日本食品科学工学会誌
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64 巻, 3 号
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報文
  • 秋間 彩香, 山形 文乃, 谷米(長谷川) 温子, 熊谷 日登美, 熊谷 仁
    2017 年 64 巻 3 号 p. 123-131
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    性状が異なる試料において,かたさが粘度の代用として誤嚥の危険性の物性指標になりうるかを明らかにするために,流動特性の異なる液状試料を用いて,かたさと粘度との関係について検討を行った.また,かたさあるいは粘度と咽頭部最大流速Vmaxとの関係について検討した.

    キサンタンガム溶液と類似した流動特性(粘度vs.ずり速度の関係)を有する液状試料については,かたさと粘度の関係は単一の直線で回帰されたが,流動特性の異なるCMC溶液やローカストビーンガム溶液では同じ直線で回帰できなかった.ヒトの嚥下に関わる高いずり速度ではかたさを粘度の代用として用いるのは難しいため,液状食品に関してかたさを用いる場合は,流動特性などのレオロジー特性も考慮する必要があると考えられた.また,液状試料,ゲル共にかたさの値の増加に伴い,Vmaxの値は減少したが,ヨーグルトのVmaxとなるかたさの閾値はゲルの方が液状試料の10倍程度であった.以上のことから,液状試料,ゲルに対して同一のかたさの値を物性指標として用いることには問題があることが示された.

技術論文
  • 濱岡 直裕, 八十川 大輔, 奥村 幸広, 中川 良二, 田中 達大
    2017 年 64 巻 3 号 p. 132-138
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    著者らが保有する北海道で分離された独自の乳酸菌から,酸生成が期待できるホモ発酵乳酸菌Streptococcus salivarius ssp. thermophilusを選択し,培養特性を解析した結果,酸生成が緩やかであることが明らかになった.そこでpH調整剤としてクエン酸を併用することで乳酸酸性よるpH低下を補い,本乳酸菌をスターターとしてチーズ製造する製造条件を設定し,試作製造した結果,風味良好なモッツァレラチーズを製造する実用化条件を見出すことができた.本結果は,全国各地域で独自に分離される菌株で,育種改変などの厳しい選抜を経ずに野生株を実用へ応用する一つの道筋を示すものであり,地域ブランドの製品製造につながることが大いに期待される.

  • 北條 健一, 杉山 純一, 粉川 美踏, 藤田 かおり, 弓削 渉, 野崎 理悦, 伊藤 寿美
    2017 年 64 巻 3 号 p. 139-149
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,高アミロース米を炊飯し,油脂存在下,或いは非存在下で機械的せん断,撹拌して得られた米ゲルをスケソウダラすり身に添加,混合·加熱して得られたすり身加工試料について,1)すり身単体,2)すり身+油,3)すり身+米ゲル,4)すり身+米ゲル+油,5)すり身+2倍量米ゲル+2倍量油,の5つの試験区のすり身加工試料を調製し,動的粘弾性測定,および貫入試験を実施して,物性の制御手法に関する検討を行った.結論を以下に記す.

    (1)米ゲルの添加は,すり身加工試料の動的粘弾性においてE*およびtan δを上昇させる影響を及ぼす.

    (2)米ゲルの添加は,すり身加工試料の破断歪みを低下させる影響を及ぼす.2段加熱の場合は破断荷重も低下させる.

    (3)乳化した米ゲルの添加は,すり身加工試料の動的粘弾性において,米ゲル添加した場合よりもE*を有意に低下させる影響を及ぼす.

    (4)乳化した米ゲルの添加は,米ゲル添加したすり身加工試料よりも破断荷重,破断歪みとも上昇させる影響を及ぼす.

    (5) 2段加熱では,直加熱と比べ(1)〜(4)の傾向が強化される傾向を示す.

    (6)乳化した米ゲルは,軟らかで且つ相対的に弾性の高い独特の質感をすり身加工試料に持たせることができる.

    今後は油添加と高アミロース米ゲルのハイブリッド技術をさらに発展させ,実用的な魚肉すり身加工技術として独特の食感を持った水産ねり製品の開発が期待される.

研究ノート
  • 中津 沙弥香, 柴田 賢哉, 坂本 宏司
    2017 年 64 巻 3 号 p. 150-156
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,ブロッコリーを供試材料として,凍結含浸法による酵素処理によって,口腔内で簡単に潰せるレベルに軟らかく,アスコルビン酸を含有した緑色および形状の保持された植物性食品素材を作製することを目標として,必要なプロセスと,各プロセスでの品質変化を明らかにした.

    (1)減圧酵素含浸前のブランチングおよび凍結·解凍処理の必要性を検証した結果,どちらのプロセスも必要であった.ブランチングによる中心部までの80℃以上の加熱と,その後の凍結·解凍処理の相乗的な素材組織の弛緩によって,中心部までの必要量の軟化酵素の誘導が起こったことが示唆された.

    (2)凍結含浸法による形状保持軟化素材を作製するための5つのプロセス(ブランチング,凍結·解凍,減圧酵素含浸,酵素反応,酵素失活)における試料の硬さとアスコルビン酸含有量を測定した結果,軟化にもっとも寄与したプロセスは酵素反応であり,アスコルビン酸含有量をもっとも減少させたプロセスはブランチングであった.凍結含浸法の必須工程である凍結·解凍および減圧による酵素含浸処理は,水溶性成分の分解および流出の主な原因ではないことが示唆された.

    (3)本実験で,酵素と併用して含浸に用いた炭酸水素ナトリウムの主な効果は,素材内部のpHの低下抑制による緑の退色防止であり,軟化に大きな寄与はなかったことが示唆された.

    (4)凍結含浸法を用いて軟化させたブロッコリーは,6および10分間煮沸処理されたブロッコリーに比べて,硬さの値は約1/5〜1/6であり,アスコルビン酸含有量およびa*値に有意差がなかった(p<0.05).凍結含浸処理されたブロッコリーは,目標とする硬さの値を満たすことができ,花蕾を含めて中心部まで軟らかく,舌と上あごで潰すことができた.

    これらの実験結果から,凍結含浸法を用いた酵素処理が,ユニバーサルデザインフード第1版の区分2の5.0×104 N/m2以下を満たす軟らかさを付与し,アスコルビン酸を有する,緑色が保持された軟化野菜を作製するための有効な手法の一つであることが示唆された.

  • 三浦 孝之, 高久 未樹, 青木 哲也, 阿久澤 良造
    2017 年 64 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    大豆および小豆の煮汁を用いた新規チーズの作成を目標とし,凝乳試験およびモデルカードを評価した.

    豆煮汁に含まれるポリフェノールによって凝乳時間が遅延したが,カード収量は煮汁の添加量40% (v/v)まで有意差がなく良好なモデルカードが形成された.

    煮汁を30% (v/v)添加して作成したモデルチーズの外観は各種煮汁の色調を反映していた.この結果は豆煮汁に含まれるポリフェノールをチーズカード内に取り込んだ新規チーズ製作の可能性を示している.

解説
シリーズ─研究小集会(第28回)穀物部会
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