高齢化が進む社会において,「食」 に関する重要な問題として,咀嚼・嚥下機能の低下と,低栄養状態(PEM)が挙げられる。人は加齢に伴う唾液分泌能の低下,喉や口周辺の筋力低下,嚥下反射機能の低下,或いは脳血管疾患等によって,咀嚼・嚥下機能(噛む力,飲み込む力)が低下する。また,こうした咀嚼・嚥下機能や消化・吸収等の生理機能低下,介護に関する社会的要因,さらには精神的要因等によって低栄養状態(PEM)に陥る。近年,こうした状況に対応すべく,様々な介護食品が研究・開発されている。
脂質は9kcal/gと他の栄養素に比べて最も高いエネルギーを有し,少量で高いエネルギー摂取が可能になる。また,油脂には,特異的な潤滑作用により食材を滑らかにする作用もある。さらに中鎖脂肪酸やEPA等の脂肪酸について,高齢者にとって新たな有益な生理機能を有することが解明されつつある。脂質のこうした特徴に着目した介護食品への利用研究が始まっており,今後の利用が期待される。
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