日本食品科学工学会誌
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62 巻, 9 号
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報文
  • 山澤 広之, 桑田 知宣, 山澤 和子, 寺嶋 昌代, 野澤 義則
    2015 年 62 巻 9 号 p. 431-437
    発行日: 2015/09/15
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    養殖アユの体色と食味の改善および柿ワイン残渣(PR)の有効利用を目的として,PRを配合した飼料(PR区)でアユを飼育した.アユ背肉の脂肪酸組成は,対照区(市販飼料)とPR区の間に有意差は見られなかった.黄色斑および背びれ,腹部,尾びれの色調を測定したところ,対照区に比べPR区のアユ体色は有意に向上した.また,対照区に比べPR区では,魚体の外観のきれいさや食味等の評価点が高かった.全体(総合)評価では,有意差は認められなかった.以上の結果から,PRの有効的利用法として,アユ飼料への配合は特にアユの体色および食味等の嗜好因子の改善に繋がることが示唆された.
  • 舩津 保浩, 永田 亜希恵, 田中 彰, 西尾 由紀夫, 中川 義久, 岩崎 智仁, 金田 勇, 眞船 直樹
    2015 年 62 巻 9 号 p. 438-444
    発行日: 2015/09/15
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,食物繊維を多く含むライ麦を使用し,加工形態をドーナツやケーキとして,食後血糖値の上昇抑制効果および嗜好性について検討した.結果を下記に示す.
    1.小麦全粒粉,ライ麦全粒粉を配合した各ドーナツ,ケーキの50g糖質相当量摂取前後から得られた血糖値においてドーナツの小麦全粒粉ドーナツ(D1),ライ麦全粒粉ドーナツ(D2)ではプレーンドーナツ(D0)よりも有意に低値であった.
    2.ケーキではプレーンケーキ(C0)に対し,小麦全粒粉ケーキ(C1)が有意に低値であった.
    3.密度はドーナツではD0に比べD2有意に高く,気泡が少なく,押しつぶされた構造であった.ケーキでは密度には違いが認められなかった.
    4.嗜好性を調査したところ,ドーナツはD1の方がD2よりも好まれたのに対し,ケーキでは試料間に違いがみられなかった.
    以上の結果から,小麦全粒粉やライ麦全粒粉を配合したドーナツおよびケーキに含まれる食物繊維量18) や加工形態の違い16) によって食後血糖値の上昇抑制効果や嗜好性が異なるため,糖尿病予防食として利用するためには主原料に合った加工形態の選択が重要と考えられる.
  • 菅原 諒太, 山田 さゆみ, 涂 志豪, 菅原 明子, 干場 敏博, 山内 正仁, 山口 昭弘
    2015 年 62 巻 9 号 p. 445-453
    発行日: 2015/09/15
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    酪農学園大学キャンパス内の自生キノコ48試料について遺伝子解析による同定を行ったところ46試料が種あるいは属レベルで同定された.Congo Red法によるβ-グルカンの定量結果は,測定値にセルロースなどの直鎖状β-グルカンを含まないことから,酵素法と比べて小さい値となったがβ-グルカンの高次構造を反映した機能性を評価する上ではむしろ有用であると考えられた.また食材の機能性評価に汎用されるTPPおよびDPPHラジカル消去活性を測定したところ,両測定値間には強い正の相関が認められ,キノコの抗酸化性にはポリフェノールが関与していることが示唆された.β-グルカン,TPPおよびDPPHラジカル消去活性のいずれの機能性指標においても科ごとに一定の傾向は見られず,種ごとに特徴的な値を示すことが確認された.
研究ノート
  • 糸山 隆一, 石原 克之, 杉原 直子, 佐久間 塁, 羽藤 公一, 古賀 秀徳
    2015 年 62 巻 9 号 p. 454-460
    発行日: 2015/09/15
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    植物油脂を原料として使用する食品加工企業においてその品質評価は重要であり,AV,POV,カルボニル価などの測定法が確立されている.一方,味に関しては,揚げ加工された製品の官能評価が一般的であり,植物油脂自体の味を少量で,人に頼らず,客観的に評価できる方法が求められている.そこで本研究では植物油脂から味覚センサーに反応する成分をエタノールで抽出する方法を検討し,味認識装置を用いた植物油脂の識別と分類を試みた.
    まず,サフラワー油,ナタネ油,パームオレイン油,米サラダ油,圧搾米油,大豆油の6種類の植物油脂を用いて100% (v/v)エタノール抽出法,70% (v/v)エタノール抽出法,2段階希釈エタノール抽出法により抽出液を調製し,味認識装置で測定した.8つの味覚項目の測定誤差率(m2)が50%以下の場合に「識別できた味覚項目」とした.その結果,2段階希釈エタノール抽出法において6項目と最も良好な結果が得られた.さらに,同じ植物原料由来でより近縁な油種として3種の米油(米サラダ油,米胚芽油,圧搾米油)の識別方法を検討したところ,2段階希釈エタノール抽出法の後半にろ過工程を追加することにより再現性が向上することが分かった.
    この2段階希釈エタノール抽出ろ過法により,前述の6種類にゴマ油,オリーブ油を加えた8種の植物油脂の分類を試みた.測定した8つの味覚項目の味評価値をクラスター分析した結果,官能に基づく油脂の風味のポジショニングイメージとよく一致した.一方,実験に供した油脂のAV,POVをクラスター分析した結果は味認識装置での結果と全く一致しなかった.
    以上のことから今後,製油企業や食品加工企業などで味認識装置を官能検査に代わる新たな植物油脂の評価法として利用できる可能性が示された.
  • 三枝 貴代, 石川 哲也, 樋口 浩二, 石田 元彦
    2015 年 62 巻 9 号 p. 461-464
    発行日: 2015/09/15
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    4-アミノ酪酸(GABA)を蓄積させた玄米は,血圧低下効果や精神安定作用が期待できるためにニーズが高い.GABA蓄積加工用米として利用するために,多様な遺伝背景を持つ米で,早刈りや窒素追肥の効果を検討した.早刈りによってGABA蓄積量は増大しなかった.また,幼穂形成期および穂揃期での窒素追肥によってもGABA蓄積量は必ずしも増大しなかった.しかし品種が異なるとGABA蓄積量は大きく変動し,一部(品種名べこごのみ)は40mg/100gまで到達した.この結果は,巨大胚芽米以外にもGABA富化食品用米品種の作出の可能性があることを示唆している.
  • 野村 幸司, 横井 健二, 田子 泰彦
    2015 年 62 巻 9 号 p. 465-469
    発行日: 2015/09/15
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    富山県に伝承されるアユなれずしは,麹を使って漬け込み,約40日間の熟成後が食べ頃とされる.本研究では,このアユなれずしを試作し,熟成中の生菌数,有機酸,遊離アミノ酸などを分析した.乳酸菌数は熟成8日後以降,108cfu/g台のオーダーで推移し,pHは8日後に4.8に低下し,その後は4.6-4で推移した.乳酸は22日後までに急増し,遊離アミノ酸総量も同様の傾向が見られたが,それ以降は緩やかに増加した.これらの結果から,麹を使用して伝承的製法で作るあゆなれずしは,乳酸発酵が速やかに進行することが示唆された.
  • 佐々木 一憲, 沖 智之, 甲斐 由美, 奥野 成倫
    2015 年 62 巻 9 号 p. 470-476
    発行日: 2015/09/15
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
    サツマイモ品種「すいおう」葉身中のCAおよび7種のCQAsの茹で加熱処理における変動を調査した結果,CA,3-CQA,5-CQA,3,5-diCQAおよび3,4,5-triCQAでは有意に減少したが,4-CQAおよび3,4-diCQAでは有意な変動は認められず,4,5-diCQAでは有意に増加した.CAおよびCQAsの標品の水溶液を100°Cの条件下で加熱した場合,CAと3,4,5-triCQAでは有意に変動しなかったが,mono-CQAsとdi-CQAsでは構造異性体が生成し,残存する元の化合物の量へ新たに生成した構造異性体の量を加えた総量が,加熱処理において有意に変化しないことが示された.そのため,「すいおう」葉身の茹で処理での各化合物の挙動の差異は,茹で汁への流出と同時に,それら化合物の構造異性体への変換に起因していると推察された.
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