【背景・目的】経口免疫療法では症状の誘発を避ける目的でアレルゲン摂取後の運動制限が必要な症例がある.我々は経口免疫療法の維持期に,運動制限解除の可否を評価する目的で食物負荷運動誘発試験(以下,誘発試験)を行っている.誘発試験の安全性と有用性について明らかにすることを目的とした.
【方法】宮城県立こども病院で鶏卵,牛乳,小麦の経口免疫療法を実施し,2012年4月から2019年3月に誘発試験を施行された症例を対象とした.誘発試験結果と患者臨床像を診療録から後方視的に検討した.
【結果】91例中,15例で陽性であった.アレルゲン別の陽性率は鶏卵12%(4/33例),牛乳15%(5/34例),小麦25%(6/24例)であった.アドレナリン筋肉注射を要したのは鶏卵2例,牛乳1例,小麦1例であった.
【結論】経口免疫療法維持期に到達してもアレルゲン摂取後の運動で重い症状を呈する症例があり,誘発試験は運動制限を継続すべき症例の選別に必要である.
【背景・目的】食物アレルギー患者への栄養指導が十分に行われている状況にない.その理由に管理栄養士・栄養士養成課程の食物アレルギー教育が十分でない可能性が考えられる.今回管理栄養士・栄養士養成課程の食物アレルギー教育の実態を調査し,その問題点を明らかにする.
【方法】全国の栄養士および管理栄養士養成校に,郵送法で実態調査を行った.食物アレルギーに関する講義および実習の有無や時間などを調査した.
【結果】213施設(回収率75%)から回答が得られた.食物アレルギーに関する講義は96%の施設で行われ,講義時間の中央値は210分であった.実習は74%の施設で行われ,実習時間は90分であった.食物アレルギー教育の必要性を“強く感じる”が49%,“感じる”が50%を占めたが,理想的な教育実態があるのは32%であった.講義・実習等を今後増やす予定がないのは82%で,増やせない理由に“カリキュラムに余裕がない”が多かった.
【結語】管理栄養士・栄養士養成課程における食物アレルギー教育は十分とは言えず,教育現場はその問題に気づいていた.今後官民一体となって状況の改善に乗り出すことが強く期待される.
【目的】1986年,厚生省はスギ花粉症対策の一環で,空中花粉調査を開始した.花粉症と花粉関連アレルギー疾患の効果的な治療・予防に役立てるために各地の木本に次いで草本花粉の長期調査結果を報告する.
【方法】20カ所以上の協力施設で1986年7月よりDurhamの花粉捕集器(重力法)を設置して空中花粉を採取した.当施設に郵送された検体をカルベラ液で染色し光学顕微鏡下で算定し,1cm2当りの花粉数に換算した.1年を便宜上,半年に分けて花粉捕集数をまとめ,同じ科の花粉でも1~6月に観測されたものを春咲き,7~12月を秋咲きとして集計した.
【結果】各地の草本花粉捕集総数は木本に比較して著しく少なく,平均73~651個/cm2/yearで相模原が最も多かった.スギ・ヒノキ科のような著しい年次変動はなく,イネ科,ブタクサ属が漸増傾向を示す地区があった.春咲きイネ科花粉が最も多く,平均捕集総数の30%を占めた.
【結論】鼻眼症状や口腔アレルギーなどの臨床症状が草本花粉に関連しているか検査する必要がある.花粉アレルギー患者の治療に空中花粉調査の重要性が示唆された.