FcεRI)の凝集と脂質ラフトへの移行が阻害されることが新たに見出された。カロテノイドの様々な機能性と脂質ラフトの関係について興味がもたれる。
  • 杉浦 実
    2012 年12 巻10 号 p. 515-523
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/14
    ジャーナル フリー
    果物・野菜に多く含まれているビタミン・カロテノイド類は何れも抗酸化作用を有し,生体内の酸化ストレスに対して防御的に働くと考えられている。近年の疫学研究から,カロテノイド類を豊富に含む果物・野菜の摂取量あるいは血中カロテノイドレベルとがんや循環器系疾患,糖尿病等の様々な生活習慣病リスクとの関連が報告されており,カロテノイド類がこれらの生活習慣病の予防に有効ではないかと考えられている。β-クリプトキサンチンは国産主要果実である温州ミカン(以下,ミカン)に特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種であり,我々はこれまでの研究から,血中β-クリプトキサンチンレベルからミカン摂取量を推定できることを明らかにしてきた。現在,我々は国内主要ミカン産地である静岡県三ヶ日町の住民を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を継続的に行っている。これまでの横断的解析から,血中β-クリプトキサンチンレベルと動脈硬化や肝疾患,メタボリックシンドローム等の様々な生活習慣病リスクとに有意な負の関連があることを見出してきた。本稿では,β-クリプトキサンチンに関する最近の疫学研究の知見について紹介する。
  • 西田 康宏
    2012 年12 巻10 号 p. 525-531
    発行日: 2012年
    公開日: 2015/02/14
    ジャーナル フリー
    アスタキサンチンとは,自然界において甲殻類,魚類,鳥類などの幅広い生物に認められるカロテノイドに属する美しい赤橙色を示す色素である。従来からアスタキサンチンは魚類・家禽の色揚げ剤として養殖産業で利用されてきたが,1980年代後半からアスタキサンチンの優れた脂質過酸化抑制作用,一重項酸素消去能が報告され,1990年代初めにヘマトコッカス藻を用いた大量培養による天然物由来によるアスタキサンチンの商業生産方法が確立されて以降,ヒト用途への利用が期待されるようになり,アスタキサンチンの生理活性などが盛んに研究されるようになった。その結果,多くの有用な機能性が見出され,サプリメントなどの機能性食品や化粧品等,多岐にわたる用途に使用されつつある。本稿では,微細藻類であるヘマトコッカス藻によるアスタキサンチンの生産やアスタキサンチンの有用性の一つとして挙げられる,メタボリックシンドロームなど生活習慣病や代謝に与える影響について紹介したい。
feedback
Top