日本食品科学工学会誌
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70 巻, 3 号
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報文
  • 宮本 雄基, 角田 光淳, 田崎 達明, 栗 彩子, 川原 一芳
    原稿種別: 報文
    2023 年 70 巻 3 号 p. 109-115
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    大豆は機能性や栄養に富んだ有用な食材であるが, 不快な味や臭い, さらに不活化の困難な栄養阻害因子などを含み, 利用を妨げている. そこで, 栄養阻害因子のトリプシンインヒビター (TI) の不活化にアルコールのタンパク質変性能を利用し, 不活化を検討した. また, 耐熱性のウレアーゼ (UA) とTIの不活化が連動6) するのかについて考察した.

    沸騰水浴中で大豆粉分散液及び枝豆のTI活性度の経時変化を調べた. その結果, 大豆粉のTIはほとんど不活化しなかったが, 枝豆は茹で汁中への溶出と共に緩やかに減少傾向を示した. また, 大豆TIは70 %アルコール下, 常圧加熱ではほとんど不活化しなかった. そこで容器に大豆粉とアルコールを入れ密閉し, 加圧加熱による不活化を検討した. その結果, この処理によってTIの不活化が顕著に認められた. なお, 加圧熱アルコールによるUA及びTIの不活化は, アルコール濃度とその温度及び時間に依存することが示唆された. TIの不活化には, エタノールを添加した加熱が必要であり, これはエタノールを加えない同温度による加熱との比較で明らかな差を示した. またUAは105 ℃, エタノール濃度20 %以上でほぼ不活化した. これらの結果より, 両者の同時不活化が可能であることが確認できた.

  • 太田 美樹, 石原 清香, 後藤 佳代, 栗田 真衣, 中馬 誠, 船見 孝博
    原稿種別: 報文
    2023 年 70 巻 3 号 p. 117-127
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    本研究はアイスクリーム類の喫食中に感じる食感の「リッチ感」に関わる要素を明らかにすることを目的とした. 市販のアイスクリーム類および試作したアイスクリーム類について, 12名の評価者で食感の「リッチ感」を評価するとともに, 経時的な食感変化を捉えることのできるTDS法を用いて食感を評価した. TDS法では「かたい」, 「ふんわり」, 「ねっちり」, 「さくい」, 「なめらか」, 「シャリシャリ」, 「もったり」, 「すっきり」の8用語を用いた. TDSカーブから算出したパラメータを用いた重回帰分析により「リッチ感」に関わる食感要素を調べた. その結果, 付着感に関する「ねっちり」と「さくい」, 舌ざわりに関する「なめらか」と「シャリシャリ」, 後口に関する「もったり」と「すっきり」を含むパラメータが説明変数として選択され, これらの食感要素が「リッチ感」に寄与していることが明らかになった. また, 安定剤等は特定の食感要素をコントロールし「リッチ感」を向上させることが明らかになった. これらの知見は, アイスクリーム類の食感評価および今後の安定剤開発に応用できると考えられる.

技術論文
  • 野呂 渉, 髙橋 誠, 赤塚 昌一, 奥西 智哉, 渡辺 聡
    原稿種別: 技術論文
    2023 年 70 巻 3 号 p. 129-137
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/15
    [早期公開] 公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    無菌化包装米飯は, 常温で保存でき簡便な加熱調理で食べられることから, その需要は年々増加している. 本研究では, 無菌化包装米飯の賞味期限延長のために, 賞味期限設定の指標となるにおい成分を探索し, これが品質に及ぼす影響を検討した. そのために, 異なる包装資材で包装された無菌化包装米飯による15カ月間の長期保存試験を行い, 容器内酸素濃度やにおい成分の変化を調べた.

    Monolithic Material Sorptive Extraction (MMSE) 法によるGC/MS分析の結果, n-ヘキサナールは他のにおい成分よりも顕著に検出され, 保存期間が長く保存温度が高いほど増加した. また, 保存期間中の容器内酸素濃度は, 脱酸素剤によりいずれの包装容器においても低く保持されていたが, 酸素透過度の高い包装資材ほどn-ヘキサナールが増加した. このことから, 大気中から包装資材を通過して侵入した酸素は米飯と素早く反応すると推察され, より酸素透過度の低い包装資材の使用が無菌化包装米飯の賞味期限延長に有効と考えられた.

    保存試験を通じての無菌化包装米飯のn-ヘキサナールと官能評価の間には有意な負の相関 (香り:r = -0.73, 総合評価:r = -0.79) が認められ, n-ヘキサナールは無菌化包装米飯の賞味期限設定の有望な指標になると考えられた.

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