日本食品科学工学会誌
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47 巻, 7 号
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  • 塩谷 敏明
    2000 年 47 巻 7 号 p. 477-486
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 相澤 秀樹, 堤 将和, 正木 武治, 劉 新旗, 渡邊 康, 鍋谷 浩志, 中嶋 光敏, 市川 創作, 井原 一, 佐野 洋
    2000 年 47 巻 7 号 p. 487-495
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    O/Wエマルションは通常多くの食品物質として利用されており,その安定性は食品の味覚や風味の保持,また封入した高機能成分の安定な取り込みをするなどの食品機能を向上する上で重要なものである.O/Wエマルションを安定化させるために通常は界面活性剤物質が用いられるが,界面活性物質の特性が安定性を大きく左右する.したがって,適合した界面活性剤の選択が重要である.粒子の安定性を評価するために静置法や顕微鏡観察法がなどが行われている.しかし,それらの試験法は定性的な結果しか得られない場合が多い.そこでこの論文では,ポリオキシエチレン[20]ソルビタンモノパルミテート(Tween40)あるいはポリオキシエチレン[20]ソルビタントリオレート(Tween85)とトリオレインで乳化したエマルションについて,物理化学的に検討した.動的光散乱,濁度法,また同様に電気泳動光散乱法のようなコロイド化学的手法を用いてこれらのエマルションの分散特性を明らかにした.また,表面張力法を用いて粒子表面における界面活性剤の吸着挙動を検討した.Tween40とTween85をそれぞれ用いて調製したエマルションでは粒径や凝集過程,吸着挙動に差異が認められたが,ζ電位,油水界面における界面活性剤の被覆率については差異が認められなかった.これらの結果からTween40の方がTween85に比べて界面への吸着しやすいために粒径が大きいO/Wエマルションが調製された.またTween40で調製されたO/Wエマルションの方がTween85で調製されたO/Wエマルションに比べて全相互作用エネルギーが高いために凝集しにくく,濁度法で凝集速度と半減期は約二倍違いがあった.これらのことによりTween40の方がTween85に比べてO/Wエマルションを安定化することが結論された.
  • 笠井 八重子, 大野 婦美子
    2000 年 47 巻 7 号 p. 496-502
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    こんにゃく製造における「のり」の物理的性状について,静的粘弾性測定法による測定を試み,みかけの粘度,こんにゃくの粘弾性との関係を検討し,以下の結果を得た.
    (1)「のり」は,高さ2mm,直径55mmの極めて薄い円板形に成形し,高剥離性のテープを用いた型枠を使用することで,容器に入れない状態での測定が可能となった.
    (2) 精粉「のり」のみかけの粘度とそのこんにゃくの粘弾性率は正の相関が認められたが,荒粉「のり」では,粘度の上昇に対しこんにゃくの粘弾性率は上昇がみられず,精粉とは異なる傾向を示した.
    (3) 「のり」の自重による変形量は,3.2%「のり」で認められず,2.2∼3.0%で試料直径の0.2∼0.3%であった.
    (4)「のり」の自重による変形量を,一定応力下のクリープ曲線から差し引いて補正し,得られたクリープ曲線を解析してみかけの粘弾性率を求めた.その結果,「のり」とこんにゃくの粘弾性率の変化には,各濃度で近似した傾向が認められ,特にフック体弾性率で顕著であった.
    (5)「のり」の静的粘弾性測定による評価によって,性状の異なる精粉及び荒粉「のり」とそのこんにゃくの物理的性状について特徴を相互に比較して評価し得ることが示された.
  • 下園 英俊, 時村 金愛, 池田 健一郎, 馬場 透, 津志田 藤二郎
    2000 年 47 巻 7 号 p. 503-508
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    サツマイモの調理後黒変の抑制するために,クロロゲン酸を分解する酵素の利用について検討した.
    (1) クロロゲン酸エステラーゼを調理後黒変の激しいベニオトメとベニハヤトに添加した結果,調理後黒変を抑制できた.
    (2) 酵素処理によりサツマイモペースト中のクロロゲン酸類はカフェー酸とキナ酸に分解された.分解速度はクロロゲン酸がイソクロロゲン酸より速く,またイソクロロゲン酸の中では3,5diCQAの分解が最も遅かった.
    (3) クロロゲン酸エステラーゼのクロロゲン酸類に対する基質特異性を検討した結果,クロロゲン酸の異性体である4CQAと5CQAが最も速く分解された.
    (4) クロロゲン酸エステラーゼが調理後黒変を抑制した要因として,この酵素がクロロゲン酸類を鉄イオンとの反応性の弱いカフェー酸とキナ酸に分解し,鉄イオンと反応した黒変物質の生成を抑制していることが考えられた.さらに,この酵素に不純物酵素として含まれいるペクチナーゼも酸性化を促す効果により黒変の抑制を補完しているものと推定した.
  • 堀内 久弥, 張 〓芳, 高橋 由利子, 村 清司, 徳江 千代子
    2000 年 47 巻 7 号 p. 509-515
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    台湾産の乾燥仙草から弱アルカリ性で濃褐色の粗抽出物(CEM)を得た.CEM自体ではゲル化しないが,薄いタピオカデンプンとともに急速糊化,冷却すると寒天様の堅いゲルになる.この現象をレオロジー的に研究した.タピオカデンプンと糊化したとき,RVA粘度,ゲルの動的弾性率が増加した.ジャガイモデンプン,モチトウモロコシデンプンでも同様にCEM濃度に比例して増加する挙動が認められたが,tanδからはCEM濃度は2%でよく,デンプン濃度は5%で飽和した.日本産シソ抽出物ではデンプンをゲル化させる作用は認められず,この作用は仙草抽出物特有のものと考えられる.タピオカデンプンをあらかじめ完全分散してCEMと再糊化するとゲル化しないので,このゲル化には膨潤したデンプン粒子が必要と考えられる.CEMのpHを7.0に調整し,あるいはCEMを透析するとより堅いゲルが得られた.
  • 柳原 哲司
    2000 年 47 巻 7 号 p. 516-522
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    炊飯米の外観を少量の試料で迅速に客観評価する方法を開発するために,画像解析装置の応用を試みた.炊飯米の外観を測定するための測定パラメーターの設定をおこない,少量炊飯条件および画像取り込み時のばらつきについても検討を加えた.また,画像解析測定値と官能評価との関連性を検討して,炊飯米の外観を評価する方法としての有効性について検討した.得られた結果は次の通りである.
    1.炊飯米の白さを画像解析により測定するためのパラメーターとして,画像の平均輝度値を設定し計測したところ,官能評価値と有意な相関関係が認められた.
    2.炊飯米のつやを画像解析により測定するためのパラメーターとして,画像中の高輝度部分を抽出し,累積画素数を計測したところ,官能評価値と有意な相関関係が認められた.また,この閾値として輝度値185を設定した.
    3.これらの測定パラメータを用いて,画像解析をおこなうことにより,炊飯米の外観を客観的に機器測定することが可能になると考えられた.
    4.炊飯時の加水条件について検討し,白米重量比1.5倍に統一した.
    5.画像取り込み時のばらつきおよび炊飯ロットによる測定値のばらつきは小さく,十分な再現性が得られた.
    6.設定した測定スキームに従えば,25gの白米試料で,1日に約100点程度の測定が可能である.
  • 松倉 潮, 金子 成延, 門間 美千子
    2000 年 47 巻 7 号 p. 523-528
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    (1) 米一粒ごとに新鮮度を測定する方法について検討した.玄米および白米をグアヤコール,過酸化水素,パラフェニレンジアミンを用いてカタラーゼ活性の強さに基づいて呈色させ,色彩色差計を用いて一粒ずつの呈色度を測定する方法を確立した.
    (2) 玄米を30°Cで貯蔵した場合,貯蔵期間が長くなるにつれて呈色度は小さくなった.玄米の測色値(ΔL*値およびΔb*値)および白米の測色値(ΔL*値)は,貯蔵0週間と10週間で大きく異なった.
    (3) 低温(10°C)貯蔵した場合,産年が古い米ほど呈色は弱く,9年産と6年産の玄米の測色値(ΔL*値およびΔb*値)は大きく異なった.
    (4) 以上のことから,新米と劣化の進んだ米が混ざっている場合の識別方法として使えるのではないかと考えられた.
  • 干し椎茸の嗜好性に及ぼす品種間差異について(第3報)
    春日 敦子, 前田 浩子, 渡井 俊之, 藤原 しのぶ, 青柳 康夫
    2000 年 47 巻 7 号 p. 529-537
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本産原木栽培椎茸5品種と最近市場に大量に出回るようになった多品種の混合と推定される中国産菌床栽培椎茸1種の計6種の1994年,1995年,1997年産干し椎茸について,5°Cの水温で平衡吸水量の90%に達する時間の水戻しを行い,加熱調理後官能検査を実施し,品種の違いによりおいしさに差が認あられるかどうか,日本産原木栽培椎茸と中国産菌床栽培椎茸に差が認められるかどうかを検討した.また前報1)2)で報告した椎茸の成分値と官能検査の評価との関係について検討を加えた.
    日本産原木椎茸間では,際立って低い評価のものはなく全体に似通っていたが,品種E,Dなどにいくつかの項目で有意な特徴が認められた.旨味成分が少なく,異味異臭のない淡白な品種でも,総合評価は高かった.中国産菌床栽培椎茸は日本産原木栽培干し椎茸と比較して,多くの項目に有意差が認められ,総合評価はいずれの日本産原木栽培椎茸より有意に低い評価であった.中国産が評価が低い原因は,テクスチャー,香りの評価が低いこと,また苦みが非常に強いことが大きな原因と思われた.
    窒素成分やレンチニン酸含量が多い方が必ずしも評価が高いわけではなく,官能検査の項目では苦味,テクスチャーが総合評価にかなりの影響を及ぼしていた.
  • UHT牛乳の官能特性および物理化学的性状に関する研究(第3報)
    岩附 慧二, 溝田 泰達, 住 正宏, 外山 一吉, 冨田 守
    2000 年 47 巻 7 号 p. 538-543
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    間接加熱法により殺菌したUHT牛乳の官能特性に及ぼす殺菌温度の影響を検討することを目的に専門パネルにより官能評価を行った.結果は以下の通りである.
    (1) UHT殺菌による牛乳の物理化学的性状(乳清蛋白質変性率,HMF,レンネッタビリティー,ラクチュロース)への影響はUHT120<UHT130<UHT140の順に大きくなった.この傾向は特に乳清蛋白質の変性率およびレンネッタビリティーで明確に示された.
    (2) UHT牛乳のおいしさの評価では大差ではなかったが,UHT130が最も好まれ,次いでUHT120が好まれた.UHT140は3種類の牛乳の中ではやや劣る傾向にあった.
    (3) UHT牛乳のおいしさには匂いの好み,後味の好み,新鮮感が重要であることや,ミルク味の強いことも好ましいと評価される要因であることが認められた.
    (4) UHT処理の殺菌温度が高くなるほど濃厚感が強くなり,UHT140が最も濃厚感が強い牛乳として位置づけられたが,風味のくせについては各UHT牛乳でほとんど差異はなかった.
  • 新居 佳孝, 福田 和弘, 坂井 堅太郎, 小松 龍史, 山本 茂
    2000 年 47 巻 7 号 p. 544-547
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カルシウムの可溶化と食品としての嗜好性の両面から,しらす干しに対する柑橘果汁もしくは米酢の添加について検討を行った.柑橘果汁もしくは米酢を添加したしらす干しからのカルシウムの可溶化率は,いずれも添加量の増加に伴って上昇した.パネルによる嗜好評価から,スダチ果汁を20%添加したしらす干しが,味,匂い及び総合評価において最も好まれた.以上の結果から,柑橘果汁を添加したしらす干しの食品開発にあたっては,カルシウムの可溶化率のみならず,嗜好性とのバランスを考慮に入れた条件設定が必要であると推察した.
  • 村松 良樹, 田川 彰男, 笠井 孝正, 境 博成, 福島 正義
    2000 年 47 巻 7 号 p. 548-550
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    10∼45%(w/w)の固形分濃度に調整したリンゴ果汁の熱物性を10∼50°Cの温度範囲で測定した.その結果,熱伝導率,温度伝導率は温度について一次式,また濃度に関しては二次式とした実験式でそれぞれ表すことができた.また,比熱については,温度,濃度双方に関して一次式とした実験式を得た.
  • 熊谷 武久, 瀬野 公子, 渡辺 紀之, 岡田 早苗
    2000 年 47 巻 7 号 p. 551-554
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    米及び米加工品から乳酸菌を分離,同定し,4-NQOに対する抗変異原性を検討した.
    (1) 米及び米加工品より分離した植物性乳酸菌80株の内訳は,Lactobacillus属60株,Streptococcus属18株,Leuconostoc属1株,Pediococcus属1株であった.
    (2) 分離菌の洗浄菌体を調製し4-NQOに対する抗変異原性率を測定し,活性の高い10株を選択した,それらはすべてLactobacillus属であった.
    (3) 選択した10株の加熱洗浄菌体の抗変異原性はすべての株で著しく低下,もしくは活性が消失した.
    (4) 分離した乳酸菌の牛乳に対する発酵性は低く,グルコースと液化米粉を牛乳に添加することで良好な発酵物が得られた.
    (5) 発酵物の抗変異原性は洗浄菌体と同様,高い値を示したが,加熱により活性の低下又は消失が見られた.
    (6) 加熱発酵物の抗変異原性率が疑似酸乳より高いこと,及び加熱菌体にはほとんど活性が見られないことより,乳酸菌による牛乳分解物等の発酵生成物もしくは乳酸菌の代謝物質による効果が示唆された.
  • 瀬野 公子, 熊谷 武久, 渡辺 紀之, 岡田 早苗
    2000 年 47 巻 7 号 p. 555-559
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    発酵乳(L. casei subsp. casei 327 5.4×108cfu/g, S. thermophilus 510 3.4×108cfu/gを含む)の腸内到達性を検討後,健康女性29名を対象に1日当たり100gを摂取させ,排便回数,排便量及び便性への影響を検討した.
    (1) 健康な被験者4名中に発酵乳を摂取させたところ,3名に糞便中の乳酸桿菌数の増加が見られ,同定したところ,L. casei subsp. casei 327と同一の性状を示した.
    (2) アンケート調査は,摂取前の排便回数が週4回以下の便秘傾向者とそれ以上の正常者に分けて行った.
    (3) 便秘傾向者では,発酵乳を摂取することで排便回数が有意に増加し,摂取後も維持された.
    (4) 便秘傾向者の便性についても,形状,色,かたさの改善が認められた.しかし,量,におい,爽快感では有意な差は認められなかった.
    (5) 正常者ではかたさがやわらかくなる効果が確認されたが,その他の項目では大きな変化は認められず,正常な状態が維持された.
    (6) 便秘傾向者の便通改善には,本発酵乳を1日当たり少なくとも100g摂取すれば排便回数,便性の改善が期待できると推察した.
  • フコース含有キシログルカンオリゴ糖の製造に関する研究(第2報)
    加藤 陽治, 野呂 治, 東 康夫
    2000 年 47 巻 7 号 p. 560-563
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    フコース含有キシログルカンオリゴ糖を生産するための基礎的知見を得るために,落花生殼多糖標品中のキシログルカンの構成オリゴ糖単位の構造解析および落花生殻多糖標品に対する市販酵素標品の加水分解機構を調べた.落花生殻に含まれるキシログルカン量は殻重量の約0.4%であった.落花生殻キシログルカンを構成するオリゴ糖単位は,XXXG,XXLG,XLXG,XXFG,XLLGおよびXLFGで,そのモル比は33:4:5:25:6:27であった.また,工業用ヘミセルラーゼ酵素標品セルロシンT2が落花生殻多糖標品からキシログルカンオリゴ糖を生産するのに有効な酵素の一つであることがわかった.
  • シェフによるジャガイモの裏ごし操作の例
    野坂 千秋, 星川 恵里, 久保田 浩二, 足立 和隆, 渡邊 乾二
    2000 年 47 巻 7 号 p. 564-566
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A straining process of potatoes by a professional chef was examined by motion analysis. The force applied by him in the process was expressed as its vertical component, horizontal component and their resultant force. Their maximum forces measured were 11.35kgf, 2.92kgf and 11.83kgf, respectively, indicating that the vertical component was predominant over the horizontal component in the resultant force through the whole process of straining. This experiment showed that the motion analysis was well suited to explain a load on food materials dynamically and that the analysis would be useful for investigation of cooking-processes.
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