ヒトIgEは, 尿素や熱で変性させると, 補体結合能力, モルモット皮膚血管透過性亢進, リウマトイド因子(RF)に対する抗原性等の新たな生物学的活性が出現してくる.このような生物学的活性のなかで, とくに補体結合能とIgGの高次構造の変化との関係について検討を加え, 併せて, 他の生物学的活性との関係について考察を加えた.ヒトIgGを尿素変性させ, polymer-type (pU-IgG)とmonomer-type (mU-IgG)に分け, おのおのを還元または, 還元アルキル化して用いた(pU-IgG (M), pU-IgG(MM)), (mU-IgG (M), mU-IgG (MM)).このようにして得られた.各preparationの抗補体活性を, 50%溶血法および, IA inhibition testにより測定した.また, おのおのを抗原としてタンニン酸処理血球に感作し, 補体を加えて溶血活性ならびにIA活性を観察した.結果:pU-IgGは強い抗補体活性を示し, また補体全成分を結合して, タンニン酸処理血球を溶血させる.aggregateしたH-chain (tH)も同様の傾向を示すが, 尿素処理したFab, L-chainには, 補体を結合する能力がない.一方, pU-IgGを還元アルキル化するとその補体結合能力は失われる.各 prepacationを抗原として感作したタンニン酸処理血球を用いて, RFとの間に凝集反応ならびに溶血反応を行なうと凝集反応は, 変性 IgG還元アルキル化変性IgGならびにtHに認められ, native IgGには認められない.溶血反応においてpU-IgGは, それ自身で補体全成分を結合して, RFの有無にかかわらず強い溶血活性を示す.RFに対して強い抗原性を示すpU-IgG (MM)は, それ自体では補体をとらず, またRFおよびモルモット補体を加えても受身溶血反応を示さない.以上の結果から, pU-IgGの示すモルモット皮膚親和性および血管透過性亢進には, IgG分子表面のδ-S結合が重要であり, RFに対する抗原性には, pU-IgG全体として構造が重要性をもつと考えられる.変性IgGの示す補体結合能については, IgG分子H-chain間のδ-S結合が, 本質的なものではなく, H-chain相互間の直接のinteractionが重要であると思われ, これはRFに対する抗原構造およびモルモット皮膚における親和性ならびに血管透過性亢進を示す構造とは異なるものと考えられる.
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