日本食品科学工学会誌
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45 巻, 6 号
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  • 大家 千恵子, 川端 晶子
    1998 年 45 巻 6 号 p. 341-348
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    品質の異なるコシヒカリ,ササニシキ,あきたこまち,高アミロース米,高タンパク米および日本晴の6種類の食味特性を機器測定と官能評価で検討した.その結果は以下の通りである.
    1. 飯1粒でのクリープ測定は6要素のフォークト体模型に対応させて解析できた.その結果,炊飯直後のクリープコンプライアンス曲線はコシヒカリ〉あきたこまち〉ササニシキ〉日本晴〉高タンパク米〉高アミロース米の順に高く,コシヒカリが柔らかいことが認められた.
    2. 全体に冷凍保存による弾性率と粘性率の変化は少なく,冷凍保存による物性の変化が少ないが,冷蔵保存では弾性率,粘性率共に増加し,冷蔵保存により老化,硬化が進行した.特に高アミロース米では老化が著しい結果であったが,コシヒカリ,あきたこまちは冷蔵保存しても硬化の進行が少ないことが明らかとなった.
    3. 分析型官能評価の特徴を因子分析により抽出した結果,第1因子は味と粘り,第2因子は硬さと歯応えなどの食感,第3因子は香りとふっくらさなどの外観に関する因子で,寄与率は各々39.8,36.5,23.7%であった.嗜好型では第1因子は味と形,第2因子は硬さ,粘り,歯応えなどの食感の因子で,寄与率は各々57.6,42.4%であった.
    4. 重回帰分析の結果,総合評価に対して最も影響をおよぼした嗜好の評価項目は口当たり,ふっくらさ,後味,粘り,甘味,つや,歯応えの順であった.
    5. クリープ測定値と官能評価項目との相関は弾性率と硬さ,歯応えとの間で正の相関が,また弾性率とふっくらさとの間で負の相関があり,いずれも有意の差が認められた.
  • 小川 哲郎, 松崎 一, 一色 賢司
    1998 年 45 巻 6 号 p. 349-356
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    食中毒などの微生物被害の未然防止を目的として,高圧とアリルイソチオシアネート(AIT)添加の併用処理による微生物制御を試み,以下の結果を得た.(1) AIT無添加で高圧処理を行った場合,完全殺菌には,細菌栄養細胞で300~500MPaの圧力を必要とした.芽胞は,600MPaの圧力処理によっても殺菌効果は認められなかった.また,E.coliの2菌株を比較した場合,CR-3の方が耐圧性が高かった.(2) AITの各細菌に対するMICは初発菌数の増加と共に高くなった.(3) 細菌栄養細胞において,高圧処理単独では殺菌効果の認められなかった200~300MPaの圧力でも,微量のAITを添加して処理することで殺菌が可能となった.しかし,圧力,AIT共に抵抗性のあるS.aureusや耐圧性芽胞には効果が少なかった.(4) AIT添加高圧処理後のAITによる静菌効果を検討したところ,高圧処理によって生じた初発菌数の減少に加え,存在するAITにより誘導期の延長効果が認められた.その延長時間は,AIT濃度の増加と共に長くなった.S.aureusにおいても,高圧処理による菌数減少は認あられないものの,AITによって菌数増加は遅延した.(5)高圧とAIT添加の併用処理による食品の保存効果を浅漬で検討した結果,日持ちが向上した.
  • 井川 佳子
    1998 年 45 巻 6 号 p. 357-363
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    基本的な単糖1種,二糖類2種,糖アルコール4種を単独と,2種ずつ組み合わせた計28種の糖及びショ糖を用いてスポンジケーキを調製し,糖の代替がバッターの性質や焼成過程の諸現象等に与える影響を明らかにしようと試みた.その結果,次のようなことが認められた.
    (1) バッター比重はラクトース単独を除き0.52以下と小さく,ケーキ比容積との間に負の相関が見られた.
    (2) バッターのDSC測定による熱変性ピーク温度(Tp)は79.2~93.2℃に分布し,バッターの構造変化に対応する温度と考えられた.
    (3) ケーキ生地の昇温速度,最高到達温度,ケーキの収縮開始時間は,いずれもTpとの間に相関関係があった.
    (4) ケーキ中央部のスポンジ構造形成期間(収縮開始時間とバッターTpに対応する時間との差)とTpとの間には直線関係(r=0.96)があり,この関係式から良好なスポンジ構造形成のTp限界温度(94.2℃)を推定した.
    (5) Tpとケーキ比容積の関係は,88℃付近に最大値を持つような2次方程式で近似(r=0.93)できた.
    (6) グルコースやマルトースを含むケーキはかたさ及び回復率が大きくなり,ソルビトール,マルチトール,ラクチトールを含むケーキは,柔らかく回復率が小さくなる傾向を示した.
    以上のことから,Tpの変化が焼成中のケーキ生地の温度履歴を左右し,蒸気圧やバッターの構造変化時期に影響を与える結果比容積が変化すること,Tpの調整によってケーキ比容積の調節が可能なことが示された.
  • 堀江 秀樹, 山内 雄二, 木幡 勝則
    1998 年 45 巻 6 号 p. 364-367
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    硬水で緑茶を浸出すると,白色の沈殿を生成することが知られている.この白色沈殿の13C-NMRスペクトルは,シュウ酸カルシウムスペクトルと一致した.また,新たに開発したキャピラリー電気泳動法により分析したところ,緑茶硬水浸出液のシュウ酸濃度は,蒸留水浸出液中のシュウ酸濃度より低かった.これらのことから,白色沈殿がシュウ酸カルシウムであることが判明した.さらに,シュウ酸が茶の渋味に寄与している可能性について考察した.
  • 橋本 俊郎
    1998 年 45 巻 6 号 p. 368-374
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    浅漬けの乳酸菌による変敗を防止するため,キトサンの抗菌作用を調べ,有用性と実用上の問題点を示した.
    浸透圧の高い調味液をキュウリ浅漬けに使用した場合は品質保持期間が5日以上に延長されたが,その後は乳酸菌の増殖により変敗した.これらの乳酸菌を分離し,性質を調べた結果,Lactobacillus sake及びLeuconostoc mesentesoidesと同定された.
    キトサンはこれらの乳酸菌に対して強い抗菌作用を有し,食塩無添加の場合,0.01%濃度で60分間処理によりほぼ100%の死滅率を示したが,pH及び食塩など食品成分の影響を受けて低下した.浅漬けの弱酸性(pH5.5),低食塩(3%)の条件下でキトサンの抗菌作用を低下させた食品添加物はカラギーナン,グルタミン酸ナトリウム,酢酸ナトリウム,リンゴ酸ナトリウム,塩化力リウムであり,逆に作用を増強した物質はエチルアルコール及びグリシンであった.
  • 生産構造方程式
    奥田 実夫, 植松 哲也, 馬場 明
    1998 年 45 巻 6 号 p. 375-380
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    筆者らは吉町1)の考えを,さらにデカンタ工程(固液分離),洗浄工程までに展開し,「いも」成分の「でん粉」,不溶分,可溶分,水分の各工程への分離移動を同定した.表3が「いも」成分の移行表であり,詳細にはそれに記載された成分因子を,37本の連立方程式に組み立てた(既知変数10個,未定方程式27本).
    これを馬鈴薯「でん粉」生産構造方程式とし解析したものである.
    この結果により工場搬入「いも」の4つの組成,「マサイ率」が指定されると,デカンタ排液量,生でん粉量,生粕量,セパレータ排水量を算定できることが明らかになった.本方法により,従来経験的になりがちであった工程管理改善に資するものと期待する.馬鈴薯については,最近含でん率の高い品種「コナフブキ」が入荷されるようになり,工場の生産収量も増加しつつある.
    なお,図1に示された如く,ブリュームと呼ばれる「いも」の流送,土砂洗浄水が,その10倍量消費される.ハイドロサイクロンの節水及びこれらの用水を含めた全貌についての解析は,次報で述べたい.
  • 奥 和之, 沢谷 郁夫, 茶円 博人, 福田 恵温, 栗本 雅司
    1998 年 45 巻 6 号 p. 381-384
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    トレハロースを含むとされる天然食品及び発酵食品中のトレハロース含量について,ガスクロマトグラフィーにより分析を行った.
    1) トレハロースはキノコ類,パン酵母に比較的多く含まれており,固形物当たりのトレハロース含量は,キノコ類で10~23%,パン酵母で7~11%であった.
    2) トレハロースは,酒類(日本酒,ビール,ワイン),味醂,大豆製品,エビ類に,海藻類ではモズク,ヒジキに検出され,各々のトレハロース含量は,30~240ppm,260 ppm, 5~150ppm, 5~5000ppm, 4ppm, 2700ppmであった.
    以上の結果より,トレハロースは,キノコ類,酵母類に多く含まれていたが,その他の食品にも幅広く含まれており,トレハロースは,日常的な食事において広く摂取されている糖質であると推察される.
  • 大森 正司
    1998 年 45 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 1998/06/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
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