ポイント
・アナフィラキシーの診断基準は以前の3項目から2項目に集約された.
・アナフィラキシーに関する我が国の疫学データが追加された.
・アナフィラキシー治療における第一選択薬はアドレナリンの筋肉注射である.
・アナフィラキシーの急性期(初期)対応だけではなく,エピペン®の処方を含めた再発防止策がアナフィラキシーの管理である.
【背景】気道過敏性検査は気管支喘息の発作の危険性を端的に表す指標として診断,治療評価に有用である.本邦の気道過敏性検査には標準法とアストグラフ法が多く用いられている.アストグラフ法の判定法として気道感受性を示すDminが主として用いられているが,発作の閾値ではないため標準法との互換性に疑義がある.
【目的,対象】アストグラフ法を用いた気道感受性,気道反応性,気道過敏性の評価法同士の関連を調べ,よりよい指標を模索するため,聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院で臨床上の必要でアストグラフ法による気道過敏性検査を行った気管支喘息および気管支喘息疑いの142例を対象とした.気道感受性Dmin,気道反応性SGrs/Grscont,小発作の閾値であるPD35Grsを気道過敏性の指標として評価し,また薬剤負荷を軽減する目的で15%SGrsが低下する閾値であるPD15Grsを設定し,比較した.
【結果】気管支喘息診断目的(103例),寛解評価目的(39例)が抽出された.Dmin,PD35Grsはよい相関を示すがSGrs/Grscontとの関連が異なり,またDminで気道感受性陽性であるにもかかわらずPD35Grs>25(unit)の発作に至らない症例が36.5%存在した.PD15Grsについては,Dmin,PD35Grs双方と強い有意な相関を示し,10.7(unit)をカットオフとして感度0.984,特異度0.905でPD35Grs<25(unit)を予測しえた.
【考案】アストグラフ法を用いた気道過敏性評価について,気道感受性,気道反応性による発作閾値への関連の違いを示し,PD15Grsの評価法の有用性について提示した.
【背景,目的】保護者が子どもへのSARS-CoV-2ワクチン接種を判断する際に関連する因子と,子どものアレルギー疾患の併存が与える影響は明らかではない.
【方法】2021年4月~5月に当院小児科アレルギー外来,および協力小児科診療所3施設を受診した15歳以下の患者の保護者を対象に,横断調査を実施した.調査項目は,アレルギー疾患の有無,SARS-CoV-2ワクチン接種希望とその理由などとした.
【結果】646件の回答があり,有効回答は568例(88%)であった.子どもへのSARS-CoV-2ワクチンを接種したくないとする回答は38名(6.7%)であった.SARS-CoV-2ワクチンを拒絶する因子は,食物アレルギーの併存と,SARS-CoV-2ワクチンの安全性と予防効果に対する期待度の低評価であった.接種したくない理由は,ワクチンの副反応に対する不安に関係する回答が上位であった.
【結論】保護者が子どもへのSARS-CoV-2ワクチン接種に関して正しく判断するためには,過剰な不安を抱かないよう,最新かつ正しい情報を得られる環境を創っていく必要がある.特に子どもが食物アレルギーを有する場合,より一層の配慮が必要である.
【背景・目的】実地診療におけるスギ花粉抗原舌下錠を用いた舌下免疫療法(スギSLIT)のヒノキ花粉飛散期における効果については不明な点が多い.今回,スギSLIT患者のヒノキ花粉症の有症率,スギSLITのヒノキ花粉症への効果およびヒノキ花粉抗原を用いたSLIT開発への患者ニーズの実態を調査した.
【方法】多機関観察研究(31施設)として,5歳以上70歳未満のスギSLIT患者を対象としたアンケート調査を実施した.
【結果】解析対象となった2523例のうち,83.4%でスギSLIT開始前にヒノキ花粉飛散期に鼻炎症状を有した.ヒノキ花粉飛散期症状を有した患者の37.4%で,スギSLITの効果がヒノキ花粉飛散期でやや悪い・悪いと回答した.ヒノキ花粉症有症率およびヒノキ花粉飛散期でのスギSLIT効果減弱率は,東日本に比較し西日本で有意に高かった.ヒノキSLIT開発に対する患者ニーズは76.1%に認めた.
【結語】ヒノキ花粉飛散期にスギSLITの効果減弱を自覚する症例は全国的に観察でき,その効果には地域差を認めた.ヒノキ花粉抗原によるSLIT開発に対する患者ニーズは高く,新規治療法開発が望まれる.
【背景】遺伝性血管性浮腫(HAE)は薬剤アレルギーの誤診の頻度も高く,アレルギーとの鑑別が重要である.また,C1-INHに異常を認めないHAE-normal-C1INH(従来のHAE III型)はさらに診断が難しい.
【症例】17歳女性,小麦アレルギーの精査目的に当院受診した.幼少期から発作性の浮腫や腹部症状を繰り返し,13歳から元々症状なく摂取していた小麦摂取後に同症状を複数回認め,小麦アレルギーが疑われ,小麦除去指導された.その後も同様の発作を繰り返し,薬剤使用後に発作を認めた際には薬剤アレルギーが疑われ,複数薬剤に対してアレルギーラベルが貼られ回避指導された.小麦や被疑薬を除去しても発作が改善せず,C4,C1-INH活性は正常だったが,家族歴,歯科治療後の複数回発作,抗ヒスタミン薬無効,C1-INH製剤の著効などからHAE-normal-C1INHと診断した.当院での二重盲検プラセボ対照による小麦負荷試験は陰性で小麦除去解除とした.アレルギー疑いの複数薬剤はプリックテストとオープン法による薬剤負荷試験のいずれも陰性であった.HAEは小児期から発症する.原因不明の浮腫や腹痛発作を繰り返す場合はHAEの鑑別をし,適切な診断に導く必要がある.
アニサキスアナフィラキシーの既往がある3症例につきアニサキスアレルゲンコンポーネントに対する反応性を調べた.症例1は38歳男性,摂取後0.5時間でアレルギー症状が出現,コンポーネントはAni s 1,3が陽性.症例2は44歳女性,摂取後4時間でアレルギー症状が出現,コンポーネントはAni s 3,12が陽性であった.症例3は36歳女性,魚貝類摂取後7時間でアレルギー症状が出現,コンポーネントはAni s 1,4,12が陽性.症例3はアニサキス抽出液の加熱,非加熱ともに強く反応していたが,症例1,2では加熱のアニサキス抽出液に対する反応は弱かった.10例の既存報告と併せて解析した結果,最も多かったのはAni s 12,ついでAni s 1であった.また,全症例でアニサキスIgEはクラス3以上であった.13症例の解析ではAni s 4に感作されている症例は2例であり中等症以上のアナフィラキシーであった.Ani s 4に感作された患者群では,重症化しやすいとの報告もある.Ani s 4に感作されている症例についてはアレルギー症状の重症化に注意が必要な可能性がある.
成人喘息患者の長期管理において,吸入ステロイド薬(ICS)のみでコントロール不良時には,長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加はどちらが有用か,システマティックレビュー(SR)により検討した.検索期間が2015年4月までの先行SRからランダム化比較試験(RCT)を抽出し,それ以後2022年6月までのRCTをCINAHL,Cochrane Library,EMBASE,MEDLINE,PsycINFO,医学中央雑誌において追加検索した.既報のSRから16文献(8つのRCTs)が抽出され,追加検索において2文献(追加のRCTはなし)が追加抽出された.一部の呼吸機能はLAMA追加群において統計学的に有意に改善していたが,両群の差は臨床的に意味のある最小の差を超えなかった.Quality of Lifeの指標であるAQLQはLABA追加群において有意に高かったが,両群の差は臨床的に意味のある最小の差を超えなかった.喘息コントロール,増悪,有害事象については両群に差を認めなかった.いずれのアウトカムについても臨床的に意味のある最小の差を超える差は確認されず,LABAとLAMAの追加のいずれが有用かは判断できなかった.有害事象についても差を認めなかったことから,一方に特有な有害事象を認めた場合には,他方への変更が検討できると考えられた.