日本食品科学工学会誌
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52 巻, 10 号
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報文
  • 山〓 雅夫, 西岡 不二男
    2005 年 52 巻 10 号 p. 435-440
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    年間を通じ一定して製造することができない北海道産ホタテガイ白干し加工への対応は, 製造工程中に貝柱を冷凍し, 凍結貝柱の使用を可能にすることにあると考えた. そこで, 白干しの製造工程に冷凍工程を加え, 焙乾工程に過熱水蒸気を用い, 製品を調製した. 品質評価の指標として貝柱の呈味成分の一つであるAMPを用い, 解凍方法の違いがヌクレオチドの組成に与える影響について検討した.
    冷凍処理を一番煮と水晒し後に実施し, 冷凍貯蔵後緩慢解凍した貝柱を用いて作製した白干しのヌクレオチド量は, 二番煮や焙乾後に冷凍処理したものに比べ少なく, HxRやHxが増加していた. 冷凍一番煮貝柱の緩慢解凍ではHxRやHxが多かったものの, その急速解凍では両者は少なく, 冷凍二番煮貝柱では緩慢解凍であってもHxRやHxが僅かであった. 開殻を目的とした一番煮の加熱工程はATPを分解し, AMPを産生することがわかった. 一番煮貝柱は生鮮冷凍貝柱に比べATPが少なくAMPが多く, 内在する酵素によりHxRやHxが増加しやすいことが推察された. 貝柱中のATP関連物質の分解酵素は一番煮程度の加熱では失活せず, 低温貯蔵であってもADP, AMPを分解し, HxRやHxを産生させた. AMP分解酵素は, 80℃, 5分程度の加熱により容易に失活し, これは品温が90℃を超える二番煮処理貝柱においてHxRやHxが少ない要因と考えられた.
    以上のことから, AMPを減少させない白干しの製造として, 二番煮以降の工程で冷凍処理できることがわかった. また, それ以前の工程の場合は, 急速解凍を実施することでAMPが損なわれない白干しを製造できることがわかった.
  • 長谷川 温子, 乙黒 明子, 熊谷 仁, 中沢 文子
    2005 年 52 巻 10 号 p. 441-447
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    超音波パルスドップラ法を用いて測定し, 咽頭部での流速スペクトルの20回以上を平均することで, ヒトの嚥下時における咽頭部を流れる食物の速度分布と粒子密度分布が得られた. 誤嚥しやすい食物と誤嚥しにくい食物の流速スペクトルには明らかな違いがあり, 超音波測定することで誤嚥する要因を考えることができ, ゲルの誤嚥の危険性・安全性を評価する指標を示すことができた.
    超音波測定で定量的に示された咽頭部での最大流速と動的粘弾性との関係から, 貯蔵弾性率G' 100Pa以上, 粘性率η 2Pa・s以上のゲルでは, 咽頭部での最大流速が0.2m/sと変わらず, 誤嚥しにくいと判断することができた. 食物の誤嚥しやすさと動的粘弾性による物性値には相関があることを明らかにし, 動的粘弾性測定により誤嚥の危険性・安全性を推測することができることが示された.
  • 添田 孝彦, 外園 亜紀子, 山崎 勝利
    2005 年 52 巻 10 号 p. 448-453
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    MTG添加により物性が向上した大豆タンパク質ゲルにさらにペプチド類を添加した場合の影響を破断試験およびクリープ試験により検討した. PL添加量に伴ってE0およびηNは増加し, τ1は低下した. GP添加ではηNおよびτ1が増加し, ゲルへの粘性向上に寄与した. このことより, PL添加では弾性と粘性発現に寄与し, GP添加では粘性発現に寄与した. ペプチド類のうち小麦および大豆タンパク質ペプチドにおいて, E0への影響は小さかったが, ηNは増加した. この傾向は低分子のGL-26で顕著であった. 以上のことから, MTG処理大豆タンパク質ゲルへの粘性向上はGPおよびGLにおいて効果的であるといえた.
  • 〓橋 沙織, 勝股 理恵, 吉澤 久美, 八巻 桃子, 大迫 美由紀, 村上 満利子, 毛利 さやか, 佐藤 みずき, 目黒 寛子, 久保倉 ...
    2005 年 52 巻 10 号 p. 454-461
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    1. 中国雲南省の淡豆〓から分離した細菌でわが国の糸引納豆を製造した結果, 撹拌すると豆の形が完全に崩れてしまうほど軟らかい納豆を製造することができる菌, KFP843を見いだした. 同定の結果, KFP843株はBacillus subtilisに属する菌であった.
    2. B. subtilis KFP843の納豆製造には2種類の温度プログラムを用いたが, KFP843株の最適生育温度である43℃を初発温度とする製造プログラムが適しており, 製造した納豆の硬さは, 市販納豆の硬さを100%とすると, それは約40%の硬さに仕上がった.
    3. ホルモール窒素は市販納豆のそれが0.94%であったのに対し, 本菌株で製造した納豆は0.28ないし0.38%であった. また糸引きは市販納豆よりもやや弱く, 相対粘度は市販納豆のそれが2.06であったのに対し, 1.10ないし1.21であった.
    4. 官能検査では, 菌の被り, 豆の割れ・つぶれ, 硬さの項目で市販納豆に比べて有意に良い評価 (p<0.05) であった. 市販納豆に比べて有意に (p<0.05) 糸引きは弱いが, 豆が軟らかいという評価を得た.
  • 須田 郁夫, 沖 智之, 西場 洋一, 増田 真美, 小林 美緒, 永井 沙樹, 比屋根 理恵, 宮重 俊一
    2005 年 52 巻 10 号 p. 462-471
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    沖縄県産の果実類や野菜類からアセトン (30℃) 抽出, それに続く80%エタノール (80℃) 抽出を行い, それら抽出液を用いてポリフェノール含量とDPPHラジカル消去活性の一斉分析を行った. 可食部の両抽出液のポリフェノール含量の総和は0.35~142.04μmol-gallic acid相当量/g-新鮮重の範囲にあり, そのポリフェノール含量の総和に比例してDPPHラジカル消去活性は高まった. 両数値がともに高いグループは, サポジラ, カニステル, グァバ, スターフルーツなどの熱帯原産果実類が属し, プロアントシアンジンを含んでいた. 次に高いグループは, ヤマモモ, 赤キャベツ, 水前寺菜, 紫色のカンショであり, アントシアニンを含んでいた. またニガナ, ボタンボウフウ, ニシヨモギなどの沖縄特産野菜も高含量・高活性であった. また果実類未利用部の中には, 可食部に匹敵あるいはそれ以上のポリフェノール含量, ラジカル消去活性を有するものがあった.
  • 古市 幸生, 水野 隆文, 山下 佳伸, 鈴木 淳史, 小畑 仁, 梅宮 善章
    2005 年 52 巻 10 号 p. 472-478
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    和歌山県産の南高梅について, 過熟梅果実から塩漬け, 脱塩・調味液加工する際の各種ミネラル含量等の変化について検討した. 塩漬け加工の際, カルシウムとマグネシウムは増加又はほぼ同じ量となり, カリウムは減少した. 微量元素のうち鉄は塩漬け加工によって著しく増加した. また, 塩のミネラル組成が塩漬け梅のミネラル組成に大きく影響することが認められた. 脱塩・調味液加工により, 可食部分におけるナトリウム濃度は減少したが, カルシウム, マグネシウム含量に大きな変化は認められなかった. またカリウムは減少したがかなりの部分残存しており, 減塩処理してもアルカリ食品としての機能が保持されているものと考えられた. 全てのミネラル濃度の変化は果肉よりも仁で小さかった. 果肉部の有機酸は大部分が調味加工後でも残存しており, これによりもたらされる低pHが梅干のミネラル組成に影響している可能性が示唆された.
  • 鈴野 弘子, 石田 裕
    2005 年 52 巻 10 号 p. 479-484
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    高地栽培バナナの風味の良さを化学成分の面から明らかにする目的で, 標高の異なる土地, すなわち, 高地 (1000m), 中地 (500m) および低地 (0-20m) で栽培した3種類のバナナを収穫後, 20℃で追熟させ, 各熟度別での成分変化を比較検討した.
    高地および中地栽培バナナの水分含有量は, 低地栽培バナナに比べ, いずれの熟度段階においても低い値であった. デンプン含有量は, 完熟段階 (ステージ3) において, 高地栽培バナナが最も低かった. また, 糖および酢酸イソアミル含有量は, 完熟段階で高地栽培バナナが最も多かった. 熟度段階の成分変化をみると高地および中地栽培バナナは低地栽培バナナに比較して, 未熟段階 (ステージ1) から適熟段階 (ステージ2) にかけて糖含有量, 糖酸比および酢酸イソアミル含有量が急激に増加した. 特に高地栽培バナナにおいては, 糖酸比と酢酸イソアミルが顕著な増加を示した. 以上の結果から, 標高の高い土地で栽培されたバナナは, 適熟段階において通常の低地栽培バナナより甘み, 香りが強くなることがわかった.
技術論文
  • 笹川 秋彦, 五味 正浩, 大浦 克彦, 山〓 彬, 山田 明文
    2005 年 52 巻 10 号 p. 485-490
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    常法では製麹が困難な玄米などの8種類の穀物に圧力処理を施し, 八穀麹を試作した. その麹を使用した八穀麹味噌を試作し, 試作した味噌の遊離アミノ酸含量やSOD様活性等を測定した. 結果は以下の通りであった.
    (1) 圧力処理を施し吸水させた後に蒸した8種類の穀物を原料とした八穀麹は, 製麹により麹菌糸の良好な伸延が見られた. 八穀麹の酵素活性について, 酸性プロテアーゼと中性プロテアーゼの活性は一般の米麹の力価と同等であり, アルカリ性プロテアーゼの活性は麦麹と同等であった.
    (2) 八穀麹味噌の熟成において, 酸度Iの上昇, pHの低下, Y値の低下, エチルアルコールの生成が見られた. 玄米や赤米, 麦類などは糖化して通常の米味噌の様に味噌中に溶け込んだ.
    (3) 八穀麹味噌は市販の淡色系および赤色系の米麹味噌に比べ, アミノ酸, 食物繊維, カルシウム, 鉄, ビタミンB1を多く含み, 高いSOD様活性を示した.
研究ノート
  • 丸山 広恵, 吉田 千絵, 徳永 勝彦, 荒木 陽子, 三島 敏
    2005 年 52 巻 10 号 p. 491-494
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    蛋白質分解酵素処理RJ由来IVYのSHRにおける血圧降下作用を検討した.
    1) IVYについて, 1.0及び10mg/kg体重の投与量で, 単回経口投与試験を行ったところ, IVY両投与群において有意な血圧低下がみられた. 心拍数等に異常は認められなかった.
    2) IVYについて, 1.0及び10mg/kg体重/日の投与量でSHRに対する反復経口投与試験を行ったところ, IVY両投与群に有意な血圧低下がみられた. 心拍数等に異常は認められなかった.
    3) WKYラットに対し, 10mg/kg体重/日の投与量でIVY投与による血圧及び心拍数への影響を検討したところ, コントロール群と同様であったことから, IVYは正常血圧及び心拍数には影響を及ぼさないと考えられた.
    4) 蛋白質分解酵素処理RJ由来ペプチドによる血圧降下作用において, IY及びVYに加え, IVYが関与する可能性が示唆された.
  • 白坂 憲章, 高崎 竜史, 吉栖 肇
    2005 年 52 巻 10 号 p. 495-498
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    梅加工品中に含まれる抗酸化・抗変異原活性を有する機能性成分として梅果実成分リオニレシノールの含量を検討し, 以下のような結果を得た.
    市販の調味梅干のリオニレシノール含量は製品の塩分濃度が低い製品ほどリオニレシノールの含量およびラジカル消去能が低い傾向がみられ, 調味工程における脱塩操作における流出が主たる原因と考えられた.
    調味梅干製造の漬け込み工程において, 調味液が果肉に浸透する調味の初期においては, 果肉からのリオニレシノールの溶出とその含量の減少に伴うと考えられるラジカル消去能の低下が認められたが, 調味液が浸透する2週目以降においては, リオニレシノール含量, ラジカル消去能共に増加が認められ, 浸透圧による種からのリオニレシノールの再移行が生じたと考えられた.
    以上の結果より, 調味液に添加が不可能なリオニレシノールなどの機能性成分の調味行程における低下を防ぎ, 有用成分を多く含む調味梅干を製造するには, 塩濃度を低下させるための過剰な脱塩を避け, 十分な浸透圧を持つ調味液を用いて十分な時間をかけて調味を行うことが必要と考えられた.
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技術用語解説
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