呼吸器のI型アレルギー疾患は, 極少量の抗原が粘膜を介し極少量の肥満細胞上のIgE抗体と架橋することで, その反応が開始する。一方, 呼吸器粘膜上には多量のIgA抗体が感染防御のため存在する。そこで, I型アレルギーの新しい治療法として, 抗原とIgE抗体との反応以前に, 人為的に誘導した抗原特異的IgA抗体で抗原を捕捉処理し, 反応を抑制しうる可能性がある。本研究では, 局所における抗原特異的IgA抗体の誘導をマウスにおいて試みた。
IgAのアジュバントとして知られるコレラトキシン (CT) を抗原と同時に反復点鼻し, その血漿と肺胞洗浄液からenzyme-linked immunosorbent assays法を用いて抗原特異的IgA抗体量, 総IgA抗体量を測定した。また, 抗原特異的IgE抗体はPCA (passive cutaneous anaphylaxis) 反応を用い, 抗体価を測定した。
今回, 抗原は卵白アルブミン, キーホール・リンペット・ヘモシアニンとNippostrongylusbrasiliensisの虫体抽出蛋白の3種類を用いた。抗原特異的IgA抗体の産生は, マウス1匹当り10μg以上の抗原量と0.1μg以上のCTの存在下で有意に増加したが, 特に肺胞洗浄液中の抗原特異的IgA抗体の増加を著明に認めた。アジュバントとして用いたCTには, その構造上AサブユニットとBサブユニットに分けられるが, いずれのサブユニットにもアジュバント効果が認められた。また, 肺胞洗浄液中の抗原特異的IgA抗体は最終免疫時点より9週後にも高濃度の存在が確認できた。
なお, 抗原特異的IgA抗体の誘導後にネブライザーによる抗原の再暴露を施行したところ, 抗原特異的IgE抗体産生の充亢進は抑制された。
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