5例の気管支喘息患者に対し, isoproterenol と salbutamol をそれぞれ日を違えて気道内に吸入し, 各同一症例における吸入前後の心拍数および心電図の変化を比較検討した.isoproterenol は常用量の倍量(0.5%液 0.6 ml)を1回量とし, 通常の電動式エアコンプレッサーにより吸入した.結果は下記のとおりである.1.1分間20以上の心拍数増加を示したものは, isoproterenol では5例中4例, salbutamol では5例中3例で, その際の増加のピークは前者では5分後に, 後者では10分後に認められた.2.心電図では isoproterenol 吸入後, 全例になんらかの変化が認められたが, salbutamol では5例中2例に変化を認めたのみであり, かつその変化も1例をのぞき軽度であつた.3.吸入後の心電図変化の主体は Tv_2 および Tv_5 の減高ないし逆転であり, 変化の性質は両剤で共通しているが, 程度は salbutamol でかなり弱い.4.拡張剤の反復吸入による一過性の心停止の既往を有する1例で, 上記の変化のほかに吸入後 P_I の逆転と Pv_5, Pv_6 の陰性化を生じた.その変化はいわゆる左房調律に相当するものと考えられるが, isoproterenol, salbutamol 両剤ともに共通に認められた.5.心拍数の増加と心電図変化の出現との間には, 明らかな関係は認められない.6.3に挙げた T vector の後方偏位は, 心筋の再分極過程の変化によるものと考えられるが, その意義づけは不明である.7.ただし対象例5例中, isoprotenol 吸入の頻用による一過性心停止の既往を有する2例では, 吸入後における上記心電図変化はとくに明らかであつた.
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