川崎病患児の5ヵ月から5才までの男児28例, 女児26例の計54例について, 血清中のCH50および補体系各蛋白成分(C1q, C1s, C4, C3, C5, C9, factor B, C1INH, C3bINA)値を経時的に測定し, それらの値と臨床経過との関連性について検討し, 次の結果を得た.1)順調に経過した症例のCH50, C3, C4, factor B およびC3bINAは概して病初期, 高値であった.2)心合併症をみなかった再燃例の各病週における検体のCH50および補体系各蛋白成分値は, 順調に経過した症例ないし心合併症をみた症例のそれらの値との間には有意差はなかった.3)心合併症をみた11例の第2病週および第3病週における検体のCH50値は, 順調に経過した症例のそれらの値とは0.1%以下および1%以下の危険率で有意に低値であった.4)心合併症をみた11症例中死亡の2例を除く4例で入院時あるいは経過中に低補体価を示したときのC1q, C1s, C4, C3, C5, C9, factor B, ClINHおよびC3bINAは正常ないし低値であり, その後はCH50と同様にほぼ1週間以内に正常ないし高値となった.なお, 死亡の2例を含む6例の第2病週における検体のC3およびC4値は順調に経過した症例のそれらの値との間にはいずれも0.1%以下の危険率で, 第3病週における検体のC1q, C5, factor BおよびC1INH値は順調に経過した症例のそれらの値との間にはいずれも1%以下の危険率でそれぞれ有意に低値であった.5)心合併症をみた11例で経過中の血清中のCH50がもっとも低下したときのCH50とC3値との間には0.1%以下の危険率で, CH50とC1q, C4, C5およびfactor B値との間には1%以下の危険率で, CH50とC1s, C9およびC1INH値との間には5%以下の危険率でそれぞれ正の相関があった.さらにCH50と血小板数とは1%以下の危険率で正の相関があった.6)急性期に心エコーで心合併をみた症例の, その時点までの使用薬剤の例数を比較すると, アスピリン単独使用例数とアスピリンに副腎皮質ステロイド併用例数には心合併例数に大差はなかった.以上の成績より, 本症の心合併症をみた一部の症例で補体系の両径路が活性化され, それが組織障害, とくに冠動脈病変に密接に関与するものと思われた.また, 血清中のCH50および補体系各蛋白成分値の変動は症状の重症度ないし血管障害の程度を表すものと思われた.
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