日本食品科学工学会誌
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60 巻, 9 号
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総説
  • 杉山 純一, 蔦 瑞樹
    2013 年 60 巻 9 号 p. 457-465
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    The fluorescence fingerprint, also known as the excitation-emission matrix (EEM), is a set of fluorescence spectra acquired at consecutive excitation wavelengths to create a three-dimensional diagram. The pattern of this diagram is unique for each measured sample, and contains abundant information about the constituents making up the sample. By combining current information technologies and large amounts of data, fine distinctions are able to be made between samples that would otherwise be indistinguishable. The following applications using this technology are discussed in this paper : discrimination of the geographic origin of mangoes ; prediction of buckwheat flour ratio in commercial dried buckwheat noodles ; and detection of mycotoxins in wheat and nutmeg.
報文
  • 須藤 あゆみ, 山本 貴志, 一色 賢司
    2013 年 60 巻 9 号 p. 466-470
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    食品の安全性や品質の確保に広く用いられているコールドチェーンにおける温度上昇を警告する手法の簡易化を試みた.食用色素青色2号および赤色106号を混合すると,グリセリン水溶液中で温度上昇により青色から赤色に変色した.クエン酸を添加することにより,グリセリンの使用量を減少させることができた.この現象を利用して,色素のグリセリン水溶液をプラスチックフィルム製の透明小袋に充填し,凍結後,保存した.解凍後のインディケータは,Lmの増殖を警告する指標である4℃,96時間で徐々に青色から赤色に変色し,温度上昇を警告することが可能であった.環境温度が高くなるとインディケータの警告時間も短くなった.-50℃で24時間冷凍させる工程を導入することによって,食用色素を利用した温度管理用インディケータ作製を簡易化することが可能となった.
  • 森口 奈津美, 中村 卓
    2013 年 60 巻 9 号 p. 471-479
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究では相分離の連続相構造に注目し,卵白連続相(C/P) ·両連続相(C||P) ·寒天連続相(P/C)の異なる3種類の連続相構造にさらに油を添加した相分離構造(o/w (C/P),o/w (C||P),o/w (P/C))とその破断特性の関係を明らかにすることを目的とした.
    全てのゲルにおいて,油相-水相界面には卵白の凝集ネットワークが存在していた.また,油は分散相中には存在せず,油滴として連続相中に分散相(o/w)として存在した.卵白連続相構造(o/w (C/P))では,油滴は卵白リッチ相に存在し,アクティブフィラーとして働いたため,ゲルの力学的強度が増加した.一方で,寒天連続相構造(o/w (P/C))では,油滴がインアクティブフィラーとして寒天リッチ相に存在していた.しかし,同じくインアクティブフィラーである卵白分散相も多数存在したため,破断特性において油添加による変化がなかった.また,両連続相構造(o/w (C||P))では油添加により,寒天リッチ相内に油滴を覆う卵白と寒天間のインアクティブな界面が新たに分散相として形成されたため,より脆弱なゲルになった.この様に,連続相と油滴界面の相互作用が油添加による破断特性の変化に影響することが明らかとなった.
  • 西山 美樹, 江崎 秀男, 森 久美子, 山本 晃司, 加藤 丈雄, 中村 好志
    2013 年 60 巻 9 号 p. 480-489
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    豆乳は栄養価に優れ,イソフラボン類などの機能性成分を含むが,その消費量は多くない.本研究では,豆乳の用途拡大および保健機能性の向上を目指して,豆乳から乳酸発酵豆乳,さらには豆乳チーズを試作するとともに,これらの抗酸化性の評価および主要成分の分析を行った.
    11菌株の乳酸菌で豆乳を発酵させたところ,9菌株において凝固が認められた.イソフラボン分析の結果,Lactobacillus plantarumおよびLactobacillus casei を用いた乳酸発酵豆乳では,豆乳中のグルコシル配糖体であるダイジンおよびゲニスチンは効率よく分解され,それぞれダイゼインおよびゲニステインを生成した.しかし,いずれの乳酸菌においてもマロニル配糖体は分解されなかった.Lb. casei MAFF 401404を用いた乳酸発酵豆乳は,滑らかなプレーンヨーグルト状に凝固し,官能評価においても高得点を収めた.この発酵豆乳よりカードを調製し,カマンベールチーズカビ(Penicillium camemberti NBRC 32215)およびロックフォールチーズカビ(Penicillium roqueforti NBRC 4622)を用いて豆乳チーズを調製した.いずれのチーズカビを用いた場合も,発酵·熟成にともない,ホルモール態窒素量および旨みを呈するグルタミン酸含量が顕著に増加した.また,官能評価においても高得点を得た.DPPH法による抗酸化試験の結果,豆乳チーズの抗酸化活性も発酵·熟成中に有意に(p<0.01)上昇し,カードの2~3倍に増大した.また,豆乳の乳酸発酵時には残存していたマロニル配糖体も,これらのチーズカビによって分解され,体内吸収性に優れたアグリコンに変換された.これらの結果より,この豆乳を用いたチーズ様食品は,将来,高付加価値をもつ新規食品として受け入れられる可能性が示唆される.
技術論文
  • 藤原 孝之, 久保 智子, 土橋 靖史
    2013 年 60 巻 9 号 p. 490-497
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    養殖魚の脂の乗りに影響する脂質含量を非破壊で測定できれば,流通される鮮魚の品質保証に貢献できる.測定波長域や測定方式が異なる各種の携帯型機器が市販されているので,測定部の形状が異なる短波長域測定用の2機器および長波長域測定用の1機器を用いて,マダイの背肉およびウマヅラハギの肝臓に含まれる脂質の定量を試みた.マダイの背肉の脂質については,皮膚の上からのスペクトル測定で,各機器ともに粗選別に利用可能な測定精度が得られた.ウマヅラハギの肝臓直上の皮膚の上からスペクトルを測定した場合は,各機器ともに肝臓脂質の測定精度は低かった.短波長域の2機器については,ウマヅラハギの体表面から測定したスペクトルが肝臓の脂質をある程度反映していたので,透過スペクトルを用いるなど,測定法を検討すれば精度を向上できる可能性があると考えられた.ウマヅラハギの肝臓を魚体から取り出してポリエチレンフィルム越しにスペクトルを測定した場合は,各機器ともに脂質の多少を評価するために十分な測定精度が得られた.マダイの体表からの測定およびウマヅラハギ肝臓の直接測定の結果から,短波長域だけでなく,これまで知見が少なかった長波長域の携帯型近赤外分光計を用いても,養殖魚の脂質測定が可能であることが明らかになった.
  • 小川 一紀, 尾﨑 嘉彦, 杉浦 実
    2013 年 60 巻 9 号 p. 498-508
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン搾汁工程の篩過や遠心処理で発生するパルプは,β-クリプトキサンチンの有用な抽出原料となる.そこで,これらを原料にして,低コストで簡便なβ-クリプトキサンチンの精製工程を開発した.まず,酵素分解によりパルプを減量し,水分を遠心分離で除き,沈殿中の水分をアセトンで置換することで,乾燥せずにヘキサンでβ-クリプトキサンチンを含む抽出物が効率よく得られることを示した.エステル型β-クリプトキサンチンを含有するヘキサン抽出物を得た後,ヘキサン,アセトン,エタノール,ヘキサン/エタノール混合溶媒への成分の溶解性により,可溶部と不溶部に分け,ヘキサン可溶部,アセトン可溶部,エタノール不溶部,ヘキサン/エタノール混合溶媒不溶部を順次回収することで,エステル型β-クリプトキサンチンを高濃度化することができた.この高濃度含有物をアルカリ加水分解し,有機溶媒層から遊離型β-クリプトキサンチンを結晶として得ることができた.また,ウンシュウミカン果皮のヘキサン抽出物は,水とともに精油を減圧溜去した後,エタノール不溶部を得て,これをアルカリ加水分解後,有機溶媒層を簡易なシリカゲルカラムクロマトグラフ分離に付し,遊離型β-クリプトキサンチンを結晶として得ることができた.カキ果皮も,同様の操作でカロテノイドを高濃度化して,加水分解で高濃度の遊離型カロテノイド混合物を得ることができた.
研究ノート
  • 小林 麻貴, 榊原 里恵, 江草 信太郎, 福田 滿
    2013 年 60 巻 9 号 p. 509-515
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    高脂肪高コレステロール食投与ラットにおいて,乳酸発酵豆乳中のイソフラボンのアグリコン割合の違いが肝臓脂質代謝に及ぼす影響を検討した.2種類の乳酸菌株を使用して乳酸発酵豆乳を調製し,高脂肪高コレステロール食投与ラットに摂取させた.7週齢SD系雄性ラットをAIN-93G組成の基準飼料で1週間予備飼育後,AIN-93G組成基準食群(コントロール群,C群),基準食の9.4%を粉末牛脂に置換し,大豆油と合わせて飼料中TG含有率を15%とし,0.125%をコレステロールで置換した飼料を与えた高脂肪高コレステロール食群(H群),H群の飼料の22.0%をアグリコン化能力の低いTUA4404 L株乳酸発酵豆乳で置換した群をN群,H群の飼料の22.4%をアグリコン化能力の高いTUA4408 L株乳酸発酵豆乳で置換した群をA群とし,4群(各群6匹)に分け5週間飼育した.H群と比較してN群,A群のどちらも血中脂質濃度上昇抑制作用と肝臓脂質蓄積抑制作用を示したが,その作用はN群よりもA群の方が強かった.肝臓のイソフラボンアグリコン濃度はN群に比較しA群で若干高値を示した.また肝臓の脂質代謝関連遺伝子発現量の変化もH群と比較しA群では大きな変化が認められた.以上の結果から,乳酸発酵豆乳の脂質代謝調節作用はTUA4404 L株乳酸発酵豆乳よりも,TUA4408 L株乳酸発酵豆乳の方が強いことが明らかになった.したがって,豆乳中のイソフラボンのアグリコン割合が肝臓の脂質代謝調節効果に影響していると推定された.
  • 菅原 哲也, 五十嵐 喜治
    2013 年 60 巻 9 号 p. 516-520
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    現在,国内で栽培されている日本ナシの主要な栽培品種である ‘幸水’,‘豊水’ について,結実から成熟まで主なポリフェノール成分を定量するとともに,その構成成分とDPPHラジカル消去活性との関係を明らかにした.
    日本ナシの主要なポリフェノール成分は,‘幸水’ および ‘豊水’ ともに,アルブチンとクロロゲン酸であり,結実時の果実ではポリフェノール含有量が顕著に高く,成熟にともない減少するものの,果実1個体あたりのポリフェノール量には顕著な増加が認められた.また,日本ナシ果実のDPPHラジカル消去活性は,ポリフェノール含有量に比例して増加し,今回分析した成分の中でクロロゲン酸の寄与率が最も高い値を示した.
    日本ナシ成熟果のDPPHラジカル消去活性はアルブチン,およびクロロゲン酸が多量に蓄積している果皮において最も高い値を示し,続いて果芯において高い値を示した.日本ナシ果実において,ポリフェノールの局在部位は,果実や種子において,紫外線や酸化ストレスに対する防御機構に関与している可能性が示唆された.
  • 箭田 浩士, 亀山 眞由美
    2013 年 60 巻 9 号 p. 521-524
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    調味料として加熱調理に用いられることの多い味噌について,家庭で使われる調理器具を用いて味噌汁を調理した後に,静置(保温)と温め直しを繰り返す条件でフランの挙動を調べた.通常の鍋で加熱調理後に静置と温め直しを繰り返した場合にはフラン量の変化が小さかったが,より気密性と保温性が高い保温調理器を用いて保温と温め直しを繰り返すと味噌汁中のフラン量が直線的に増加した.今回,家庭での調理と類似した条件において味噌汁中のフラン量が増加して,未加熱食材に含まれるフラン量の二倍を越える場合があることを確認した.
研究小集会
  • 増田 亮一
    2013 年 60 巻 9 号 p. 525-526
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 俊郎, 加茂 修一
    2013 年 60 巻 9 号 p. 527-533
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    Soyasaponins : Soyasaponins are triterpene glycosides that possess an oleanane-type aglycone with 1 or 2 polysaccharide chains. Due to differences in the aglycone compounds, soyasaponins are mainly classified as group A or B soyasaponins. Soyasaponins, especially group B soyasaponins, have been reported to have several physiological functions such as antioxidative, cholesterol-lowering, antiviral, anti-inflammatory, renin-inhibiting, hepatoprotective, and antitumor effects. We found that group B soyasaponins are more readily absorbed than group A soyasaponins, which may explain why group B soyasaponins exhibit more potent effects.
    Vitamin K2 : Vitamin K is a cofactor required for post-translational gamma-carboxylation of vitamin K-dependent proteins, including coagulation factors, anti-coagulation factors, osteocalcin (OC) in bone, and matrix Gla proteins (MGP) in arteries. Among major vitamin K homologues in foods, only vitamin K2 as menaquinone-7 (MK-7) can activate osteocalcin, which modulates bone structure at nutritional doses. Vitamin K2 also induces collagen accumulation in bone, contributing to bone quality and strength. In addition, MK-7 activates MGP, an artery calcification inhibitor, and is reported to be associated with the prevention of cardiovascular diseases. The higher efficacy of MK-7 compared to other vitamin K homologues is due to the better absorption and longer half-life of MK-7.
  • 吉田 正
    2013 年 60 巻 9 号 p. 534-539
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    In soybean, a number of biologically active, and thus beneficial, substances have been identified ; including isoflavone, lecithin, and saponin. Some of these are currently being marketed because their health promoting functions have been publicly approved. Moreover, recent evidence has accumulated suggesting that soybeans could contain other unused compounds with valuable functions as food additives. In this review, we focus on black soybean seed coat polyphenols (BSCP) and pinitol (PI). BSCP mainly consists of procyanidin, cyanidin 3-glucoside, and epicatechin, which are all well known for their antioxidant properties. Procyanidin represents a group of oligomeric compounds formed from catechin and epicatechin molecules. BSCP is characterized by its specific composition of procyanidin, and is particularly rich in smaller oligomer forms. It is thought that procyanidin oligomer size is inversely correlated to bioavailability. PI (3-O-methyl-D-chiro-inositol) is an inositol derivative that chiefly exists in legumes and pines, and is characterized by its extremely high water-solubility. PI content in soybean seed was reported to be around 0.2% dry weight, while in soybean plant, it is one of the major low-molecular weight carbohydrates ; moreover, it is very rich in soybean leaves (up to 2% of dry weight). Intriguingly, both BSCP and PI exert anti-diabetic and anti-obesity effects. However, they have been under-utilized mainly due to a lack of efficient methods for stable and effective handling. Here we discuss both plausible mechanisms that could enable the exertion of beneficial functions and recent developments in their preparation from raw materials.
技術用語解説
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