オカラは,食物繊維やイソフラボン類などの機能性成分を含むが,腐敗しやすく,その多くは産業廃棄物として処理され,食材として利用されることは少ない.本研究では,このオカラの有効利用および用途拡大を目的とし,紅麹菌で発酵させたオカラ紅麹を調製し,その抗酸化性およびイソフラボン類の解析を行い,新たな機能性食品素材としての可能性を検討した.
オカラ紅麹の調製には
Monascus anka AOK 2026を使用し,その増殖に適した製麹条件を確立し,発酵日数の異なるオカラ紅麹を調製した.製麹4日目には紅麹特有の赤色色素が著増し,濃赤色のオカラ紅麹が得られた.ABTS法による抗酸化活性は,製麹4日目に顕著に増大し,総ポリフェノール量も同じく4日目に増加した.抗酸化活性と総ポリフェノール量の間には高い正相関(
n=5, r=0.09,
p<0.01)が認められたことから,製麹過程における抗酸化能の増強には,ポリフェノールの関与が大きいと考察される.
大豆中の主要な抗酸化成分であるトコフェロール類とイソフラボン類のHPLC分析から,オカラ紅麹中のトコフェロール類に大きな経日変化は見られなかったが,イソフラボン配糖体は紅麹菌の産生する
β-グルコシダーゼにより,配糖体より強い抗酸化活性を有し,また生体吸収性の高いアグリコンに効率よく変換された.
オカラ紅麹を20%添加したクッキーは,紅麹無添加の対照クッキーに比べ,保存試験においてPOVおよびTBA価の上昇を顕著に抑制したことから,この紅麹はクッキーの脂質安定性を高め,保存性の向上に寄与することが分かった.また,官能評価においても紅麹の10%添加は,外観,味,硬さ,総合評価において好ましい結果を得ることができた.
これらの結果より,このオカラ紅麹は,高付加価値をもつ新たな機能性食品素材として利用される可能性が示唆される.
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