日本食品科学工学会誌
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61 巻, 1 号
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報文
  • 加藤 重城, 八木 敬広, 秋元 政信, 有原 圭三
    2014 年 61 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
    還元カルボキシメチル化した卵のオボアルブミンを免疫抗原として作製したモノクローナル抗体を用いて,特定原材料の通知法の抽出方法に対応した,新たな卵 ELISA キットを構築した.
    (1)作製したモノクローナル抗体は,2-ME と SDS で可溶化されたオボアルブミンを検出可能であった.さらに,複数のモノクローナル抗体を組み合わせることで,鶏,あひるおよびうずら卵白が検出可能であった.
    (2)構築した卵 ELISA キットの検出限界と定量限界はいずれも食品試料中の卵タンパク質濃度換算で1.0 μg/mL未満であり,表示が必要な数 μg/g レベルの測定には十分な感度であった.
    (3)添加回収試験では50 %以上,150 %以下の基準を満たし,再現性試験での CV%は全て10 %以下であった.さらに,卵以外の食品原材料では交差反応が認められなかった.
    (4)市販食品における食品表示と構築した卵 ELISA キットでの測定結果はすべて一致し,現行法と同等の測定値を示した.
    以上のことから,モノクローナル抗体のみで構築した卵 ELISA キットは,特定原材料の卵の定量検査法として通知法に示された現行法と同等に有用であることが考えられた.
  • 後藤 清太郎, 渡辺 至, 大森 康雄, 府中 英孝, 三明 清隆, 森岡 豊, 小谷 健二, 小齊 喜一, 上﨑(堀越) 菜 ...
    2014 年 61 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
    非加熱食肉製品である生ハムにおいて,10°C,嫌気条件下でのL. monocytogenesの挙動に対するaw およびくん煙が及ぼす影響について,異なる4機関で検討した.
    (1)aw0.94以上0.95未満の範囲にある生ハムについて,くん煙やくん液処理を行わない試料ではL. monocytogenesの増殖が見られた.aw0.93未満では増殖は見られず,awの影響は大きいと考えられる.
    (2)aw0.94以上0.95未満の範囲にある生ハムについて,くん煙処理もしくはくん液処理を行った場合,L. monocytogenesの増殖が抑制された.その際のフェノール類濃度は0.6 ∼12.2 ppmの範囲であった.
  • 國本 弥衣, 奥村 知生, 加藤 登, 新井 健一
    2014 年 61 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
    ホッケ(AG)とスケトウダラ(WP)の冷凍すり身から3 %卵白粉末の添加の有無の下で直加熱ゲル(90°C,30分)と二段加熱ゲル(25°C,数時間後,90°C,30分)を調製した.調製した加熱ゲルを細切し,0.6 M NaCl(N),1.5~8.0 M 尿素(U),および2 % 2-メルカプトエタノール(Me)からなる混合溶媒中で撹拌,溶解させ,タンパク質の溶解度(%)を測定し,レオメーターで測定した物性との関係を検討した.
    (1)非坐り加熱ゲル(AG と WP の直加熱ゲルとAGの二段加熱ゲル)のタンパク質の大部分が 0.6 M N+8.0 M U+2%Me 溶媒に溶解した,これは卵白粉末の添加によっても変わらなかった.
    (2)坐り加熱ゲル(WPの二段加熱ゲル)のタンパク質は,各種混合溶媒への溶解度が予備加熱の進行に伴って激減し,不溶性のタンパク質成分が蓄積した.この変化は卵白粉末の添加によってやや強まった.
    (3)各種の溶媒へのタンパク質の溶解度の比較結果から非坐り加熱ゲルの形成には疎水性相互作用が,また卵白を加えるとS-S結合が僅かに関与し,一方,坐り加熱ゲルの形成にはより強力な結合(または相互作用)が関与していると推定した.
技術論文
  • 藤原 孝之, 久保 智子, 山﨑 栄次
    2014 年 61 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
    ドライフルーツの製造にける一般的な方法である熱風乾燥は,果実表層部が早く乾燥・硬化し,内部は乾燥しにくいため,乾燥時間の長さ,製品水分の不均一性および食感の悪化が問題となる場合が多い.さらに,ポリフェノールの酸化等による褐変も製品の品質を落とす要因である.ニホンナシの果実片にマイクロ波を照射した後で熱風乾燥を行えば,前処理を行わない場合と比較し約2/3の時間で乾燥が終了し,色彩が鮮やかで褐変がなく,水分や硬さが均一なセミドライフルーツが得られることがわかった.以上の効果が得られるために必要なマイクロ波処理時間は,果実片の処理重量に比例するとともに,電子レンジ出力に反比例した.40°Cから70°Cの熱風乾燥温度でセミドライフルーツの作製が可能であり,温度が高いほど濃い色調を呈した.消費者による官能検査を実施したところ,マイクロ波処理を行ったニホンナシのセミドライフルーツは,無処理のものより外観,味,食感および総合評価において好ましいと判断された.以上より,マイクロ波による前処理と熱風乾燥により製造されたニホンナシのセミドライフルーツは,高品質な果実加工品として,今後の普及が期待される.
研究ノート
  • 八戸 真弓, 内藤 成弘, 明石 肇, 等々力 節子, 松倉 潮, 川本 伸一, 濱松 潮香
    2014 年 61 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
    太さの異なる2種類のうどん生麺,太麺(2.5 mm × 3 mm)と細麺(1.5 mm × 1.5 mm)を作成し,それぞれにおいて茹で時間を変えて調理し,麺の太さと茹で時間が放射性セシウムの動態に及ぼす影響を評価した.太麺,細麺ともに茹で調理により,放射性セシウムが有意に低減されることが分かった.しかし,茹で時間の延長による加工係数の変化は,太麺で20分間まで,細麺で4.5分間までは有意に低下したが,それ以降は茹で時間の延長による有意な低下は認められなかった.残存割合は太麺では10分間で,細麺では3分間までは有意な低下が認められたが,それ以降は有意な低下は認められなかった.これらのことから,喫食に適する茹で時間(太麺では20分間,細麺では3-4.5分間)の調理において,茹で麺と茹で湯間の放射性セシウムの濃度勾配が小さくなり,それ以上の茹で時間の延長では,茹で麺の放射性セシウム濃度の有意な低下は起こらないことが明らかとなった.また,細麺のほうが太麺よりもより短い茹で時間で放射性セシウムの低減効果が得られるが,両茹で麺とも茹で調理により80 %以上の放射性セシウムが除去された.
  • 菅原 晃美, 澤井 祐典, 氏原 邦博, 後藤 一寿, 沖 智之, 須田 郁夫
    2014 年 61 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/01/31
    ジャーナル フリー
    黒大豆「クロダマル」の煎り豆製造工程における総アントシアニン,総プロアントシアニジン,GABA および抗酸化能の推移を調査した.総アントシアニンと総プロアントシアニジンの含量は,黒大豆を水へ浸漬する工程で大きく減少したが,煎り豆中にはアントシアニンとプロアントシアニジンが,それぞれ生大豆の53 %と83 %残存していた.一方,水への浸漬工程で黒大豆中の GABA 含量は5.3倍にまで増加したが,浸漬後の静置する工程で減少した.黒大豆の煎り豆の H-ORAC は,生大豆と比較して有意(P <0.05)に高かった.
技術用語解説
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