牛乳の官能特性に及ぼす殺菌条件の影響を検討することを目的に各種殺菌牛乳については専門家パネルにより,また,市販牛乳については主婦パネルにより官能評価を行なった.結果は以下の通りである.
(1) 殺菌による牛乳の物理化学的性状への影響はHTST=LTLT<UHTl30<UHT140の順に大きくなった.この傾向は特に乳清蛋白質の変性率及びレンネッタビリティーで明確に示された.
(2) おいしさの総合評価ではUHT130が最も好まれ,次いで,UHT140が好まれた.HTSTとLTLTは大差ではなかったが,僅かにHTSTが好まれた.日常,最も多く飲用され風味に慣れていることが牛乳の好みに影響する一つの要因と推測された.
(3) 牛乳のおいしさには匂いの好み,後味の好み,新鮮感が重要であった.また,UHTは濃厚感が強く,風味にくせが少なく,ナチュラル感がある牛乳として位置づけられ,匂い,後味などの風味も好ましいと評価された.一方,HTST,LTLTはさっぱり感が強く,風味にややくせがある牛乳として位置づけられ,匂い,後味が嫌われる傾向にあった.
(4) 主婦パネルによる市販牛乳の風味評価の結果,UHT120が最も好まれ,次いで,UHTl40,LTLTの順に好まれた.属性評価の結果も専門家パネルと同様の傾向を示した.
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