日本食品科学工学会誌
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58 巻, 7 号
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総説
  • 成田 正直, 阪本 正博, 秋野 雅樹, 武田 忠明, 今村 琢磨, 飯田 訓之
    2011 年 58 巻 7 号 p. 277-283
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    To increase the market niche for scallop-based food products, we developed a high-quality scallop flake food and a new type of fermented sushi using boiled scallop (izushi). Scallop flake food comprises heated adductor muscles that are shredded into coarse fibers. Scallop flake food is a useful material for various culinary preparations, and its processing method is quite simple. Such foods are expected to become popular. In the present study, conditions for thawing frozen adductor muscle, heating adductor muscle, breaking up adductor muscle fibers, and sterilizing scallop flake food were improved. We finally established a processing method for high-quality scallop flake food. Izushi is one of the traditional fermented foods consumed in the Hokkaido and Tohoku districts. However, izushi made from scallop adductor muscle has not yet been developed. One of the reasons for this is that the weak texture and taste of scallop adductor muscle are not considered suitable for izushi preparation. We therefore investigated conditions for pickling and adjusting the weight of scallop adductor muscle during the fermentation process, and found ways to improve both the texture and taste of izushi. Our innovative processes will enable novel, marketable food products based on scallop adductor muscle.
報文
  • 安藤 泰雅, 折笠 貴寛, 椎名 武夫, 五月女 格, 五十部 誠一郎, 村松 良樹, 田川 彰男
    2011 年 58 巻 7 号 p. 284-290
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    熱湯ブランチング過程におけるカリウム溶出現象の解析を行った結果,熱湯浸漬過程における円柱状試料のカリウム含有量変化には拡散方程式の無限円筒モデルが適用され,拡散係数の値にはArrhenius型の温度依存性が確認された.
    また,最適なブランチング条件の把握を目的とし,ジャガイモのブランチングに熱湯浸漬,マイクロ波およびマイクロ波・熱湯併用法を適用して酵素活性,力学物性,カリウム残存率について検討したところ,以下の知見が得られた.
    (1) 試料中のパーオキシダーゼ活性の失活に要する時間は,熱湯ブランチングにおいて240s, マイクロ波および併用ブランチングにおいて120sとなり,マイクロ波を利用したブランチングでは処理時間が半分に短縮された.
    (2) マイクロ波のみによるブランチングでは,内部からの急速な加熱により,試料の損傷が見られたが,併用ブランチングでは,試料の損傷は観察されなかった.これは,試料に直接供給されるマイクロ波エネルギが小さかったため外部からの加熱となったことが原因であると推察された.
    (3) マイクロ波のみによるブランチングでは,試料の著しい軟化が見られたが,併用ブランチングでは熱湯ブランチングとほぼ同等の力学物性を維持した.
    (4) カリウムの残存率は,浸漬操作を含まないMW処理と浸漬操作を含む熱湯処理の間に有意差が見られた.併用ブランチングでは,処理時間が短縮されたものの,試料表面が高温になったため,カリウムの溶出がやや促進されたものと推察された.
  • 鈴木 健太, 和田 清孝, 田中 克幸, 室 哲雄, 畠中 芳郎
    2011 年 58 巻 7 号 p. 291-299
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    小麦粉生地で発生するスペック(ホシ,黒点)の抑制成分を各種食品素材よりスクリーニングした結果,焙煎米糠抽出物(RRBE)にスペック抑制作用を見出した.RRBE,コウジ酸(KA),L-アスコルビン酸(AA)について,小麦粉生地のスペック抑制効果を調べたところ,AAにはスペック抑制効果が見られず,RRBEとKAはほぼ同等のスペック抑制能力を有していた.L-チロシンを含む小麦粉スラリーの変色抑制効果について色差計により評価したところ,KAが最もL値変化の抑制効果が強く,次いでAAで,RRBEは最も抑制効果が弱かった.チロシナーゼとペルオキシダーゼを小麦ふすまより部分精製し,両酵素によるメラニン合成活性を調べた結果,ペルオキシダーゼのみではメラニン合成活性が検出されず,チロシナーゼと共存した場合にのみペルオキシダーゼの濃度に比例してメラニンの合成が促進された.両酵素に対するRRBE, KA, AAの阻害活性を比較したところ,RRBEの阻害活性が最も弱い結果となった.RRBEは酸化酵素阻害活性が弱いにも関わらず,KAと同等のスペック抑制効果があることから,スペック抑制には阻害活性の強弱以外の要因があることが示唆された.
  • 佐藤 真実, 谷 洋子
    2011 年 58 巻 7 号 p. 300-308
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    本研究では福井県産コシヒカリの米粉を用いてグルテン添加米粉パンを調製し,焼成直後と焼成直後に冷凍保存,自然解凍した場合のパンの品質や食味の変化について明らかにした.さらに製粉方法の異なる米粉の吸水性を考慮し,可変させた加水率が糊化・老化へ与える影響について明らかにした.
    焼成パンを冷凍保存,自然解凍しても水分含量,水分活性は変化が小さかったが,色差はいずれの製粉方法においても「大きい」となった.気流(70%)は,a*値,糊化度が有意に低値を示した.また,凝集性は,気流(70%),気流(80%)が有意に低値を示した.気流(90%)は,皮肌の滑らかさ,パリパリ感,ふんわり感,きめの細かさ,皮の色が,気流(80%)は,きめの細かさ,皮の硬さ,パンの食感,パンの味,総合評価が有意に向上した.一方,胴つき(80%),胴つき(90%)は,冷凍保存によって硬さ,凝集性,パンの食感と味が有意に低値を示したが,もち感,しっとり感が高く,総合評価が高かった.総合評価は,パンの味(r=0.95),ふんわり感(r=0.87),皮の硬さ(r=0.85),水分含量(r=0.85)の間で高い相関であった.
    調製時の加水率を90%まで増加すると,パンの比容積,水分含量は高くなり,L*値,硬さは低下した.とくに胴つき製粉はL*値,水分含量,糊化度が高かった.冷凍保存によって,糊化度は,気流(70%)が1%の危険率で有意に低値を示し,胴つき(90%)が5%の危険率で有意に高値を示した.
  • 伊藤 知子, 安藤 真美, 大塚 憲一, 久保 加織, 小林 敦子, 露口 小百合, 中平 真由巳, 原 知子, 水野 千恵, 明神 千穂, ...
    2011 年 58 巻 7 号 p. 309-317
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    国産菜種油を揚げ調理に用いた場合の調理特性の比較を行った.
    キャノーラ油と比較して,国産菜種油は精製度が低かった.また国産菜種油は青臭さ,香ばしさが強く,総合的なフレーバー強度が高かった.180分間揚げ加熱を行った後のフレーバーは,キャノーラ油の場合に総合的に強度が高くなったのに対し,国産菜種油ではほとんど変化が見られなかった.劣化の判断は,風味点数を用いて行うことが可能であったが,実際よりも油が劣化していると判定されやすいことが明らかとなった.
    揚げ種および油の官能評価については,キャノーラ油と比較してよい評価を得たものはなかった.しかし,焙煎された菜種油は色の官能評価が加熱回数とともに良くなり,またCV, PC, 粘度の上昇が抑制されることが示された.焙煎された国産菜種油は揚げ調理に用いた場合に性状変化しにくい油であることが明らかになった.
  • 渡邊 建士, 田中 史彦, 内野 敏剛
    2011 年 58 巻 7 号 p. 318-323
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    バイオフィルム量の経時変化の予測およびバイオフィルム量データの解析を目的とした決定論的および確率論的シミュレーションモデルを構築し,実測値とのフィッティング結果からモデルの妥当性について検討した.
    (1) モデルパラメータの値は,両モデルにおいて,細胞外多糖類による基質の濃縮,バイオフィルム内部の増殖速度の低下,貧栄養下におけるバイオフィルム形成能の向上といったバイオフィルムの特性をよく反映する値を示した.
    (2) 両モデルにおいて,高い精度でバイオフィルム量の経時変化を表現できた.また,確率論的モデルにおいて,高い精度でバイオフィルム量のばらつきを表現できた.
    以上のことから,両モデルは,バイオフィルム量の経時変化の予測およびバイオフィルム量データの解析に有用であることが示された.
研究ノート
  • 白井 展也, 鈴木 啓太郎, 大坪 研一
    2011 年 58 巻 7 号 p. 324-329
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    NaClを添加した精白米,玄米および発芽玄米の高血圧自然発症ラット(SHR/Izm)の血圧上昇抑制効果と血糖調整に関連するホルモンへの影響を調査した.発芽玄米摂取により,13週目の収縮期血圧は開始時に比べての有意な増加をしなかった.飼料群間で血糖値に有意な差は認められなかったが,発芽玄米群のC-ペプタイドは他の二群に比べて有意に低かった.これらの結果から,発芽玄米摂取は,NaCl摂取下でも血圧の上昇を抑制し,インスリンの感受性を改善しているものと考えられた.
  • 浅野 真理子, 土肥 愛, 矢澤 一良, 米谷 俊, 高橋 享子
    2011 年 58 巻 7 号 p. 330-334
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,生薬のI型アレルギー抑制作用を明らかにすることを目的として,83種類の生薬について脱顆粒抑制作用を検討した.試料は,一般的な服用方法である熱水抽出物とした.RBL-2H3を用いて,抗原架橋形成による脱顆粒を誘発し,生薬による抑制効果を検討したところ,30種類の生薬に有意な濃度依存性の脱顆粒抑制効果が認められた.なかでも,根・根茎由来の粉防己,狗背,遠志,また樹皮由来の肉桂が高い効果を示し,そのIC50値はそれぞれ79.1μg/ml, 187.6μg/ml, 288.1μg/mlおよび215.7μg/mlであった.
  • 佐々木 久美, 古賀 民穂, 山本 健太, 矢羽田 歩, 岩田 敏夫, 太田 英明
    2011 年 58 巻 7 号 p. 335-338
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    CLAは体脂肪減少,抗がん,抗アレルギー等,多くの生理作用が報告されている.CLA摂取量を高めるために,CLA強化丸パンの製造を試みた.CLA 2.0g (CLA置換率60%)を強化しても,比容積,硬さ,凝集性および官能評価の結果において対照区と差がみられなかったことから,供試したCLA量の範囲内CLA0.5g~2.0g強化/個(約40g)では,パンの品質にはほとんど影響を与えなかった.
    CLAは焙焼工程において,こね工程と比較して7%程度の増加傾向がみられた.室温貯蔵は8日間,冷蔵貯蔵では12日間でCLA含量は徐々に漸減し,冷凍貯蔵では30日目まではCLA含量に大きな差異がみられなかった.
    本試験での配合割合のパンの製造では,CLA 2.0g強化(CLA置換率60%)のパンの製造・利用が可能であることから,CLA摂取量を高める食品の一つとして有望な加工食品であることを明らかにした.
解説
  • 「研究小集会 卵」の趣旨
    長谷川 峯夫
    2011 年 58 巻 7 号 p. 339-340
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
  • 今泉 勝己
    2011 年 58 巻 7 号 p. 341-345
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    Japan is one of the top consumer countries in the world of chicken eggs at almost one egg per person per day. Chicken eggs contain eight essential amino acids in an ideal balance, giving an amino acid score that is as high as that for milk and beef (100) and the biological value that exceeds that of the latter foods (94). Furthermore, among animal-source foods, eggs are relatively rich in unsaturated fatty acids, fat-soluble vitamins and minerals such as phosphorus, calcium and iron. Despite these beneficial attributes, many consumers are worried about the relationship between chicken egg consumption and heart disease since chicken eggs are a high cholesterol food. Human studies in Japan reveal that consumption of egg yolk for 4 weeks did not result in an elevation of serum cholesterol level and there was no direct relationship between frequency of egg consumption and a risk of myocardial infarction in a 10-year follow-up study of 90,000 Japanese subjects. Rat studies provide evidence of the hypocholesterolemic action of egg yolk phospholipids and egg white proteins. Furthermore, feeding egg yolk phospholipids to rats with brain injuries and senescence-accelerated mice resulted in enhanced learning ability. These results indicate that chicken egg is an attractive food from the aspects of health promotion and nutritional function.
  • 大日向 耕作
    2011 年 58 巻 7 号 p. 346-349
    発行日: 2011/07/15
    公開日: 2011/09/01
    ジャーナル フリー
    It is known that eggs and egg components are frequently used for foods with high palatability; however, the effects of egg-derived molecules on emotional behavior have been largely unknown. We used the elevated plus-maze test in mice to investigate whether peptide derived from ovalbumin, a major egg white protein, has anxiolytic-like activity. We then found that a pentapeptide released from ovalbumin by trypsin exhibits potent anxiolytic-like activity with intraperitoneal and oral administration at a low dose comparable to diazepam, a general anxiolytic drug. Indeed, tryptic digest of ovalbumin exhibits anxiolytic-like activity after oral administration. In this review, we summarize the egg-derived molecules having anxiolytic-like activity. In addition, the mechanism underlying the anxiolytic-like activity of egg white-derived peptide was compared with previously described anxiolytic molecules.
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