界面活性剤を用いた可溶化・乳化は様々な分野で用いられているが,目的とする可溶化物や乳化物を得る為には,使用する界面活性剤の種類と添加量の選択や調製方法が重要となる。本稿では界面活性剤として食品や化粧品用途で幅広く利用されている非イオン界面活性剤「ポリグリセリン脂肪酸エステル (PGFE)」の可溶化・乳化特性について解説した。
PGFEは分子構造の設計自由度が高く,広範囲なHLBの分子設計が可能である。また,水和力が強い為に温度や塩,多価アルコール等の共存物質の影響を受けにくい。さらに,水中でも油中でも臨界ミセル濃度が低く疎媒性を有する界面活性剤であるという事が知れられており,興味深い特性を持つ。このPGFEの構造と特徴を活かした応用例について最近の研究動向を交えつつ述べた。
日本国内で見ると成熟期を超えて縮小傾向にある繊維市場だが,世界的には化学繊維を中心として成長を続けており,市場の動きを見ても今後もしばらくは継続して成長することが見込まれる。化学繊維製造の際には,加工性及び機能性を持たせるために繊維用油剤を付与することが必要不可欠であるため,これに付随して繊維用油剤の活躍の場も拡大していくものと推測される。繊維用油剤によって付与される特性は,加工方法や最終用途に応じて極めて多岐にわたる。本稿では,化学繊維の中でも短繊維不織布用油剤について,各種加工性や機能性の具体例を交えながら紹介する。
スプレードライ方式による粉末油脂は,油滴サイズを1 µm程度の大きさに調整したO/W乳化物を作製し,噴霧乾燥させたものである。粉末油脂は,バルクの油脂と違い水に容易に分散し,乳化状態を保っている。また,食品に使用することにより,食感改良など様々な効果をもたらすことができる。本論文では,粉末油脂の概要を説明した後,食品への応用について具体例を挙げ紹介する。
リン脂質を主体とする混合物であるレシチンは,食品加工分野を始め,工業分野や医薬・化粧品分野などで古くから使用されている複合脂質である。近年は,よく知られている代表的なリン脂質以外に,希少なリン脂質や糖脂質の機能性を期待して,分離・濃縮・改質などの様々な手法により工業的な生産が可能になり,機能性素材として実用化されつつある。ここでは,リン脂質や糖脂質の期待される機能性とその製法について述べる。