小麦粉に含まれ, 500mM NaCl溶液に不溶のタンパク質成分 (塩不溶性分画)に対するIgE抗体の検出を, 小麦アレルギーの関与が疑われ小麦 CAP-RAST陽性のアトピー性皮膚炎 (AD)患者血清にて試みた. 60検体についてスクリーニングしたところ, 15検体で塩不溶性分画に対するIgE抗体が検出された. そこでこの15検体にて, 小麦全分画・塩可溶性分画・塩不溶性分画それぞれに対するIgE抗体価をELISA値として測定し, 小麦CAP-RAST値との相関を検討した. その結果, 塩可溶性分画に対する IgE・ELISA値のみ小麦CAP-RAST値と有意な相関(r=0.918, p<0.001)が認められ, 他方小麦全分画に対するIgE・ELISA値は, 塩不溶性分画に対するIgE-ELISA値とのみよく相関した. ELISA抑制試験では, 塩不溶性分画に対するIgE抗体は塩可溶性分画によって阻害されず, このIgE抗体は塩不溶性分画に含まれる抗原を特異的に認識していることが明らかになった. イムノブロットの結果, 塩不溶性分画の中で, 分子量33〜45, 84, 90, 98KDの成分が患者血清と反応した. 以上から, AD患者血清中には, 小麦の塩不溶性分画特異IgE抗体が存在し, この塩不溶性分画がアレルゲンとして慟く場合のあることが示唆された. また同時に小麦の塩不溶性分画に対するIgE抗体の測定は, 小麦アレルギーの診断に有用であると考えられた.
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