日本食品科学工学会誌
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61 巻, 4 号
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報文
  • 吉田 裕史, 折笠 貴寛, 小出 章二, 村松 良樹, 田川 彰男
    2013 年 61 巻 4 号 p. 151-159
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2014/05/31
    ジャーナル フリー
    キウイフルーツの熱風乾燥過程において,短時間熱湯浸漬による前処理を適用した結果,以下の知見が得られた.
    (1)前処理を適用することでPPO活性が低下し,乾燥過程における褐変が抑制され,乾燥中の褐変現象の速度論的解析が可能ではないかと考えられた.
    (2)熱風乾燥過程における,表面積変化は含水率の一次関数として表すことが可能であった.また,前処理を適用することで乾燥過程における表面積変化が抑制された.
    (3)前処理を適用することで,表面硬化が抑制され乾燥速度が増大した.また,前処理を適用した試料では,乾燥過程初期に恒率乾燥期間が確認された.
  • 小泉 鏡子, 阿久津 哲也, 中下 留美子, 鈴木 彌生子
    2013 年 61 巻 4 号 p. 160-167
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2014/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,さくらえび製品の産地判別手法としてDNA分析および炭素・窒素安定同位体比分析の有効性について検討を行うとともに,加工処理(干す・煮熟)および甲殻類など外骨格を有する生物の安定同位体比分析の前処理として実施される酸処理が,サクラエビの炭素・窒素安定同位体比に及ぼす影響について検討を行った.
    産地判別手法としてのDNA分析の有効性については,生さくらえびのmtDNAの16SrRNA遺伝子の部分塩基配列を比較したところ,駿河湾産と台湾産に全く差が見られなかったことから,16SrRNAおよびCOI領域を対象としたDNA分析による駿河湾産と台湾産サクラエビの判別は困難であることが明らかとなった.一方,安定同位体比分析により,各ロットレベルでのさくらえび製品の産地判別の可能性が示唆された.
    加工処理(干す・煮熟)がサクラエビの炭素・窒素安定同位体比に及ぼす影響については,干すという加工処理は炭素・窒素安定同位体比に大きな影響を及ぼさないが,煮熟という加工処理により窒素安定同位体比が低下する個体が存在する可能性が示唆された.
    生さくらえびにおける酸処理の影響として,δ13C値が有意に低く(p<0.001)なり,δ15N値が有意に高くなる(p<0.05)傾向が確認された.
  • 森口 奈津美, 中村 卓
    2013 年 61 巻 4 号 p. 168-177
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2014/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では卵白-寒天共存ゲルの両連続相構造に着目し,このゲルの力学特性が強化されるナノメートルスケールのミクロ両連続相構造を形成することを目的とした.また,卵白と寒天の固形分濃度と配合の異なる共存ゲルの破断特性の差を構造の違いから説明することを目的とした.
    相分離のスケールに関わらず,卵白および寒天の併用ゲルでは,その構造主体となる成分の破断特性が優先的に発現することが明らかとなった.しかし,卵白と寒天の両成分が連続構造となる両連続構造では,単独ゲルの性質とは異なる新規な破断特性を示した.特に,新規な両連続ミクロ相の形成は共存ゲルの力学的強度を強化した.この両連続のミクロ相分離は,ナノメートルスケールで相互貫入型のネットワーク構造であった.これらの結果より,ナノメートルスケールでの相互貫入ネットワーク構造の形成は,相分離ゲルの力学的強度を強化することが明らかとなった.
研究ノート
  • 山下 麻美, 加藤 陽二, 吉村 美紀
    2013 年 61 巻 4 号 p. 178-181
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2014/05/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,シカ肉の機能性食品としての活用を目的として,シカ肉の加熱調理によるカルニチン含有量の変化について検討を行った.
    加熱調理により,親水性であるL-カルニチンは,煮る調理加熱とスチーム加熱において,肉汁とともに溶出したため損失傾向を示した.疎水性であるアシルカルニチン類は,揚げる調理加熱を除いて,加熱調理により濃縮し,増加傾向を示した.アセチルカルニチンにおいてのみ,ヘキサノイルカルニチン,ミリストイルカルニチン,パルミトイルカルニチンほどの増加傾向は示さず,損失傾向を示す調理加熱方法もあった.アセチルカルニチンは,疎水性ではあるものの低分子であることが影響していると推察される.
    腸内細菌による代謝物を介して,アテローム性動脈硬化を引き起こす可能性が示唆されているL-カルニチンが,加熱調理により損失することで,疾病の予防につながることも考えられる.また,脳機能向上などの機能性が示唆されているアセチルカルニチンが加熱調理により損失せず,生肉の状態と同程度の含有量を保持する調理方法が望ましいと考えられる.これらの事より,本実験の加熱調理方法の中では,スチーム加熱がシカ肉の機能性食品としての活用を促進する上で,最も有効であると推察される.
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