日本食品科学工学会誌
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52 巻, 5 号
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総説
報文
  • 添田 孝彦, 外園 亜紀子, 小澤 貴彦, 藤原 尚
    2005 年 52 巻 5 号 p. 207-211
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    MTGの接着における糊剤として, カゼイネートに限らずゼラチンや大豆蛋白質も有効であった. 糊剤に対する加水量はカゼイネート8~10倍, ゼラチン10倍 (低ブルーム品) ~20倍 (高ブルーム品), 大豆蛋白質4~6倍が最適であった. 糊部および接着界面部の架橋結合量を測定した結果, 接着強度は接着界面部の架橋量と相関を示し, 糊部の架橋量とは相関しなかった. 接着界面部の架橋量は糊部の4~7%にすぎなかった. このわずかな結合量でも糊部と接着界面部を繋ぎ合わせることができ, 強い接着性が得られると考えられた. 電顕による組織観察から接着のメカニズムを考察すると, 糊部が接着表面の間隙に浸透し, それとともにMTGにより架橋結合が生成し, 固定が完了すると考えられた.
  • 小早川 和也, 大滝 尚美, 西田 淑男, 浅野 正成, 吉尾 信子, 前田 巌, 久松 眞, 谷口 肇
    2005 年 52 巻 5 号 p. 212-218
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    蒸煮処理早炊き米の平衡水分量は精白米のそれと異なり, 温度依存性があり, 高温 (50℃) では精白米の倍以上の水分 (62%) となった. 早炊き米の炊飯時間短縮には, 吸水量の増加が大きく寄与していることが示唆された.
    吸水量の増加はSEM観察で明らかとなった米粒表面での澱粉糊化層の形成, 及び, X線回折図形が示す粒中心部まで及ぶ澱粉結晶構造の消失に起因する澱粉の構造変化が寄与していると推測された.
    更に, 外観観察 (長径方向への不可逆的構造変化), 粒度分布 (早炊き米粉砕物の中心画分での細粒増加), RVA (最高粘度到達時間の遅れ及び粘度の低下) などの結果より粒全体の組織構造, 特に澱粉複粒が内在する細胞壁構造の変化も大きく関与していることが示唆された.
  • 山〓 勝利, 鳴戸 康, 上田 要一
    2005 年 52 巻 5 号 p. 219-225
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    本研究では, タンパク質架橋重合化酵素であるトランスグルタミナーゼ (以下, MTGと略す) に着目して, スポンジケーキの調製工程における有用性について検討した. その結果, スポンジケーキの要件を満たすことが可能となり, 以下のような有用性をみることができた.
    (1) MTGによりスポンジケーキの比容積の向上が図れた.
    i) MTG 0.5u/gp~5.6u/gp最も効果を発現された. 14u/gpでは比容積の減少がみられた. ii) MTGと他の改質材0.5%との併用においては, 乳化剤, 増粘多糖類, 小麦タンパク分解物の順に作用性が高く得られた. iii) MTG 1.4u/gpと乳化剤0.2%の併用において, MTG単独に対して, 約1.2倍の比容積を得た.
    (2) MTGの添加により, スポンジケーキの上面の凹みや, 皺もみられず形状の整ったスポンジケーキが得られた. i) MTGの最適添加量は0.5~1.4u/gpであった. ii) 2.8u/gp以上では表皮部がやや硬くなる傾向を示したが, 乳化剤, 増粘多糖類0.2%との併用において, 保形性のよいクラムが形成され, 気泡がよくのびて, しっとりして柔らかい食感が得られた.
    (3) 破断試験による物性評価では, 無添加に対して, MTG 1.4u/gp添加において破断強度が高くなり, 破断距離ものびたことから, 弾力と柔らかさが向上する傾向が得られるものと推定された.
    (4) SDS-PAGEからも低分子グリアジン画分の減少が認められた. これらのことからMTGによるスポンジケーキの有用性および主な反応基質タンパク質などが示唆された.
  • 大橋 きょう子, 島田 淳子
    2005 年 52 巻 5 号 p. 226-235
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    ジアシルグリセロールより調製したマヨネーズ様水中油滴型エマルションの乳化性に及ぼす塩の種類の影響をトリアシルグリセロールのそれと比較検討し, 次の結果を得た.
    (1) 塩類の添加により, TAG, DAGともに全てのエマルションの粘性係数および降伏値は増加し, 流動性指数は減少し, チキソトロピー性が生じた. エマルションの平均粒子径は小さくなった.
    (2) エマルションの流動特性に対するCaCl2およびMgCl2添加の影響は, TAG, DAGともに, NaCl, KClおよびMgSO4添加に比べて大きかった.
    (3) 塩濃度の影響は高濃度 (水相に対して3.30% (w/v)) において低濃度 (水相に対して1.65% (w/v)) よりも大きい傾向にあったが, CaCl2添加DAGエマルションは, 高濃度では不安定になり, 構造破壊を示す流動曲線を示し, 粒度分布の巾も広くなった.
    (4) 塩類の混合は, DAGエマルションの構造を不安定にすることが示唆された.
技術論文
  • 添田 孝彦, 外園 亜紀子, 大村 浩久
    2005 年 52 巻 5 号 p. 236-240
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    短時間熱処理により脱臭処理が施された大豆について品質評価をおこなった.
    (1) 水分は対照区大豆に対して処理区大豆は約7%低かったが, その他の一般組成およびアミノ酸組成では大きな差異はみられなかった.
    (2) ガスクロマトグラフ分析により, n-hexanalおよびn-hexanolのピーク面積および総フレーバ面積の減少から, 処理区大豆粉および処理区SPIは明らかに対照区に比べて大豆香気が低減された.
    (3) 処理区SPIゲルは対照区SPIゲルに対して赤味とくすみが少ない鮮やかな黄色をもった.
    (4) クリープ試験から処理区SPIゲルは対照区SPIゲルに比べてE0は低く, ηNは高いことから, 弾力をもったしなやかで粘りのあるゲルであることが示された.
    (5) 官能評価結果から, 処理区SPIゲルは大豆臭, 特に収斂味が低減し, しなやかなゲルであるといえた.
技術用語解説
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