オレオサイエンス
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17 巻, 3 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
特集総説論文
  • 高久 洋暁, 山崎 晴丈
    2017 年17 巻3 号 p. 107-116
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    自然界には,自身の菌体重量の20%以上の油脂を細胞内に蓄積する油糧微生物(細菌,酵母,カビ,藻類等)が存在する。油脂を発酵生産する油脂酵母として,Lipomyces starkeyiRhodosporidium toruloidesRhodotorula glutinisなどが知られているが,いずれも乾燥菌体重量の65%以上の油脂(トリアシルグリセロール(TAG))を脂肪球の形で細胞内に蓄積することができる優秀な油脂酵母である。その中でもL. starkeyiは,デンプンをはじめ,様々な糖を資化することができ,乾燥菌体重量の72.3%までTAGを蓄積することから,産業利活用可能な油脂生産微生物としての大きな潜在的能力を有すると考えられる。最近,L. starkeyiのゲノム配列が公開され,様々な油脂の合成・分解に関する遺伝子の機能が明らかになることが期待されている。遺伝子操作技術を活用して,油脂生産に関与する遺伝子を改変することにより,脂肪球の形成機構や油脂合成・分解メカニズムを明らかにすることができ,油脂生産性を改善し,産業的価値を有する油脂高生産L. starkeyi株の開発へ繋げることができると考えられる。しかしながら,L. starkeyiにおいて,そのような分子育種を行うための遺伝子工学的な技術開発は行われてこなかった。本総説では,L. starkeyiにおける油脂生産,形質転換システム,遺伝子ターゲティングシステム,遺伝子多コピー導入システムの開発について述べる。さらに,本技術を利活用したL. starkeyi の油脂の産業利用の可能性について述べる。

  • 柳場 まな, 長沼 孝文, 正木 和夫
    2017 年17 巻3 号 p. 117-125
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    化石燃料の使用により二酸化炭素が蓄積され地球温暖化が引き起こされている。二酸化炭素蓄積抑制の一つとして,植物脂質をエステル化したバイオディーゼル燃料を用いるのが良い。しかし,地球温暖化が農業に悪影響をおよぼすことから,植物とは異なった培養環境が使える微生物を用いての脂質生産が必要であると考えた。その研究の主幹をなす,多くの酵母リポミセス菌株と再生可能炭素源を組み合わせた多数の系から脂質蓄積能力の高い菌株を選抜するスクリーニング実験を,プレート培養した菌の顕微鏡写真を撮り本菌の形態的特徴である脂肪球の体積を測定して脂質生産能力を調べる簡便・低コストの新たな方法を用いて行った。選抜された脂質蓄積能力の高い菌は炭素源からの中性脂質変換効率が高く,また弱い破砕でも脂肪球内の中性脂質の漏出割合が高かった。脂肪球内の脂質の効率良い回収には,脂肪球膜と細胞膜を破壊する必要があると判断し方法の検討を行った。また,微生物による脂質生産研究の動向についても解説をする。

  • 黒川 博史, 深野 友佳, 大木 亨, 長沼 孝文
    2019 年17 巻3 号 p. 127-133
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    脂肪酸メチルエステル(FAME)はバイオディーゼル燃料や,界面活性剤などの工業用の基幹原料として広く利用されている。FAMEは,パーム油,菜種油などの食用油脂を原料としているが,将来的な世界人口増加による食糧問題を背景に,工業用途には代替となる油脂資源の確保が求められている。 一方,このFAME生産で副生するグリセロールは,年々増加しており,その活用が求められている。そこで,筆者らは油脂生産酵母であるLipomyces属酵母を活用し,グリセロールを油脂へ変換するスキームを考え研究を行ってきた。本稿では高純度グリセロールだけでなく,粗グリセロールを炭素源とした培養と生産の可能性に関して紹介する。

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