【背景・目的】舌下免疫療法(SLIT)の効果と経年的効果の増強を検討した.
【方法】シダキュア®錠で治療した358例(治療期間;3年目126例,2年目102例,1年目130例)を対象とした.2022年スギ花粉期(総数2485個/cm2)に鼻眼症状と全般症状の視覚的症状尺度(VAS)と薬物スコアを評価した.対象にダニ併用SLIT(Dual SLIT)例が多いため,副解析にスギ単独とダニ併用のSLITを比較した.
【結果】全症状のVAS値は治療1年目より3年目で低く,効果が高かった(p<0.01).くしゃみと鼻みずは2年目より3年目で,眼の痒みは1年目より2年目で低VAS値であった(p<0.05).薬物スコアは1年目より3年目と2年目で低値を示した(p<0.05).Dual SLITとスギ単独SLITはほぼ同等の効果を示した.
【結語】シダキュア®錠のSLITにより効果が3年目まで経年的に高くなった.ダニSLITの併用はスギ花粉飛散期の効果に影響しなかった.
【背景・目的】鶏卵アレルギーにおいて加熱卵黄のアレルゲン性は低いことが知られるが,固ゆで卵黄の食物経口負荷試験(OFC)が安全であるかどうかの報告は少ない.本研究では,固ゆで卵黄OFCの安全性と陽性者の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】2013年1月から2020年12月までの期間に宮城県立こども病院で固ゆで卵黄1個のOFCを実施した患者のうち,鶏卵による即時型症状歴を有する患者,もしくは,卵黄,卵白特異的IgE抗体価陽性の患者を対象とし,後方視的に検討した.
【結果】600名の患者のうちOFC陽性者は15.0%で,アドレナリン筋肉注射を必要とした患者は1名のみであった.OFC陽性者のうち70.0%で消化器症状を認めた.
【結語】固ゆで卵黄OFCでは,症状誘発のリスクは少ないが,症状誘発時には臓器別症状として消化器症状が多い可能性がある.重篤な症状誘発のリスクは低く,OFCを安全に施行できる可能性が高い.
コカミドプロピルベタイン(CAPB)は両性界面活性剤の1つで,起泡・洗浄などの作用を有し,シャンプー・ボディソープなどの多数の製品に含有されている.CAPBによるアレルギー性接触皮膚炎(ACD)は,近年その中に微量に混入する不純物が感作物質であると考えられている.今回,CAPBによるACDを経験し,不純物を含めたパッチテストを施行した.症例は64歳女性.初診の1カ月前から,額と毛の生え際に発疹が出現し,その後,顔面,頸部,背部,胸部に拡大した.パッチテストにて持参のシャンプー・ボディソープ1%水溶液(aq.)およびその成分CAPB 1% aq.,ラウラミドプロピルベタイン(LAPB)1% aq.に陽性,さらに不純物であるラウラミドプロピルジメチルアミン(LAPDMA)0.05% aq.に陽性であった.以上より自験例をシャンプー・ボディソープによるACD,感作物質はLAPDMAの可能性を強く考えた.これらの界面活性剤を含有しない製品に変更後,皮疹は急速に改善した.界面活性剤には化粧品成分名称と医薬部外品成分名称が異 なるものがあるので,十分な知識が必要である.