日本食品科学工学会誌
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67 巻, 9 号
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総説
  • 中村 善行
    2020 年 67 巻 9 号 p. 305-314
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル フリー

    サツマイモの甘さに関わる遊離糖類はグルコース,フルクトース,スクロースおよびマルトースで,それらは主にデンプンから生成される.糊化デンプンの β-アミラーゼによる加水分解で生じるマルトースは酵素活性の上昇に伴ってその生成量が増加するが,活性が0.2mmol maltose/min/mg proteinを超えると増加が抑制された.β-アミラーゼ活性がこのように高い正常な塊根ではマルトース生成量はデンプン糊化開始温度と相関が高かった.また,冷涼な環境で栽培すると,アミロペクチンの分子構造変化に伴ってデンプン糊化開始温度が低下し,マルトース生成量が増加した.これらの結果から,マルトース生成にはデンプン糊化が重要な役割を果たすと考えられる.マルトースに次いで含量の多いスクロースはその強い甘味から甘さに対する寄与はマルトースとほぼ同等である.スクロースは貯蔵中のデンプン分解に伴って塊根に蓄積するが,貯蔵温度が低下すると,スクロース代謝関連酵素の活性が変化して蓄積量が増加する.甘さの官能評価に影響を及ぼす塊根のテクスチャは加熱に伴うマルトース生成後に塊根に残存するデンプン含量と密接な関係が認められた.

シリーズ—地域食品研究のエクセレンス(第24回)
  • 成澤 朋之, 仲島 日出男, 海野 まりえ, 乙部 千雅子, 山田 昌治, 朝倉 富子
    2020 年 67 巻 9 号 p. 315-323
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル フリー

    Flavor is one of the important factors for udon, white salted Japanese noodles. Using gas chromatography/mass spectrometry, we analyzed the volatile compounds from the flour, dough, and boiled noodles to clarify the mechanism of udon flavor formation. Hydrocarbons were the main compounds from the flour, while aldehydes and ketones were the main compounds from the dough and noodles. These aldehydes and ketones are presumed to be generated from the enzymatic oxidation of unsaturated fatty acids by lipoxygenase (LOX) upon the addition of water. LOX activity was significantly higher in the cultivar Norin61 than in Satonosora. In conclusion, the characteristic volatile compound profiles of Norin61 are due to differences in LOX activity. These results have been applied to the development of new value-added noodle products by various companies.

報文
  • 中澤 洋三, 渡邉 拓海, 野田 高弘, 山﨑 雅夫
    2020 年 67 巻 9 号 p. 324-331
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル フリー

    馬鈴薯新品種「パールスターチ」澱粉について,澱粉性状の解析とビール醸造適性について検討した.「パールスターチ」澱粉の粒子形態はスムーズな球状で,平均粒径は23.5µmであり,Ca強化微粒子澱粉や通常の馬鈴薯澱粉よりも大粒子であった.「パールスターチ」澱粉は加水加熱により,64.8℃の低い温度で糊化を開始し,粘度が急激に増加したが,澱粉粒の崩壊後に直ちに粘度が急降下し,粘度は通常の馬鈴薯澱粉よりも小さくなった.さらに,麦芽アミラーゼ酵素存在下では,粘度上昇温度が62.0℃と無添加時よりも2.8℃低下し,糊化後に温度が下がっても,粘度が上昇(老化)しなかったことから,大部分の澱粉が分解されていることが示唆された.「パールスターチ」澱粉は前糊化処理を施さない場合でも,65℃加温の工程で,麦芽アミラーゼによって充分に糖化されることが明らかになった.「パールスターチ」澱粉を添加した麦汁発酵液のエタノール濃度は6.62%となり,麦芽のみの発酵液(7.01%)よりも若干アルコール分が低かったが,Ca強化微粒子澱粉を添加したもの(5.37%)および馬鈴薯澱粉を添加したもの(5.05%)よりも高いアルコール分であった.以上より,馬鈴薯新品種「パールスターチ」澱粉は,現在ビール醸造に広く利用されている前糊化処理の必要なコーンスターチとは異なり,前糊化処理を施さなくとも,65℃加温をすることで,麦芽アミラーゼによって充分に糖化されることから,製造工程の簡略化が可能となり,酒税法改正後のビール類の副原料として,有効な澱粉原料となることが示唆された.

  • 真川 竜太, 一楽 建二, 中村 勇介, 吉原 毅, 阪井 直哉, 山本 宗, 山崎 英恵
    2020 年 67 巻 9 号 p. 332-338
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル フリー

    ブローボトル形態冷菓の喫食による自律神経活動および気分状態の検証を行い,影響を与える要素について自律神経活動とフリッカー試験,サーモグラフィー,VASを手法として用いて調べた.試験食群の中でなめらか食感冷菓において最も高いリラックス効果が確認され,その要素として冷たさとなめらかな食感が相互に影響していることが示された.さらに自律神経活動と気分状態の結果解釈から,なめらか食感冷菓喫食によるリフレッシュ効果が示唆された.

研究ノート
  • 榎 康明, 前島 大輔, 久保 希恵, 長島 洋介
    2020 年 67 巻 9 号 p. 339-344
    発行日: 2020/09/15
    公開日: 2020/09/25
    ジャーナル フリー

    高アミロース米は食後血糖値が穏やかな機能性米としての利用が期待される一方,その米飯は硬く粘りの少ない特性を有し,普及の課題となっていた.そこで,高アミロース米「越のかおり」について,米飯としてではなくライスサラダとして摂取した場合における血糖応答と食味の評価を行い,以下の知見を得た.

    (1)コシヒカリと越のかおりの米飯と冷飯を調製し,RS量を測定した結果,越のかおりにおいてのみ,冷飯処理によるRS量の増加が認められた.

    (2)血糖応答評価では,コシヒカリ米飯と比較し,越のかおりのライスサラダにおいて,有意に低い血糖応答が認められた.

    (3)官能評価では,コシヒカリと越のかおりのライスサラダはともに高い評価となり,食感では,コシヒカリよりも高値傾向が認められた.

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