咳嗽誘発試験用吸入液のpHおよび浸透圧が咳嗽受容体に及ぼす影響を検討するために, 気管支喘息の小児37名を対象に, 咳嗽誘発試験を行った.吸入液はpHの違いにより, 酸性, 中性, 塩基性の3種類, 浸透圧の違いにより, 低張, 等張, 高張の3種類を用意し, 各々の組合せで3×3の合計9種類の溶液を作成した.また, 塩素イオンによる咳嗽の誘発性をみるため, pHが中性で浸透圧が等張の低塩素イオン溶液も準備した.咳嗽誘発試験は, それぞれの溶液を10秒間ずつ吸入させ, 咳嗽が認められたものを陽性とした.その結果, 酸性高浸透圧溶液では28名(76%), 酸性等浸透圧1名(3%), 酸性低浸透圧1名(3%), 蒸留水3名(8%)が陽性であったが, それ以外の溶液では陽性者は認められなかった.また, 塩素イオンの濃度変化によって, 咳嗽誘発性に変化は認められなかった.この結果から, pHのみ, あるいは浸透圧のみの変化では, 咳嗽を有効に誘発することはできず, pHと浸透圧の組合せが, 咳嗽誘発に関しての重要な要素であることが示唆された.
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