日本食品科学工学会誌
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57 巻, 5 号
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総説
  • 安田 正昭
    2010 年 57 巻 5 号 p. 181-190
    発行日: 2010/05/15
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Scientific aspects of tofuyo, low-salt fermented tofu, has yet to be fully clarified. The present study describes chemical characteristics of tofuyo and roles of fungus Monascus in food production.
    Fermentation of tofuyo is unique with respect to its soybean proteins, which undergo limited hydrolysis by proteinases in the presence of ethyl alcohol originating from awamori (distilled liquor).The main components forming the body of tofuyo consist of basic subunit of glycinin and other polypeptides (Mr. 55kDa, 11-15kDa). The soybean proteins were digested into peptides and amino acids during maturation. The amount of free glutamic acid and aspartic acid was greatly related to good taste (umami-taste) of the product. Some of the liberated peptides (IFL and WL) inhibited angiotensin I-converting enzyme activity that produces the vasopressor peptide. As WL was completely preserved after treatment with gastrointestinal proteases, it was expected to have an antihypertensive effect.
    Homogeneous preparation of proteinase from Monascus was characterized as an aspartic enzyme, a “key enzyme” for ripening, chemical and physical properties, and formation of bioactive peptides of the product. Carboxypeptidases of this fungus were characterized as serine peptidases, which contribute to the release of amino acids from soybean proteins and their related peptides and to the removal of bitterness during hydrolysis of soybean proteins.
    We established a production method of a new type of tofu using an alkaline serine proteinase with high soybean-milk-coagulating activity isolated from Bacillus pumilus TYO-67. We prepared a new fermented foodstuff using soybean protein isolates. This method has the potential benefit for improving nutrition and adding physiologically functional properties to soybean foods.
報文
  • 安藤 泰雅, 折笠 貴寛, 椎名 武夫, 五月女 格, 五十部 誠一郎, 村松 良樹, 田川 彰男
    2010 年 57 巻 5 号 p. 191-197
    発行日: 2010/05/15
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    調理用トマトの乾燥およびブランチングにマイクロ波を適用しその乾燥特性およびブランチングにおける酵素活性,品質変化を調査したところ,以下の知見が得られた.
    (1) 調理用トマトの乾燥へマイクロ波を適用したところ,照射前の熱風乾燥と比べて,マイクロ波照射開始から乾燥速度が増大し,高出力であるほど乾燥時間は短縮された.
    (2) 調理用トマトの含水率変化には,各出力において指数モデルが適用でき,含水率0.5 (d.b. decimal)以下の範囲においては減率乾燥第一段にあることが示された.
    (3) 熱風乾燥において明度が減少したが,マイクロ波を照射することで明度が増加する傾向が見られた.マイクロ波照射においては,各出力において,どの含水率の段階からの照射でも色彩変化は同様であり,照射時間の延長が色彩へ与える影響はほとんど無いことが示唆された.
    (4) 調理用トマトのブランチングにマイクロ波を適用することで,熱湯浸漬と比較し酵素の失活までに要する時間が短縮され,アスコルビン酸およびリコピン含有量,色彩等の品質変化を抑制できた.
  • 柴原 裕亮, 上坂 良彦, 阿部 晃久, 山田 彰一, 潮 秀樹, 塩見 一雄
    2010 年 57 巻 5 号 p. 198-204
    発行日: 2010/05/15
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    スルメイカ精製トロポミオシンを免疫原として,頭足類トロポミオシンに特異的に反応するモノクローナル抗体を作製し,頭足類トロポミオシン測定用のサンドイッチELISA法を確立した.本法では,頭足類に分類されるいか類,たこ類のトロポミオシンとは全般的に反応したが,甲殻類および貝類トロポミオシンとの交差率は0.1%未満であった.また,食品全般においても頭足類以外で反応は認められなかった.検出感度は頭足類総タンパク質濃度で0.24ppmであり,食品表示に求められる数ppmレベルの測定に十分な感度であった.再現性もCV値10%未満であったことから,精度よく測定できると考えられた.さらに,市販加工食品においても頭足類の原材料表示のある食品のみに反応性を示した.したがって,本法は頭足類トロポミオシンに対して特異的であり,加工食品における頭足類検出法として使用可能であると考えられた.
技術論文
  • 小河原 雅子, 井野 曜子, 吉田 幹彦, 菱山 隆, 五十嵐 友二
    2010 年 57 巻 5 号 p. 205-214
    発行日: 2010/05/15
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヘマトコッカス藻由来エステル型ASTを含有する加工食品中の総AST量を測定する目的で,コレステロールエステラーゼによる酵素分解後,高速液体クロマトグラフ法にて定量する方法を検討した.
    この結果,
    (1) エステル型ASTを加水分解するため,抗酸化剤としてエトキシキン存在下,アセトンおよびpH7緩衝液中でPseudomonas fluorescens由来コレステロールエステラーゼを37℃, 120分間反応させる条件を確立した.なお,本条件下で加水分解後の遊離ASTが安定なことを確認した.
    (2) 約0.01~4μg/mlの濃度におけるAST溶液の直線性は,相関係数0.9999以上と良好であった.
    (3) エステル型AST含有食品に対し,本試験法の相対標準偏差は2%以下かつ添加回収率96.9~101%であり,良好な併行精度および真度を確認した.
    (4) 試験溶液を2種類のHPLC条件で測定した結果が同等であったことおよび健康食品試験溶液のLC/MS測定によりHPLC分離成分がアスタキサンチンのみであったことから,本法の特異性が確認された.
    (5) 定量下限は,クロマトグラムのS/N比より0.006mg/100gと推定された.ただし,種々の加工食品中のマトリックス効果を考慮し,0.02mg/100gと設定することが妥当と考えられた.
    以上より,本試験法によって加工食品中のエステル型ASTを含む総ASTの定量が可能であることが示された.また,ヘマトコッカス藻由来以外のエステル型AST試料にも適用できる可能性が示唆された.
研究ノート
  • 北出 かおる, 片山 詔久, 桑江 彰夫
    2010 年 57 巻 5 号 p. 215-219
    発行日: 2010/05/15
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,赤外分光法(FT-IR/ATR法)を用い,生黒ゴマ子葉,残存胚乳,種皮の各部位の赤外吸収スペクトルを測定し,主要なスペクトルパターンを把握するとともに,それがどのような成分に由来しているのかを検討した.この手法を用いた成分分析では,複雑な抽出・分離操作を必要とせず,一粒のゴマを用いて,その主要成分である脂質,タンパク質,糖質を同定することができた.脂質由来バンドは,子葉,残存胚乳で強い吸収として観測された.これらは,1746cm−1 (νC=O)をはじめとして,2924cm−1 (νaCH2),2855cm−1 (νsCH2),1163cm−1 (νC−O)に大きな強度を持つバンドとして出現した.また,3009cm−1には強度は小さいがオレフィンのCH伸縮振動のバンドが明確に現れた.種皮の外側,内側表面においては,上記のバンドはほとんど見られず,油脂が存在するとしてもごく微量であることを確認した.
    タンパク質に関しては,子葉と残存胚乳で1652cm−1 (AmideI)および1546cm−1 (AmideII)に大きな吸収が観測され,その存在が明らかとなった.また,ランダムコイル構造を持つタンパク質が多く含まれていると考えられる.
    糖質では,バンドの出現位置や形が各部位で微妙に異なるが,黒ゴマ全部位で1200-950cm−1領域に数本の強い吸収が観測され,繊維を含む多糖類の存在を確認することができた.
    シュウ酸カルシウムについては,種皮に多く含有するとされているが15),赤外分光法を用いた今回の実験の結果からは,十分な情報を得ることはできなかった.
    本方法では,小さな一粒の食用種子でも簡単に良質なIRスペクトルが得られる.これを用いて,試料に含まれる主要成分を容易に検出することができるので,他の種子の成分分析への応用が可能である.主要成分だけが検出でき,微量成分に関する情報が得られないことが,この手法の問題点として指摘される.
  • 後藤 裕子, 渡部 修
    2010 年 57 巻 5 号 p. 220-223
    発行日: 2010/05/15
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    渋カキ果実は,アルコールや炭酸ガス等によって脱渋処理することにより,渋みが消失する.しかし,脱渋処理後に果実を加熱すると,再び渋くなる.この現象が渋カキの食品への加工を阻害している.
    本研究において,カキ‘会津身不知’果実に少量の分子量3000から5000のコラーゲンペプチドを加え,室温で混合することによって短時間でカキの味を損ねずに脱渋する方法を開発した.また,この方法により加熱による渋もどりも抑制できることが明らかとなった.開発した技術によって,渋カキを様々な食品に利用できることの可能性が示唆された.
技術用語解説
  • 松木 順子
    2010 年 57 巻 5 号 p. 224
    発行日: 2010/05/15
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1982年,Englystらは,アミラーゼ耐性澱粉を難消化性澱粉resistant starch (RS)と名付けた.現在では,1992年EURESTA (RS摂取の生理学的意義に関するヨーロッパ農産業食品関連研究共同作業部会)で定められたRSの定義「健康なヒトの小腸内での酵素消化作用を逃れる澱粉および澱粉分解産物の総量」が広く受け入れられている.
    Englystらは澱粉を消化性別に3種に分類し,さらにRSを要因別に3種1) (後にBrownらにより4種2) )に分類した(表).RS1は細胞壁などで物理的に閉じこめられて,消化酵素が接触できない状態のものである.RS2はX線結晶回折図形がB型を示す生澱粉である.澱粉粒に穴が少ない,結晶部分のアミロペクチンの側鎖長が長く分岐が少ないことなどがRS2の難消化性の原因と言われるが,詳細は未解明である.RS3は,一度糊化した澱粉が再結晶して安定な構造をとるようになった老化澱粉である.湿熱処理澱粉,パーボイル加工澱粉,プルラナーゼ処理澱粉なども含まれる.RS4は化工によりエステル架橋,エーテル架橋などを施して消化性を低くしたものであり,食品加工後も難消化性を保つことができる.
    RSの定量は,消化性の澱粉を取り除いた後に残る非消化性澱粉を定量して行う.Megazyme社が販売しているRS測定キットは,AOACおよびAACCの公定法として認められている.
    RS2, RS3, RS4は市販されており,これらは一般的に無味,白色で,糊化温度が高く,エクストルーダー加工性,フィルム形成性がよい.非水溶性食物繊維に比べても保水性が低く,食品素材として小麦粉などと一部置換したときの加工性への影響も少ない.また,焼成品へのカリカリした食感や歯ごたえの付与が可能となる.
    RSの生理作用として,血糖応答性およびインスリン応答性の改善,腸機能の改善,血中脂肪に関する症状の改善,プレバイオティクス,シンバイオティクスとしての機能などが注目されている.RSを多く含む食品からのグルコースの遊離は緩やかであり,短期的には食後血糖値上昇の抑制,食後インスリン応答の抑制,満腹感の持続などが報告されている.また,インスリン応答の抑制により,貯蔵脂肪の消費促進が期待され,長期的には,2型糖尿病や耐糖能異常などの症状の改善と予防,肥満や体重の管理に役立つことが期待される.消化を免れて大腸に達したRSは,腸内微生物により酪酸を中心とした短鎖脂肪酸(SCFA)となる.SCFAは大腸上皮細胞の主要なエネルギー源となり,上皮細胞の増殖速度を上げて細胞数を維持する.また,消化管の血流量増加,空腸の蠕動運動の促進,結腸内pH低下,炎症反応の抑制,ガン細胞の増殖抑制など,腸の機能に影響を及ぼす.RSの種類別の効果,ヒトでの長期的な効果の検証が待たれる3)
    RSは,アレルギー反応を起こすという報告もない.食品中の澱粉の一部をRSで置き換えることにより,食事の質を保ちながらカロリーを減らし,さらに食品からのグルコースの遊離を遅くすることができる.生活の質を高め,疾病リスクを低減する機能性食品の素材として,多岐にわたる応用が期待される.
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