日本食品科学工学会誌
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59 巻, 12 号
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総説
  • 蘒原 昌司
    2012 年 59 巻 12 号 p. 595-603
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/01/12
    ジャーナル フリー
    This study was conducted in order to reveal the weak luminescence phenomena, such as spontaneous ultra-weak photon emission, chemiluminescence and Photo-Stimulated Luminescence (PSL), in food materials. Additionally, new food-quality evaluation methods using weak luminescence were developed as screening methods. Spontaneous ultra weak photoemission from potato chips, rice grain and roasted sesame oil were measured using photon counting and imaging techniques. Ultra weak photon emissions from the food materials were related to quality changes. Chemiluminescent reagents have advantages in improving emission levels and enabling functional selectivity, such as toward reactive oxygen species, antioxidants and so on. Sake quality and buck wheat antioxidative property could analyze using chemiluminescence. The PSL method provides a rapid and remarkably sensitive technique for identifying irradiated foods that contain minerals, such as spices and dried vegetables. A novel PSL method that detects irradiated foods, based on time-dependent intensity decline, was developed. These weak luminescence techniques might use in quality analysis for food processing and distribution.
報文
  • 高 智紅, 谷脇 満, 島田 宏美, 石原 清香, 船見 孝博, 神山 かおる
    2012 年 59 巻 12 号 p. 604-610
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/01/12
    ジャーナル フリー
    超音波画像診断装置のMモードを用い,液体からゲルまでの多様な力学的特性をもつ食品を自然な摂食様式(咀嚼なし,舌で潰す,歯で噛む)で3ml嚥下する時の舌の陷凹の動きを観察したところ以下の結果を得た.
    (1) 力学的特性は陷凹深度に有意に影響した.陷凹深度はゾルが最大で,水が最小であった.
    (2) 力学的特性の陷凹形成速度への影響は認められなかったが,陷凹消失速度への影響は有意であった.ゾル嚥下時の陷凹消失速度は一番大きかった.
    (3) 全ての食品において,陷凹消失速度は形成速度より有意に大きかった.
    以上の結果から,食品の力学的特性により嚥下時の舌の動きは多様に変化することが示唆された.
  • 川崎 保美, 大原 浩樹, 中村 宣貴, 許 晴怡, 松本 均, 鐘ヶ江 穣, 椎名 武夫
    2012 年 59 巻 12 号 p. 611-615
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/01/12
    ジャーナル フリー
    溶液中のアントシアニンは,酸化などの要因によって分解される.そこで我々は,カシス飲料を二酸化炭素マイクロバブル処理することによって溶存酸素濃度を低減し,アントシアニン安定化について検討した.
    加圧溶解方式により,カシス飲料を二酸化炭素マイクロバブル処理した.発生したバブルの気泡径は64μmであり,マイクロバブルが発生していることを確認した.一方,通常気泡処理によって発生したバブルの気泡径は562μmであった.溶存酸素濃度はマイクロバブル処理では急激に低下し,開始45分後に検出限界(0.1mg/L)以下に達した.一方,通常気泡処理では開始270分後においても3mg/Lであった.
    カシス飲料をビンに封入し,37°Cで28日間保存した.アントシアニン量を測定したところ,通常気泡処理やコントロールと比較して,マイクロバブル処理ではアントシアニン残存率は有意に高かった.この結果から,カシス飲料のマイクロバブル処理は,アントシアニンの安定化に有効であることが示唆された.
技術論文
  • 岸根 雅宏, 奥西 智哉
    2012 年 59 巻 12 号 p. 616-620
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/01/12
    ジャーナル フリー
    米粉パンにおける米粉割合を推定するための手法として半定量的な競合的PCR法を検討した.コメとコムギの葉緑体ゲノムの共通配列部分で作製したPCRプライマーを用いることにより,両者が競合的に増幅する一方,サイズが異なる増幅断片が得られることからゲル電気泳動で区別・検出できる.異なるDNA抽出試料,鋳型DNA濃度およびPCRサイクルを用いた条件検討の結果,コメとコムギに由来する増幅産物の量比は,PCR条件にはほとんど影響を受けず,また0-50%の米粉パンの分析において米粉割合にほぼ比例することが明らかとなった.一方で,増幅産物の量比は,米粉パンに原料として用いるコメの品種によって20%程度変動し,また,市販パンの分析においてそのパン種によっても変動することが示唆された.これらの結果は,本手法が米粉パンにおける米粉使用割合を大まかにではあるが簡易に推定できることを示すとともに,分析試料に適した対象試料(使用品種・パン種)を用いれば,より正確な定量が可能となることを示唆している.
  • 北爪 良太, 中村 澄子, 熊谷 武久, 高橋 肇, 大坪 研一
    2012 年 59 巻 12 号 p. 621-627
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/01/12
    ジャーナル フリー
    近年の異常気象により乳白粒が多量発生している.乳白粒が与える理化学特性が米菓にどのような影響を与えるかを明確化し,品質安定化のための米菓加工適性評価開発を目的とした.
    (1) 乳白粒混入によりアミロース含率,損傷澱粉率は低下し,タンパク質含有率,α-アミラーゼ活性は高くなる傾向を示した.また糊化特性では健全粒より全体的に低い値を示した.
    (2) 乳白粒混入率が高くなる毎に米菓形状は小さくなり,米菓表面に多数の亀裂と断面に不均一な糊化澱粉の空隙が確認された.従来はアミロース含有率の低下により,米菓加工適性は高くなる傾向を示していたが,乳白粒による低アミロースは負の影響を与えた.
    (3) 乳白粒の特性であるα-アミラーゼ活性とアミロース含有率を説明変数とすることにより,乳白粒が混入した米菓への加工適正評価指標となる可能性を示した.
  • 村田 浩志, 松久 明生, 山本 啓一, 戸田 隆雄, 六車 三治男, 河原 聡
    2012 年 59 巻 12 号 p. 628-636
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/01/12
    ジャーナル フリー
    未分画ヘパリン(UFH)の純度試験法,およびUFH中のヘパリン(HP)以外のムコ多糖類(MS)夾雑物の工業的除去方法について検討した.過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS),HP以外のMS,およびそれらの混合物不純物を含有するUFHナトリウム塩(OSHP-SH),HP含量を低減した粗OSCS (CSMS-CE1およびCSMS-CE2)について亜硝酸分解処理を行い,HPLC法により分解物の分子量分布を測定した.OSCS-STDは分解処理前後で分子量分布の変動はなく,分解抵抗性であった.OSHP-SH中の亜硝酸分解抵抗性物質の分子量分布はOSCS-STDと近かったが,粗OSCS中の分解抵抗性物質はCSMS-CE1およびCSMS-CE2の分子量分布はコンドロイチン硫酸B標準品に近かった.一方,UFH Na塩(UFN-SP),商業用のUFHナトリウム塩およびカルシウム塩について,EtOH分画処理を行った.各分画物をHPLC法と1H-NMR法により分析した結果,全ての検体で亜硝酸分解抵抗性物質は上清に移行し,HPはコロイド状沈殿物として濃縮された.以上の結果から,UFHの調製工程において亜硝酸分解/HPLC法による純度検査を行い,さらに,EtOH分画処理を実施することで,高品質なHP原料を安定的に調製できると考えられた.
研究ノート
  • 山下 麻美, 加藤 陽二, 吉村 美紀
    2012 年 59 巻 12 号 p. 637-642
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/01/12
    ジャーナル フリー
    本研究では,シカ肉の食資源としての有効利用を目的として,近年,機能性アミノ酸として注目されているカルニチンについての定性および定量的な検討を行った.
    カルニチンには,遊離カルニチンと脂肪酸が結合したアシルカルニチンとしても存在するが,アシル体の多くが微量で,今までの酵素法などを用いた測定法ではそれぞれを分別して検出することができなかった.本研究では,LC-MS/MSを用いることによって,遊離カルニチンおよびアシルカルニチンであるアセチルカルニチン,ヘキサノイルカルニチン,ミリストイルカルニチン,パルミトイルカルニチンの5種類をシカ肉から検出することができた.さらに,シカ肉と牛肉,豚肉,鶏肉とのカルニチン量の比較を行った結果,遊離およびアシルカルニチンのいずれにおいてもシカ肉と牛肉に多く含まれていた.遊離カルニチンと短・中鎖脂肪酸が結合したカルニチンにおいては,シカ肉に多く含まれており,長鎖脂肪酸が結合したカルニチンは,シカ肉よりも牛肉に多く含まれていた.本研究の測定方法を用いることによって,遊離カルニチンに加えてアシルカルニチン類をシカ肉から検出することが可能となった.さらに,シカ肉に遊離カルニチン,アセチルカルニチンが多く含まれることが示され,脳機能向上などの機能性が期待されるアセチルカルニチンを多く含むことから,シカ肉の機能性食品としての可能性を見出すことができた.
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