初乳中のIgAの免疫学的意義を明らかにする目的で, 初乳および対応血清を用いて各免疫グロブリンの定量を行ない同時に感作血球凝集反応, 同阻止試験, 同吸収試験により各種細菌菌体成分に対する抗体価を測定し, 以下の成績をえた.1) 初乳中の免疫グロブリンは血清のものに比較して, 高濃度のIgAを含むこと, IgG含量がごく微量であることが注目され, 各免疫グロブリンとも程度の差はあるが分娩後3日目には急激な減少を示す.2) 大腸菌 lipopolysaccharide, レンサ球菌 peptidoglycan に対する抗体活性は両者ともに初乳ではIgAクラスに存在し, 血清中では lipopolysaccharide 抗体活性は IgM クラスに, peptidoglycan 抗体活性は IgG クラスに存在し, 血清抗体価と初乳抗体価の間には相関傾向がみられなかった.3) ジフテリア・トキソイド, 破傷風毒素に対する抗体活性は血清, 初乳ともに IgG クラスに存在し, ジフテリア・トキソイドに対する抗体価は血清-初乳間で相関傾向を示し, 破傷風毒素に対する抗体価では陽性例が少ないため明らかでなかった.以上より乳腺において局所抗体産生機構が働いている可能性を示唆し, 初乳が以上より減感作有効例の大部分では BA が形成され, 遅れて reagin が減少するものと推定した.
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