日本食品科学工学会誌
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61 巻, 11 号
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報文
  • 斉藤 司, 椎橋 裕子, 明賀 博樹, 原口 賢治, 増田 唯, 黒林 淑子, 南木 昂, 山崎 英恵, 中村 元計, 伏木 亨
    2014 年 61 巻 11 号 p. 519-527
    発行日: 2014/11/15
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物の香気分析を行った.GC-MS分析,AEDA法によって,重要香気成分を絞り込んだ結果,グアイアコール,5-メチルグアイアコール,2,6-ジメトキシフェノール,4-エチル-2,6-ジメトキシフェノール,2,6-ジメチルフェノール,4-プロピルグアイアコール,バニリン,フラネオール®,(2E,7Z) -trans-4,5-エポキシデカ-2,7-ジエナール,(4Z,7Z) -トリデカ-4,7-ジエナール(以下TDDとする.)の10成分が同定された.
    この中で(2E,7Z) -trans-4,5-エポキシデカ-2,7-ジエナールとTDDは,かつお節の香気成分としては未報告の成分であり,特にTDDは,食品の香気成分として初めて同定された成分であったため,かつお節の香りにどのような影響があるのか,官能評価を行った.官能評価に用いる用語は,かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物を用いて6種(くん液,木材,魚肉,金属,生臭い,カラメル)を選定した.かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物中の定量値を用いて,TDD以外の重要香気成分9成分と,TDDを加えた10成分の匂い再構成液を作り,各風味項目ついて比較した.その結果,「木材」の項目がTDDの添加により,有意に増強された.このことから,TDDはかつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物の香りを構成する新規重要香気成分であることが示された.さらに,料理人の官能評価によって,TDDを含むかつお節フレーバーは,かつおだしをより好ましい風味にさせる効果があることが示された.
  • 渡辺 満, 大久保 さゆり, 菅野 洋光, 持田 秀之
    2014 年 61 巻 11 号 p. 528-535
    発行日: 2014/11/15
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    気候条件の異なる2地域(大仙市,陸前高田市)で有色素米を栽培し,それらのアントシアニン,プロアントシアニジン,総フェノール酸,結合型フェノール酸などの含量,および親水性画分の抗酸化能(H-ORAC値)を比較した.その結果,
    (1)有色素米(もち性2品種)のアントシアニン含量は,出穂後11~20日の積算気温の低い陸前高田市産が大仙市産と比較して多く,H-ORAC値も高かった.また高い抗酸化能が推定されるC3Gの含有率が,陸前高田市産でより高くなった.
    (2)赤米のプロアントシアニジン含量も,陸前高田市産が大仙市産よりも多く,H-ORAC値も高かった.
    (3)有色素米の総フェノール酸含量は,陸前高田市産よりも大仙市産の方が多い品種が多かった.但し,プロトカテク酸は全ての有色素米で陸前高田市産が多く,穀粒中で抗酸化物質として機能していることが示唆された.
    これらの結果から,冷涼気候で有色素米を生産することにより,ポリフェノール等抗酸化成分含量や抗酸化能(H-ORAC値)の上昇が見込めることが明らかになった.
技術論文
  • 小枝 貴弘, 和田 百希, Tze Loon Neoh, 和田 正, 古田 武, 吉井 英文
    2014 年 61 巻 11 号 p. 536-542
    発行日: 2014/11/15
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    混練法によりパルミチン酸レチノール(RETP)を包括粉末化し,その安定性について検討した.賦形剤としてサイクロデキストリン(CD)含有水飴を主な賦形剤として用いた.CD水飴の一部をγ-CDに置き換えた賦形剤がもっとも高い含有量と安定性を示した.MDとγ-CDの混合賦形剤の場合,粉末中にRETPを包括することができず,混練スラリー中のRETPのエマルション径も大きかった.CD水飴にはαβγ-CDが含まれることから,混練法によってRETP包括粉末を作製するには,CDの乳化能によるRETP油滴の分散が重要であると推察された.比較のために作成した噴霧乾燥粉末と同様に混練法による粉末中のRETP安定性はアブラミ式により良好に相関できた.各粉末のアブラミ式より求めたRETP分解速度定数に化学補償効果が成立し,賦形剤中の酸素の拡散律速の分解機構でRETPの安定性が推測できると考えられた.
研究ノート
  • 松本 健司, 増田 かおる, 武川 加奈子, 小栁 喬
    2014 年 61 巻 11 号 p. 543-547
    発行日: 2014/11/15
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    柿の未成熟果実から調製したタンニン含量の高い食物繊維(柿繊維)は胆汁酸吸着能を有する.この柿繊維がパンの素材として利用可能かを調べるために,柿繊維に対する熱処理の影響を検討した.また,柿繊維を添加したパンを焼成し,動物実験で胆汁酸排泄促進効果を検討した.180°Cで20分間処理すると,柿繊維の胆汁酸吸着能は20%低下した.しかし,10% (w/w)の柿繊維を添加したパンをマウスに摂取させると糞への胆汁酸排泄が2倍に増加した.これらの結果から柿繊維はパンに添加できる機能性食品素材であると考えられる.
  • 塚越 芳樹
    2014 年 61 巻 11 号 p. 548-551
    発行日: 2014/11/15
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    平成23年度の生産工程プロ参加試験室に対して技能試験を行い,その回答結果を得た.多くの場合は試験結果のzスコアは満足であったが,疑わしいまたは不満足であった試験室もあった.そのような参加者は,初めて参加する試験者にも多かったが,連続して同一の試験室が外す場合や,前年度は満足な結果が得られたにも拘わらず翌年度の結果のzスコアは疑わしいまたは不満足であるなど,その様子は様々であることが明らかになった.また,細菌数と大腸菌群数では報告値の分布が異なっており,zスコアの算出のもとのσpとして,NIQR法によるロバスト推定量とFEPASが採用している経験則により固定する場合を比較すると,大腸菌群数ではほぼ同様のzスコアになるが,細菌数では大きく異なることが分かった.本技能試験では試料の保存について細かい条件を置かなかったため,安定性を担保している技能試験に比べてσが大きくなっている可能性があるが,その他の技能試験と比べて結果に大きな差異はなかった.技能試験は,研究成果および試験結果の信頼性確保のために有用であったことと共に,その継続が必要であることが確認された.
  • 大能 俊久, 高橋 砂織
    2014 年 61 巻 11 号 p. 552-554
    発行日: 2014/11/15
    公開日: 2014/12/10
    ジャーナル フリー
    玄米に含まれるGAD活性について検討を行った.水分14.7%の玄米は,15°Cに貯蔵することで徐々にGAD活性が減少し,12ヶ月後には貯蔵前の約30%まで減少した.玄米粉を使用した貯蔵試験により,貯蔵時の水分と貯蔵温度がGAD活性の減少に影響することが示唆された.GAD活性は胚で一番高く,100~94%の表層粉も胚に対して77%の活性があったが,内層へ行くに従い減少しており,糠部分に大部分が存在していた.
研究小集会
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