【背景/目的】パッチテスト(PT)結果をユニットの違いによって比較した論文は少ないので検討する.
【方法】頭部等の難治性皮膚炎患者34例を対象とし,両性界面活性剤であるコカミドプロピルベタイン(CAPB),高濃度CAPB(h-CAPB),ラウラミドプロピルベタイン(LAPB)によるPTをパッチテスター「トリイ」(「トリイ」)とFinn Chamber(FC)を用いて行い,結果を比較した.
【結果】3種の界面活性剤すべてにおいて,FCは「トリイ」より刺激反応が有意に少なく(CAPB;p=0.003,h-CAPB;p=0.046,LAPB;p=0.002),陽性反応には両者に有意差はなかった.難治性湿疹の原因に上記の界面活性剤による関与が濃厚な17例においては,FCは「トリイ」より,LAPBにおいてのみ,刺激反応が有意に少なかった(p=0.041).FCにおいては,3種の界面活性剤の中でCAPBが最も陽性率が高かったが有意差はなかった.
【結語】頭部等皮膚炎患者に対するCAPB等界面活性剤のPTは,刺激反応の少ないFCが「トリイ」より適している.
症例1は10代女性.6歳から緑豆もやしを食べると口唇の腫脹と口腔内違和感が出現.症例2は20代男性.もやしラーメンを食べたあとにアナフィラキシーショックで当院救命救急センターへ搬送された.2症例ともprick-to-prick testで緑豆もやしに陽性をしめした.さらに症例2は大豆もやしにも陽性となった.また2症例で,バラ科果実でprick-to-prick test施行したところ陽性をしめし,シラカンバ,Gly m4,Bet v1に対する特異的IgEが陽性であった.緑豆もやしは,Vig r1のアレルゲンコンポーネントをもつため,PR-10ファミリーに属す.本邦では緑豆もやしを常食しているが,アレルギーの報告が少ない.しかし,シラカンバアレルギー患者で交差の可能性がある場合は,適切に検査したうえで緑豆もやしアレルギーと診断し,アレルギー専門医はpollen-food allergy syndrome(PFAS)について詳細な食事指導する必要がある.
非アスペルギルスアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)の原因真菌種に関するまとまったデータは少ない.今回Scedosporium apiospermumによるABPMが疑われた症例を経験した.症例は69歳女性.発熱と咳嗽があり,胸部CTで右中葉の無気肺を認めた.気管支鏡検査を行うと,右中葉支に粘液栓を認めた.吸引痰からScedosporium apiospermumを培養同定した.末梢血好酸球数上昇,および血清総IgE値上昇があり,2019年に本邦の研究班によって提唱された新ABPM臨床診断基準を満たした.内視鏡的に粘液栓を完全に除去した後は,臨床症状は改善し,以後の再燃はない.Scedosporium apiospermumによってABPMを発症する可能性があること,粘液栓の除去のみで軽快する症例があることが示された.これまで報告のない真菌種がABPMの原因となる可能性がある.