日本食品科学工学会誌
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42 巻, 1 号
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  • 中村 道子, 佐藤 薫, 小泉 詔一, 河内 公恵, 西谷 紹明, 中島 一郎
    1995 年 42 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    WPI溶液を予め加熱処理し,室温で塩化ナトリウムを添加することによりゲル化する現象について検討し,以下のことが明らかとなった.
    (1) 80℃ 30分加熱処理した10% (w/w) WPI溶液に塩化ナトリウムを0.3-1.2% (w/w)添加すると,20℃において溶液は粘度の上昇をともないながら徐々にゲル化した.塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい粘度上昇は速く進み,ゲル化時間は短くなる傾向を示した.さらに,WPI溶液の加熱処理温度,塩化ナトリウムの濃度が高くなるにしたがい,ゲル強度は高くなることがわかった.
    (2) 電子顕微鏡観察の結果,WPI溶液を加熱処理することによりやや太く短い線状の可溶性凝集体が形成されることを確認した.さらに塩化ナトリウムの添加により,可溶性凝集体同士の会合が始まり,高分子化してゲルに至ることがわかった.塩化ナトリウム添加により得られたゲルは,GDL添加による酸性ゲルとよく似た網目状構造を呈していることがわかった.また,ゲルの網目状構造を形成している凝集体の太さは,塩化ナトリウム添加により得られたゲルの方がGDL添加による酸性ゲルよりもややランダムな構造をとることがわかった.
  • 佐藤 薫, 中村 道子, 小泉 詔一, 河内 公恵, 西谷 紹明, 中島 一郎
    1995 年 42 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    塩化ナトリウム添加によって得られる加熱処理WPI溶液のゲルについて,その形成過程における疎水性度およびSH量の変化について検討した.
    10%WPI溶液を70℃以上で加熱した場合,高分子化したホエータンパク質の可溶性凝集体が得られる.この過程においてホエータンパク質の疎水性度は上昇し,SH量は低下することがわかった.また,電気泳動分析から可溶性凝集体はSS結合を介していることがわかった.すなわち,加熱処理によりホエータンパク質問で疎水性相互作用およびSH/SS交換反応が生じ,可溶性凝集体が形成されるものと推察した
    .20℃において加熱処理WPI溶液に塩化ナトリウムを添加した場合,疎水性度の急激な上昇とわずかなSH量の低下をともないながらゲルが形成されることがわかった.このことからゲル形成には疎水性相互作用およびSH/SS交換反応の両方が関与しているが,初期段階で疎水性相互作用の方がより大きく関与していると考えた.
  • 藤村 知子, 釘宮 正往
    1995 年 42 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    一辺が約1.5mmの立方体に切断した子葉組織試料を十分量の水の存在下で95℃まで加熱したところ,デンプン粒の偏光十字はほぼ完全に消失したが,組織は軟化しなかった(細胞分離は認められなかった).この結果をふまえて,子葉組織のDSCを行い,組織内デンプンの糊化を検討した.子葉組織のDSC曲線は,約74℃をピークとし,約84℃をショルダーとする高温部に大きくテーリングした吸熱曲線であった.この曲線の形および特性値を単離デンプン,子葉細胞,粉砕小豆の場合と比較した.その結果,組織内デンプンの糊化は,基本的には細胞内デンプンの糊化と同様に,低温部では十分量の水の存在下での糊化であり,高温部では水の供給が制限された状態でのデンプンの糊化(結晶の融解)であった.また,粋砕小豆のTo,Tp,Tcが単離デンプンに比べて約2℃高温であったことや単離デンプンおよび細胞内デンプンの吸熱曲線が小豆から抽出した水溶性成分の添加によってわずかに(約1-4℃)高温部ヘシフトしたことから,組織内デンプンの糊化抑制には,細胞壁や組織構造の強靱さ以外に水溶性成分も関与するのではないかと推察した.
  • 西堀 すき江, 川岸 舜朗
    1995 年 42 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    Effect various amino acids on the formation of 2, 3-dihydro-3, 5-dihydroxy-6-methyl-4 (H)-pyran-4-one (DDMP) and 5-hydroxymethylfurfural (HMF) have been investigated using a model system of cookie baking. A mixture of fructose and each amino acid was heated at 150°C for 10min in a test tube. Each reaction mixture was extracted with 1ml of water, and the extracts were analyzed by HPLC. DDMP was the major product in this reaction. The position of amino group affected on the formation of DDMP, and the amount of DDMP from fructose and β-amino acids was much more than that from fructose and other amino acids such as α- and γ-amino acids. The carbon chain length of α-amino acids also affected on the formation of DDMP, and DDMP was generated most remarkably in the reaction between fructose and α-alanine. When the carbon chain length was longer than that of α-alanine, DDMP formation decreased gradually. N-substituted arginine and lysine formed a large quantity of DDMP in the reaction with fructose than their N-unsubstituted amino acids. Basic amino acids reacted strongly and quickly with the sugar, and arginine also generated DDMP in the earlier stage of the reaction with fructose than β-alanine.
  • 一宮 まさみ, 府中 英孝, 塚正 泰之, 藤野 正行, 杉山 雅昭, 峯岸 裕, 赤羽 義章, 安本 教傳
    1995 年 42 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    胸腺抽出物の高分子画分(HM)および数十種類の酸性または中性のタンパク質で構成されているDEAE吸着画分(DEAE-HM)にはハイブリドーマに対する細胞増殖促進活性があり,抗体産生量も増加させることが明らかになった
  • 石井 靖子, 中原 久恵, 服部 滋, 川端 晶子, 中村 道徳
    1995 年 42 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    熱帯産澱粉,すなわち,ショクヨウカンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照としてバレイショとトウモロコシの澱粉を選び,それらより分離したアミロペクチンにつき枝切り酵素であるイソアミラーゼを作用させて,その変化を検討した.すなわち光散乱法により重量平均分子量MWと分子の広がりを示す慣性半径RGの測定,粘度測定により固有粘度〔η〕を算出し,枝切り過程の変化を測定した.
    その結果MWRGの関係は,MWが(4-5)×106近辺に減少する過程では,MWに対してRGがやや大きいもの(キャッサバ,トウモロコシ),小さいもの(サゴ),両者の中間のもの(バレイショ,ショクヨウカンナ,アロールート)が認められた.しかし6種とも近接し同じ様な勾配で減少していることから,6種ともMWの減少に対するRGの減少の割合は大きな差はみられず,従って同じような分解過程を経ていくものと思われる.
    更に分解が進むと,ばらつきが起こり差が見られた.またMWや「η」の減少速度には,種類により差があり,イソアミラーゼが作用しやすいものと,しにくいものがあるようである.
  • 沖縄におけるとうふようの製造に関する研究(第10報)
    安田 正昭, 松本 哲也, 坂口 真樹, 金城 さきえ
    1995 年 42 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    とうふようの品質に及ぼす麹の種類とその組み合わせの影響,紅麹と黄麹とを組み合わせたとうふようの熟成過程における一般成分,タンパク質,窒素成分及び物性の経時的変化等について検討した.
    (1)とうふようの品質に及ぼす麹の種類とその組み合わせについて調べたところ,紅麹と黄麹を組み合わせた製品は,これらの麹を単独で使用したものに比べてより好まれる傾向にあることが官能評価により明らかにされた.最も好まれる製品は紅麹25%,黄麹75%から成る麹を用いた時に得られた.そこで,この配合割合で調製したとうふようについて食品学的な検討を行い,以下の知見を得た.
    (2)製品の粗タンパク質量及び粗脂肪量は熟成の進行に伴い減少した.一方,還元糖量は熟成の進行に伴い増大した.しかしながら,粗繊維はほとんど定量されなかった.
    (3)熟成過程におけるとうふようの水不溶性試料のタンパク質分解の様子をSDS-PAGEで調べた.その結果,熟成前でβ-コングリシニンのα',α及びβサブユニット.グリシニンの酸性及び塩基性サブユニットのほか7本のバンドが検出されたものの,大部分のバンドは熟成時間の経過に伴い消失した.熟成3ヵ月の試料では,グリシニンの塩基性サブユニットのバンドと分子量40-32,15-10kDa及び10kDa以下のポリペプチドが残存した.
    (4)とうふようの水溶性窒素,4%TCA可溶性窒素及び75%エチルアルコール可溶性窒素量の総窒素量に対する比率で表される数値はそれぞれ熟成時間の経過に伴い増大した.熟成3ヵ月における製品のこれらの数値はそれぞれ39.0, 36.8及び23.9%であった.
    (5) とうふようの硬さ及び凝集性は熟成時間の経過にともない減少した.
  • 山田 康則, 種本 新一郎, 早川 喜郎
    1995 年 42 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    トマトジュースの逆浸透濃縮における濃縮装置の殺菌方法に関して,汚染菌の耐熱性と膜の耐熱性から検討を行った.汚染菌の耐熱性はD60=15秒,Z=6.6℃であった.膜の耐熱性は透過流束と食塩保持率で評価したところ,60℃以下の処理では,ほとんど変化は認められなかった.しかし,80℃の温水で処理すると,熱収縮と圧密化現象が認められ,20分間に,透過流束が約30%低下するとともに,食塩保持率が約8%増加した.20分以後の変化は非常に緩やかであった.工業的規模の装置を用いて逆浸透濃縮を行い,温水(80℃)と殺菌剤の殺菌効果について比較検討を行った.その結果,殺菌剤の場合には濃縮開始直後の濃縮物中の一般生菌数は10102cells/mlであり,温水では100cells/mlであった.また,濃縮物に変敗臭が認められる時の一般生菌数である105cells/mlに達するまでの濃縮時間は,殺菌剤を用いた場合では12時間であったが,温水を用いた場合は約3倍の36時間であった.従って,温水殺菌は殺菌剤による殺菌よりも優れており,工業的規模の逆浸透濃縮装置の殺菌に対して,十分に利用可能であることが示唆された.
  • 後藤 昌弘, 橋本 和弘, 山田 喜八
    1995 年 42 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    フランスから導入された新しい調理法である真空調理についてその特性を明らかにするため,野菜,果実,肉類などを用いて調理を行い,従来の調理法(普通調理)とアスコルビン酸残存率,テクスチャー,食味のちがいなどを比較した.
    1)野菜類では真空調理は普通調理に比べ,アスコルビン酸の流出が少なかった.また,キウイのフルーツソースでは,緑色が保たれた.
    2) 肉類の調理では歩どまりがよく,軟らかく仕上がった.
    3)香ばしさを出したり,生臭さをなくしたりする必要のある料理は官能検査の評価が低く,適さなかった.
    4)肉じゃがや果実のコンポートのように調味液をしみ込ませる料理では官能検査の評価が非常に高く,最も適していると思われた.
  • 杉山 雅昭, 三代 達也, 塚正 泰之, 峯岸 裕, 鈴木 鐵也, 高間 浩蔵
    1995 年 42 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    現在市販されている食肉加工品は,食品衛生法で定められた最低限の加熱条件(中心温度が63℃-30分間)よりも相当過酷な条件で殺菌されていると考えられるため,63℃未満で,食品衛生上の安全性を保持し,かつ優れた食味を有する食肉加工品の加熱条件を探索した.
    (1) 市販品を模したポークソーセージペーストを55℃付近で加熱して調製し,ソーセージ中の菌叢を調べ た結果,ソーセージ中の主要な菌属はMicrococcus sp.(Z=6.9℃)とStreptococcus sp. (Z=6.3℃)であった.Z値の比較からMicrococcus sp.が高い耐熱性を有していた.
    (2) Micrococcus sp.に対して4Dの殺菌効果を有する55℃で304分間および60℃で92分間の加熱条件と食品衛生法で定めらた63℃で30分間,および商業殺菌に近い70℃で30分間の加熱処理の4条件下で調製したソーセージの官能評価と物性測定を行った.55℃処理区は総合および食感に対する評価で他の処理区に比べて有意(p<0.05)に優れ,破断強度や破断変形でも他の処理区よりも高い値を示した.
    63℃未満でも加熱時間を適切に設定することにより63℃-30分間加熱と同等以上の殺菌効果が得られ,食味についてもより高い評価が得られることが明らかとなった.
  • 小堀 真珠子, 實山 安英, 津志田 藤二郎, 新本 洋士, 篠原 和毅
    1995 年 42 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    ナス,ピーマン,キャベツ,シュンギク,インゲン,キュウリ,ネギの非透析性抽出物がU-937ヒト白血病細胞の分化に与える影響を検討した.各野菜類はPBSで抽出し80%硫安沈殿した後,透析して透析内液を凍結乾燥して用いた.得られた野菜抽出物はPBSに溶解した後,U-937細胞培養液中に加えて,5日間培養し,U-937細胞の形態及びマクロファージへの分化指標の一つである細胞表面抗原CD11b,CD36の発現量の変化を調べた.その結果,特にナス抽出物がU-937細胞を接着,伸展させ,マクロファージ様に形態変化させた.また,ナス,インゲン,キュウリ,ネギの抽出物はCD11bおよびCD36の発現量を共に増加させ,これらの抽出物がU-937細胞をマクロファージに分化させることが明らかとなった.
  • 特に水中における油滴間相互作用について
    松本 幸雄
    1995 年 42 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
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