日本食品科学工学会誌
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60 巻, 1 号
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報文
  • 鈴木 彌生子, 國分 敦子, 絵面 智宏, 中山 和美
    2013 年 60 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,三陸産(45検体)·鳴門産(64検体)·中国(54検体)·韓国(46検体)において産地の明確な湯通し塩蔵ワカメを浜単位で入手し,炭素·窒素·酸素安定同位体比を用いて,産地判別の可能性を検証した.鳴門産については,炭素·窒素同位体比ともに,個体内変動·季節変動·地域変動が小さく,全般的に値が安定した傾向が見られた.また,鳴門産の窒素同位体比は10.7±1.1‰(平均値±標準偏差)となり,三陸産(1.4±1.9‰)·韓国産(0.5±1.6‰)·中国産(3.0±2.5‰)よりも有意に高い傾向が得られた.一部中国産については,炭素同位体比が低く,窒素同位体比が高くなる傾向が得られた.酸素同位体比は,韓国産が比較的高い値を示したが,日本·中国·韓国の平均値の差は2.1‰となり,地域差は小さかった.炭素·窒素同位体比の結果を用いて,鳴門産とその他(三陸·中国·韓国)の2群について判別分析を行った結果,判別関数を構築した試料について,正答率を計算すると,鳴門産は98.4% (64点中),その他産は99.4% (145点中)となった.交差検証法を用いて判別関数の精度を検証した結果,96.8%の鳴門産が正しく分類された.年変動といった検証が必要であるが,炭素·窒素同位体比によって,鳴門産を判別できる可能性が高いと考えられる.
  • 今泉 鉄平, 折笠 貴寛, 村松 良樹, 田川 彰男
    2013 年 60 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    サトイモおよびナガイモの熱湯浸漬過程におけるカリウム溶出現象は拡散方程式の無限円筒モデルで説明された.
    また,サトイモおよびナガイモのブランチングへマイクロ波(包装試料,無包装試料)および熱湯浸漬を適用し,酵素活性,色彩変化,硬さ,質量損失率,カリウム損失率について検討したところ,以下の知見が得られた.
    (1) いずれの試料に関しても,試料中のPODの失活までに要する時間は包装,無包装,熱湯浸漬の順で短く,マイクロ波ブランチングによる時間短縮効果が明らかとなった.
    (2) ブランチング後にはいずれの方法においても色差の増加が見られ,とくに,サトイモでは処理法の違いによる色彩変化の差が顕著であった.
    (3) マイクロ波ブランチングを行った場合には試料に著しい軟化が見られた.
    (4) マイクロ波ブランチングを行うことでドリップの発生を抑制することができた.
    (5) カリウム損失率は加熱後,冷却後,解凍後それぞれにおいて熱湯浸漬よりマイクロ波によるブランチングを用いた試料のほうが低い値となった.
    以上のことから,サトイモおよびナガイモのブランチングには包装した試料にマイクロ波を照射する方法が有用である可能性が示唆されたが品質に関しては更なる調査が必要である.
  • 古賀 良太, 鍔田 仁人, 池口 主弥, 髙垣 欣也, 入野 信人, 近藤 隆一郎
    2013 年 60 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    大麦若葉末の高コレステロール血症に対する影響を動物試験および臨床試験で確認した.
    動物試験では,大麦若葉末の高コレステロール血症モデルラットへの影響を検証するため,動物を普通食群,コレステロール食群,また,コレステロール食に大麦若葉末を4%混餌した大麦若葉末群の3群に分け,4週間の各試験食を摂取させた.その結果,大麦若葉末群では,摂取4週間後においてコレステロール食群と比較して血中総コレステロール値(TC)および血中LDLコレステロール値(LDL-C)で有意な低下を示した.また,臨床試験では,15名を対象に大麦若葉末含有飲料の摂取による血中コレステロール値に対する影響を確認した.1名を解析から除外し,被験者14名を解析の対象とした結果,TCでは摂取8週間後および摂取12週間後に,LDL-Cでは摂取12週間後において有意な低下が認められた.
    また,in vitroで胆汁酸吸着能を測定した結果,大麦若葉末は胆汁酸に対して強い吸着能を有することが認められ,また,食物繊維を含む大麦若葉末ヘキサン抽出残渣に強い胆汁酸吸着能があることが確認された.
    以上の結果から,大麦若葉末は高コレステロール血症に有用な機能性を有しており,その作用機序の一因として大麦若葉末由来の食物繊維が胆汁酸吸着能に関与する可能性が示された.
  • 等々力 節子, 亀谷 宏美, 内藤 成弘, 木村 啓太郎, 根井 大介, 萩原 昌司, 柿原 芳輝, 美濃部 彩子, 篠田 有希, 水野 亮 ...
    2013 年 60 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    食品中放射性セシウムの一般食品の新基準値である100Bq/kg程度の大麦玄麦を焙煎し,標準的な方法で調製した麦茶について放射性セシウムの浸出割合を検討した.焙煎麦から浸出液への放射性セシウムの移行は,浸出時間120分で38 %程度であった.浸出液は焙煎麦に対し約30倍量の水で希釈され,さらに移行率も50%を超えないため,麦茶の放射性セシウム濃度は,1.83Bq/kg程度であり,100Bq/kg程度(138Bq/kg)の玄麦を原料として使っても,飲料の基準の10Bq/kgを大きく下回ることが予想される.
技術論文
  • 伊藤 和子, 阿久津 智美, 大山 高裕, 渡邊 恒夫, 山﨑 公位, 角張 文紀, 吉成 修一, 荒井 一好, 橋本 啓, 宇田 靖
    2013 年 60 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    高い機能性と美しい色調を持つナス由来のアントシアニン色素「ナスニン」を,現在は廃棄されているナス下漬液から回収して有効活用することを目指して試験を行った.
    各種の合成吸着剤の吸着性能を検討し,最も吸着能の高い合成吸着剤としてHP-20を選定した.本吸着剤1mlはナス下漬液約100mlの色素成分を吸着する一方,下漬液中の食塩の95.7%,ミョウバン由来アルミニウムの99.1%が除去できた.
     吸着した色素成分は5mol/l酢酸水溶液で効果的に溶出され,ナスニンの回収率は87%であった.しかし,調製された色素画分にはナスニン以外にクロロゲン酸と未同定のいくつかの成分も混在した.この色素粉末のORAC値は1g当たり10432μmol Trolox当量であり,クロロゲン酸の活性の69 %に匹敵する比較的高い抗酸化性が認められた.
研究ノート
  • 三宅 義明, 井藤 千裕, 糸魚川 政孝
    2013 年 60 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    小笠原·島レモンに含まれる機能性成分のフラボノイド,フェニルプロパノイド,クマリン類の特徴を調べることを目的に,低熟度,高熟度の小笠原·島レモン,マイヤーレモン,ユーレカレモン,温州みかんに含まれる各成分を定量分析し,比較検討した.小笠原·島レモンはフラボノイドのヘスペリジンが主成分であり,未熟果実のアルベドに多く含まれていた.マイヤーレモンから単離報告8) されているフェニルプロパノイドのメイエリンは小笠原·島レモンのアルベドに多く含まれ,ユーレカレモンより高含有であった.小笠原·島レモンに特徴的な物質を単離し,7-メトキシ-5-プレニロキシクマリンと同定した.小笠原·島レモンのクマリン類は,5,7-ジメトキシクマリンと7-メトキシ-5-プレニロキシクマリンが低熟度果実フラベドにユーレカレモンに比べて高含有であった.小笠原·島レモンに含まれるこれら機能性成分の成分組成と含有量は全般的にマイヤーレモンと類似していた.
  • 濱岡 直裕, 中川 良二, 比良 徹, 八巻 幸二
    2013 年 60 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    小豆について,特に種皮以外の部分が有する血糖上昇を抑制する機能性を評価した.その結果,種皮付きおよび種皮を除去した小豆ペプシン分解物にαグルコシダーゼ阻害およびグルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1)分泌の活性が確認された.αグルコシダーゼ阻害活性については種皮を除去しても安定であり,かつトリプシン消化に対する耐性も有することが明らかになった.これらの結果より,小豆の子葉部は食後高血糖を抑制しうる生理活性を有することが明らかになり,糖尿病や肥満症の予防などに有効な機能性食品素材として活用できる可能性が示唆された.
  • 樋口 裕樹, 熊谷 武久
    2013 年 60 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    米を原料とした加工の異なる米菓と炊飯米を対象とし,アミラーゼを用いた人工消化試験による生成糖量を測定した.米菓両群は反応5分後から反応終了60分まで炊飯米と比較して有意に生成糖量が増加した.次に間食を想定した炭水化物量を被験者に摂取させ,食後血糖値の変化から消化速度を比較した.米菓両群は炊飯米と比較して,食後15分と30分で有意に血糖値が上昇した.RVA曲線の最終粘度から,米菓両群の製品は炊飯米と比較して低い値を示し,蒸練工程によりデンプンの低分子化が生じたと推察した.米菓は焼成工程により大小様々な空隙の形成が電子顕微鏡写真により観察され,米菓両群の比容積は炊飯米と比較して有意に高い値であった.これらのことから米菓製造工程でデンプンの低分子化および空隙が形成されるために,デンプンの消化速度が速くなったと示唆される.
  • 八戸 真弓, 内藤 成弘, 佐々木 朋子, 明石 肇, 等々力 節子, 松倉 潮, 川本 伸一, 濱松 潮香
    2013 年 60 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2013/01/15
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
    中華麺の調理工程での放射性セシウム動態に及ぼすかん水添加効果を,本来のかん水添加中華麺(かん水中華麺)とかん水の代わりに食塩を添加して調製した麺(食塩中華麺)を用いて比較検討した.
    (1)麺から茹で液への放射性セシウムの移行率はかん水中華麺麺(47%)が食塩中華麺(67%)より有意に低く(p<0.01),かん水の使用が中華麺から茹で液への放射性セシウムの移行を抑制することが示された.
    (2)かん水中華麺と食塩中華麺の変形率20,50,80,95%の圧縮荷重値は,生麺では20と95%において,茹で麺では50,80,95%において,前者が後者よりも有意(p<0.05)に高く,かん水中華麺がより硬い傾向にあることがわかった.以上のことから,中華麺に含まれる放射性セシウムは調理工程によって低減されることが明らかとなるとともに,かん水の使用は麺の物性を硬くなる方向へ変化させ,茹で麺から茹で液への移行を抑制したものと考えられた.
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