日本食品科学工学会誌
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63 巻, 12 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
報文
  • 本間 紀之, 高橋 誠, 吉井 洋一
    2016 年 63 巻 12 号 p. 551-560
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    米粉パンに利活用される微細米粉製造の研究において,製粉後の粒子径や澱粉損傷度の重要性が認知されつつあるが不明瞭な部分も多い.そこで,各種精白米の製粉性や篩い分けた米粉の特徴および米粉パン性状との関係について検討した.

    24品種42点の精白米を60%が200メッシュ通過するまでラボミル粉砕した結果,精白米のアミロース含量が高い程,粉砕に要する時間は少なかった.胚乳粉質系統はアミロース含量の傾向とは関係なく,短時間で粉砕された.また,粉砕に要した時間と澱粉損傷度の関係を検討した結果,決定係数0.81**と高い相関が確認できた.品質判定機により分別した精白米を粉砕した場合,未熟粒率が高い程,製粉に要する時間が短い事が確認できた.

    浸漬時間の異なる精白米を湿式でピンミル製粉した場合について,浸漬時間が長くなるほど,作成した米粉の平均粒径,澱粉損傷度の低下が起こり製パン性が向上した.それぞれの米粉を更に篩い分けした場合,細かい粒径区分ほどパン比容積は増加する一方,同程度の粒径区分の米粉の比較では澱粉損傷度が低い方がパンの比容積は増加した.

    以上の結果から,原料米の性状と製粉性の関係および米粉パン製造における細かい粒径と低い澱粉損傷度の有効性を定量的に示すことが出来た.今後は米粉から作られる様々な加工品に対して粒径と澱粉損傷度の最適な構成を検討することが必要と考えられた.

研究ノート
  • 肥後 温子
    2016 年 63 巻 12 号 p. 561-569
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    米·麦·雑穀類の生粉およびその焙焼粉製クッキーおよび焼,蒸パンケーキ焼成菓子粉末についてRVA粘度を測定し,原料穀粉のRVA粘度との関係,焼成菓子粉末のRVA粘度と力学特性との相関関係を調べた.

    (1)クッキーは原料穀粉の粘度特性が保持され,原料穀粉のRVA特性値(ピーク粘度,ブレークダウン値)との間に高い相関が得られた.焼,蒸パンケーキの場合にはピーク粘度が原料穀粉の平均18%に,ブレークダウンが平均7%以下に低下したが,原料穀粉のRVA特性値との間に弱い相関が得られた.

    (2)複数の焼成菓子ではブレークダウン ≺ ピーク粘度 ≺ セットバックの順に原料生粉100粘度比率が高くなるなどの共通点がみられ,加熱焼成後も原料穀粉の特徴が残存した.

    (3)クッキーの場合には焼成菓子粉末のRVA特性値(ピーク粘度)と高湿度域の力学特性値との間に相関が得られ,蒸パンケーキの場合には焼成菓子粉末のピーク粘度と焼成菓子の力学特性値(最大応力×凝集性)との間に高い相関が得られた.

  • 大山 憲一, 柴﨑 博行, 大西 茂彦, 柴田 英明, 小川 雅廣
    2016 年 63 巻 12 号 p. 570-574
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    養殖魚の飼料用に使われている香川県産オリーブ葉のPP含量と,オリーブ生葉中および葉粉末中でのPPの安定性を調べた.その結果,香川県の主要3品種のオリーブ生葉のPP含量は,7.3∼8.2g-GAE/100g-DWと,中国四川省産やイタリアパルマ産よりも高く,品種間での含量の差は小さい傾向であった.オリーブ葉の主要PPであるOLP含量は,剪定してから乾燥処理を行うまでの保存状態や保存時間によって著しく変動することがわかった.すなわち,屋外温室や冷凍室に保存するとOLP量は減少してしまうが,室内に保存し2週間以内に乾燥することで高いOLP含量を保持できることがわかった.また,乾燥·粉末化したものは,密封·暗所で常温保存すると1年間はOLPを安定的に保つことができることがわかった.

  • 植村 邦彦, 高橋 千栄子, 金房 純代, 小林 功
    2016 年 63 巻 12 号 p. 575-577
    発行日: 2016/12/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    味噌に含まれる酵素フォスファターゼは,添加した出汁の成分を分解するため出汁入り味噌は加熱処理によりフォスファターゼを失活している.ただし,従来の加熱処理で味噌の中心部の温度をフォスファターゼの失活温度まで昇温するのに,加熱表面を長時間加熱するため,表面の熱変性が問題である.本研究では,連続通電加熱により味噌に含まれる酵素フォスフォターゼを短時間かつ連続的に失活することを試みた.その結果,連続通電加熱処理では加熱温度の上昇に従って酵素活性が低下し,65℃まで加熱したときに残存活性率が10%以下となった.75℃で残存活性率が10%以下となった従来の加熱に比べて,通電加熱処理では10℃低い温度で酵素を失活できることが分かった.

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