日本食品科学工学会誌
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49 巻, 5 号
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  • 食品の新しい品質設計基盤として
    阿部 啓子
    2002 年 49 巻 5 号 p. 291-296
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
  • 岡本 清, 羽倉 義雄, 鈴木 寛一, 久保田 清
    2002 年 49 巻 5 号 p. 297-304
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    本研究では曲げ荷重下での凍結魚肉における「垂直切断」が起こる範囲を容易に予測する方法を明らかにすることを目的とした.
    凍結マグロ赤身肉を試料として,θfの異なる試験片を作成し,-70, -100, -130℃で3点曲げ試験を行い,試験片の切断様式(「垂直切断」が起こる割合)を測定した.またθf=0°, 90°の試験片については破壊応力を測定し,切断様式の予測に利用した.次に一方向強化材料の引張荷重下での破壊理論(最大応力説)を曲げ荷重に適用できるよう修正し,試験片の切断様式の筋線維配向角度(θf)依存性の予測方法を提案した.さらにこの方法による予測結果と凍結マグロによる切断様式の測定結果との比較より,予測式の適用の可能性について検討を行った.その結果以下のことが明らかとなった.
    (1) 試験片の切断試験の結果,-70℃における20°<θf<40°の範囲と,-100℃, -130℃における20°<θf<50°の範囲では,「垂直切断」と「平行切断」の両方が起こり得ることが明らかとなった.またこれらの切断挙動には温度依存性が見られた.
    (2) 破壊応力測定の結果,θf=0°, 90°の試験片とも,破壊応力の温度依存性が見られ,試験温度の低下とともに試験片の破壊応力は増加した.
    (3) 切断様式の予測において,θf=0°, 90°における破壊応力のばらつきを導入して計算することにより,「垂直切断」と「平行切断」の両方が起こり得る筋線維配向角度範囲を表現することが出来た.そこで破壊様式の予測は,破壊応力の標準偏差範囲を考慮して行う必要があることが明らかとなった.
    (4) θf=0°, 90°における破壊応力の分布範囲を平均値±(標準偏差×2)の範囲として予測することで,実測値に最も近似した切断様式の予測が可能であった.
  • 鈴木 博久, 中莖 秀夫, 濱田 義和, 志賀 一三
    2002 年 49 巻 5 号 p. 305-311
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    衛生ボーロが膨化するメカニズムを明らかにすべく,ボーロの主原料である馬鈴薯澱粉,卵および蔗糖の膨化への関与の仕方を検討し,以下の結果を得た.
    (1) 糊化度,X線回折像および示査熱量測定結果などから,澱粉は未糊化のままボーロの膨化に関与している.生地の水分が20%弱と低いため糊化に必要な水分量が不足して,焼成しても僅かの澱粉粒が熱損傷を受けた程度にとどまったと推定される.
    (2) 主原料のオミッションテスト.ボーロ生地の常温減圧下における膨張度の測定および焼成時ボーロ生地の中心温度の測定結果から,ボーロの膨化メカニズムはつぎのように推定される.ボーロ生地は,加熱を始め100℃あたりになるとゲル化した卵と蔗糖溶液の粘性が高くなり,空気の膨張とか発生する水蒸気を閉じ込めて徐々に膨化する.120℃付近に達温すると水が一斉に水蒸気として気化し,最大の速度で膨らむ.澱粉粒の存在によって,卵と糖の共同作用で形成される粘結性の皮膜の上に未膨潤の澱粉粒が並び,冷却とともにしっかりと固化する.すなわち,卵と蔗糖がセメントで澱粉粒が砂利であり,一種のコンクリート様の構造をとっているものと思われる.
    (3) 卵を卵白と卵黄に分け焼成した.卵白添加区の比容がより大きいが,卵黄添加区も充分な膨らみを示した.卵白の効果に鑑み,卵白蛋白質の効果をさらに調べたが,ボーロはよく膨化した.卵白蛋白質はグロブリンとかオボアルブミンの起泡性蛋白質を持ち,しかも粘稠性であるので膨化効果が大きいものと推定される.温水易溶性蛋白質のゼラチンの効果も検討したが,よく膨化した.生地の調製から加熱していく特性が,卵白蛋白質に類似する物質であればよいことを示唆している.
    (4) 蔗糖の代替として数種の糖を試験した結果,二糖類のマルトースとトレハルロースが蔗糖と同様に膨化効果を示した.水の蒸発とともに濃縮されて粘稠性を増す糖であることが必須であると思われる.
    (5) 生地を調製してから焼成に入るまでの生地放置時間が増すに従って比容の低下が著しい.この原因を比重および平均粒径が馬鈴薯澱粉に近似し,構造がノンポーラスで耐熱性樹脂のポリフェニレンスルファイドとの対比実験で調べたが,ポーラスな澱粉粒子が吸水して,ボーロの膨化に影響している可能性が高いものと推定される.
  • かつお節香の形成および劣化に寄与度の高い成分変化のメカニズムの研究(第4報)
    川口 宏和, 石黒 恭佑, 若林 秀彦, 深見 賢治, 上田 要一
    2002 年 49 巻 5 号 p. 312-319
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    かつお節粉砕後の密閉保存におけるカルボニル化合物などの劣化臭成分の変化について検討し,以下の結果を得た.
    (1) 条件を変えて保存した場合,-20℃ (24日間)で強い酸敗臭が発現したが,70℃ (4時間)では酸敗臭は弱く,弱い焦げ臭が発現した.25℃ (12日間)では酸敗臭が発現したが,その程度は-20℃の場合と比べて弱かった.
    (2) -20℃ (24日間),25℃ (12日間)および70℃ (4時間)のいずれの条件において保存してもカルボニル化合物が増加したが,組成は異なっていた.-20℃ではヘキサナールなどの直鎖アルデヒド類が増加したが,70℃では直鎖アルデヒド類は検出されず,分枝鎖アルデヒド類やケトン類が増加した.25℃ではそれらの中間的な組成を示した.これは,保存中に脂質の酸化分解(一次反応)と共存成分との反応(二次反応)が同時に起こり,温度によってそれぞれの反応の起こりやすさが異なるためと考えられた.
    (3) 保存中に生成した主な劣化臭成分は,酸素分子あるいは水分子中の酸素を取り込んで生成することを,18Oを使用した実験より確認した.
    (4) 保存中に増加した各種カルボニル化合物の標準物質を粉砕直後のかつお節に添加して,香気特性への影響をみた結果,ヘキサナールなどの直鎖アルデヒド類により酸敗臭的香りが発現することを確認した.また,分枝鎖アルデヒド類やケトン類の影響は少ないと考えられた.
  • 飯島 陽子, 諸井 千春, 萩原 修, 久保田 紀久枝
    2002 年 49 巻 5 号 p. 320-326
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    粉山椒として使用される山椒成熟乾燥果実の果皮について日本国産4種,韓国産,中国産山椒の試料を用いて香気成分を発生ガス濃縮導入装置によるヘッドスペースガス分析法により調べ,比較した.モノテルペノイド主体の炭化水素類22種,アルコール7種,アルデヒド6種,酸・エステル3種を同定または推定した.日本国産ではgeraniol関連成分の多い種,geraniolが少なくcitronellol関連成分の香気が主となる種に大別された.韓国産では,特に柑橘系のにおいをもつcitoronellalが多く含まれていた.一方,中国産山椒はかなり組成が異なり,他では少ないα-terpineneなどの炭化水素が多く検出され,citronellal, isopulegol, citronellal, geranyl acetateなどは含まれず,linaloolやterpinen-4-olが主成分であった.
    山椒未熟果実(青山椒)と成熟果実の香気成分を比較した結果,未熟果実では,d-limoneneなど炭化水素類が全ピーク面積の90%以上を占め,linalool, geraniol, geranyl acetateなどの含酸素テルペン類は,山椒の成熟中に生成されることが示唆された.
  • 小柳津 勤, 下田 満哉, 松本 清, 後藤 正
    2002 年 49 巻 5 号 p. 327-334
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    茶芽の熟度が緑茶の香気成分の変化に及ぼす影響を明らかにし検討を加えた.茶葉は'やぶきた'品種園から一番茶期および二番茶期において生育初期の極若い茶芽から生育の進んだ極硬い茶芽まで数日置きに17回摘採し,速やかに荒茶製造した.
    官能検査スコアと中性デタージェント繊維含有率との間には-0.859の高い負の相関があり,茶芽熟度は若芽香(みる芽香)およびこわ葉臭に大きく影響することが認められた.
    GC分析およびGC-MS分析により128成分が検出され,75成分が同定された.主成分分析の結果,摘採時期による香気成分の特徴的な変動を明らかにすることができた.(E,E)-2, 4-heptadienal, (E,Z)-2, 4-heptadienal, (Z)-2-penten-1-ol, hexanal, (Z)-2-heptenalは,一,二番茶とも摘採初期には含有率が低く,茶芽熟度の進行に伴って含有率が高くなったことから,こわ葉臭への寄与が示唆された.linalool oxide (cis-pyranoid), coumarin, 7, 8-dihydro-β-ionone, (E)-2-hydroxycinnamic acid, heptanoic acidは,一,二番茶とも摘採前期に高い含有率を示し,茶芽熟度の進行に伴って含有率が低下したことから,若芽香や新鮮香など新茶の香りに寄与している可能性が示唆された.linalool, geraniol, linalool oxide (furanoid)は,一番茶で茶芽熟度が進むに従い含有率が高くなり,摘採後期には高い含有率を示したが,二番茶ではその傾向が小さく含有率も低かったことから,こわ葉臭や木茎臭への寄与は小さいと考えられた.(Z)-3-hexen-1-ol, methyl 3-phenyl-2-propenoate, methyl jasmonate, indoleは,摘採時期の影響を受けなかったことから,緑茶本来の香りに寄与する成分と考えられた.
  • 羽倉 義雄, 鈴木 寛一
    2002 年 49 巻 5 号 p. 335-338
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    輪切りにした魚体に割裂荷重を加えて,さらに縦割り切断加工を施し,凍結魚をフィレーの状態に加工する方法について検討を行った.内臓を含む魚体腹部及び内臓を含まない魚体尾部に対して-190~-20℃の凍結温度で割裂試験を行い,縦割り切断加工が可能になる温度条件を調べた.その結果、腹部試料では-120~-60℃範囲で,脊椎骨・神経棘と内臓を同時に分離する縦割り切断が可能であった.尾部試料では-140~-80℃範囲で,脊椎骨・神経棘・血管棘を同時に分離する縦割り切断が可能であった.
  • 伊藤 智広, 伊藤 裕子, 水谷 峰雄, 藤城 克久, 古市 幸生, 小宮 孝志, 樋廻 博重
    2002 年 49 巻 5 号 p. 339-344
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    アズキ熱水抽出物(アズキ煮汁)の抗腫瘍活性及びその作用機構の一つであるアポトーシス誘導について検討を行った.
    アズキ熱水抽出物をDIAION HP-20で処理した後,蒸留水,40%エタノール,60%エタノール,80%エタノールと順に溶出溶媒を切り換え,各溶出画分を得た.これらの溶出画分を用いてヒト胃癌細胞(KATO III cells)の形態学的変化,増殖抑制作用及びアポトーシス誘導により生じるDNAフラグメントの検出を行った.その結果,40%エタノール溶出画分に小球状のアポトーシス小体が観察され,さらにアポトーシス誘導により生じるDNAの断片化を示した.
    また,40%エタノール溶出画分によるアポトーシス誘導についてDNA断片化の濃度及び培養時間依存性に関して検討した.その結果,アポトーシス誘導は濃度及び培養時間依存的であることが判明した.また,40%エタノール溶出画分によるヒト正常細胞に対する影響は観察されなかった.以上より,40%エタノール溶出物による抗腫瘍活性機構にはアポトーシス誘導が関与していることが示唆された.
  • 堀江 秀樹, 氏原 ともみ, 木幡 勝則
    2002 年 49 巻 5 号 p. 345-347
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    ウーロン茶を沸かした時に生成する油膜様物質は,紅茶において研究されているscumと同様のものと推定された.scumはカルシウムを含む弱アルカリ性の水にカテキン類を溶解し,80℃程度で保温したときに生成した.緑茶や紅茶ではほとんど問題とされないscumが,ウーロン茶で問題とされるのは,茶浸出液の調製法の差異によるものと考えられる.
  • 竹中 哲夫, 井上 里美, 竹中 陽子, 松本 裕子, 藤井 彰
    2002 年 49 巻 5 号 p. 348-352
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    おからを納豆菌で発酵するとビタミンK2が生成され,とくにMK-7が主成分で,しかもその約90%がタンパク質と水溶性の複合体を形成した.このK2複合体の分子量が約50000で,このタンパク質は糖を約32%含む糖タンパク質であった.
    おから発酵物からMK-7を単離・精製し,ヒト歯髄培養線維芽細胞のALPase活性に対する影響を調べたところMK-7はヒト歯髄培養線維芽細胞のALPase活性の増加を促進したことから,MK-7がヒト歯髄培養線維芽細胞の石灰化に関与することが示唆された.
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