日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
71 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • 半田 明弘
    原稿種別: 総説
    2024 年 71 巻 2 号 p. 31-40
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    [早期公開] 公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり

    On heating, egg white proteins unfold, aggregate through intermolecular interactions of non-covalent and covalent bonds, and form networks to gel. Since the physical properties of egg white gel have a great influence on the texture of foods that use egg white, the control techniques and mechanisms have been extensively studied. In addition to conventionally known hydrophobic interactions and disulfide bonds, lanthionine and lysinoalanine bonds are deeply involved in the heat gelation of egg white. Recently, it was revealed that the covalent bonds are also involved in the formation of soluble aggregates on dry heat treatment of dried egg white. Controlling the formation of soluble egg white protein aggregates is considered a key factor in controlling the heat-induced gelation of egg whites. The aggregation and gelation properties have been studied using various methods, such as the Maillard reaction and electrochemical reaction.

報文
  • 富岡 敏彦, 内藤 宙大, 廣瀬 潤子, 門間 敬子, 成田 宏史, 和泉 秀彦
    原稿種別: 報文
    2024 年 71 巻 2 号 p. 41-49
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    [早期公開] 公開日: 2023/10/11
    ジャーナル 認証あり

    鶏卵アレルギー患者において, 鶏卵と小麦粉を混捏・焼成したベイクドエッグであれば症状誘発閾値を超えて摂取できるという報告がある. また, OMは熱耐性がある水溶性タンパク質として知られているが, ベイクドエッグ中のOMは不溶化していることが明らかとなっている. 本研究では, 性状 (立体構造や溶解性) の異なるOMの消化性を明らかにすることを目的とし, 不溶化OMがアレルギー症状を誘発しにくい機序を考察した.

    性状の異なるOM (精製, 加熱, 未焼成および焼成) を作製し, ペプシン, キモトリプシンおよびトリプシンにて消化処理した. その後, Lowry法, SDS-PAGEおよびイムノブロットにて解析を行った. 精製OM, 加熱OMおよび未焼成OMの水溶性タンパク質濃度は, 消化後も変化しなかった. 一方, 焼成OMの水溶性タンパク質濃度は, 消化前は低かったが, ペプシンおよびキモトリプシン消化では, 消化中にタンパク質濃度が増加した. イムノブロットの結果, 焼成OMの上清に検出されたタンパク質バンドは, タンパク質濃度が同等であるにも関わらず, 精製OM, 加熱OMおよび未焼成OMより薄く検出された. また, 焼成OMの残渣中から未分解のOMが検出された. トリプシン消化では, すべての試料において消化後の変化はみられなかった. 以上のことから, 焼成OMは, 他の試料より消化後の分解断片の抗体結合能が低下していることに加え, 残渣中にOMが残存しており, これがアレルギー症状誘発に影響を与えている可能性が考えられた.

技術論文
  • 中塚 康雄
    原稿種別: 技術論文
    2024 年 71 巻 2 号 p. 51-63
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    [早期公開] 公開日: 2023/10/17
    ジャーナル 認証あり

    食物繊維, 特にβ-グルカンの豊富な大麦の摂取増進を図るためには大麦混合パン (以下, 大麦パン) への利用拡大が有効であるが, 大麦配合率を高めていくとパンの膨化性が低下し, 同時に嗜好性も劣ってくるため, 現状の大麦配合率の使用上限は20%程度に留まっている. 大麦パンの膨化性低下因子について, 大麦に含有されている食物繊維は外皮だけでなく胚乳細胞壁にも豊富に存在するため, 食物繊維が増えると厚く硬い細胞壁を形成する結果, 大麦穀粒の製粉が困難となり, 胚乳細胞は完全に粉砕されずに一部が粗大粒子として残存し, 膨化性に影響を及ぼすことを明らかにした. 製粉後の粗大な細胞壁破片や粒子を解砕・微細化する手段として, 食物繊維分解酵素の利用が考えられたが, 低分子化による食物繊維, 特にβ-グルカンの過度な減少が予想された. 膨化性改善と食物繊維減少抑制の両立を目指した“酵素添加前処理法”を試みた結果, 大麦品種ごとに異なる食物繊維組成に応じた最適な酵素添加条件を選択することによって, 大麦パンの膨化率は平均10%向上し, 大麦配合率の上限を20%から30%に引き上げても強力粉パンと同等レベルの膨化性を有した大麦パンを提供できるようになった. 本処理法は, 製パン工程のミキシング前に大麦粉だけを先に酵素処理するため, 酵素剤の使用量が少なく製パン工程にかかる作業負荷も小さいため, 現状の製パンプロセスに導入容易な新しい大麦パン製造技術として利用されることが期待される.

feedback
Top