豆乳と牛乳の混合系がレンネットで共沈するかを調べ,配合乳から乳酸発酵とレンネット併用によるカード形成を行い,
P.caseicolumを熟成用スターターに用い熟成し,次の結果を得た.
(1) 配合乳の豆乳の比率が高くなると,レンネットによる凝固の速度は遅くなる傾向が認められた.
(2) 豆乳濃度を希釈することにより,レンネットによる凝固速度は速くなった.
(3) 豆乳と脱脂乳の配合比が1:1の配合乳を試料とした場合,添加塩化カルシウム濃度が高くなるにともないレンネットにより凝固時間が短縮され,10mMでは約5分で凝固を示した.しかし,レンネット無添加では5時間経過しても凝固はみられなかった.
(4) 配合乳のレンネットによる凝固は,レンネット添加量が増すにともない,凝固時間が直線的に短縮された.
(5) 脱脂乳の代わりに牛乳を用いた配合乳では,低温殺菌乳および超高温殺菌乳を配合した配合乳ともにレンネットにより凝固し,カード形成された.また,配合乳を乳酸発酵することにより凝固時間は著しく短縮された.
(6) 豆乳と牛乳の配合比が1:1の配合乳を用いて乳酸発酵・レンネット添加により得られたカードの物性は,豆乳カードおよび乳酸発酵配合乳カードに比べ硬さ,剪断応力,ガム性および咀嚼性とも低い値を示した.
(7) 走査型電子顕微鏡観察によるとカードの組織は,部分的には凝集物が集まりカードを形成しているが,空隙が多く集合していない凝固物も多くみられた.
(8) 熟成によるタンパク質の水溶化はきわめて早かった.また,カード中の遊離グルタミン酸量も熟成とともに増加し,旨みも感じられた.しかし,脂肪の分解に由来すると思われるオフフレーバーが強く感じられた.
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