日本食品科学工学会誌
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60 巻, 6 号
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総説
  • 永井 利郎, 一木(植原) 珠樹, 澤田 宏之, 佐藤 豊三, 青木 孝之, 山﨑 福容, 竹谷 勝, 埋橋 志穂美, 廣岡 裕吏, 富岡 ...
    2013 年 60 巻 6 号 p. 257-265
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    Culture collections (CCs) are organizations that mainly collect strains of microorganisms to stably preserve or maintain them and distribute them to users. There are 23 CCs in Japan ; these are mainly established in universities and national institutes, and contain a total of 411 183 strains of preserved microorganisms (191 692 bacteria, 50 799 yeasts, 49 380 fungi and others), accounting for 20 % of strains preserved in CCs around the world. CCs also store information on their microorganism collections (species, location and origin of isolation, and growth conditions) in databases. These primary data for the identification of strains are open to the public via the Internet, and users can retrieve the data using searching systems offered by the CCs instead of using paper-based catalogs. In CCs, deposited microorganisms are cultured and, depending on the microbial group, freeze-drying or other freezing methods are used to prepare the microorganisms for distribution. At regular intervals, survival tests are carried out to check the quality of the preparations. In addition, CCs offer services other than distribution of their collections, such as e-mail newsletters, workshops on the handling of microorganisms, booklets on the microorganisms, and safety-deposit services for users’ collections.
  • 川原 修司
    2013 年 60 巻 6 号 p. 266-269
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    Whole wheat flour is rich in dietary fiber, vitamins and minerals when compared with commercial flour lacking bran and germ. However, whole wheat flour prepared by conventional milling contains roughly ground bran and causes elastic deformation of the gluten membrane and degradation of bread quality. Cleaning of the wheat seed coat is an important step in the process of preparing hygienic whole wheat flour. It is also important to prepare fine scratches on the seed coat in order to finely pulverize the bran. Milling of wheat grain was carried out using a stainless steel mortar developed by NFRI, and this enabled the preparation of whole wheat flour with finely pulverized wheat bran. Bread products made from fresh ground whole wheat flour showed high quality with superior flavor. In this study, we outline the novel surface treatment technology used to prepare hygienic whole wheat flour with finely pulverized wheat bran, and the techniques for producing high-quality whole wheat bread from the noodle wheat “Kitahonami”.
報文
  • 相馬 さやか, 金岡 正裕, 中村 誠, 田中 賢二
    2013 年 60 巻 6 号 p. 270-277
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    冷蔵保管中に亜硝酸根値が上昇したたらこより,亜硝酸生成菌を11株分離した.16SrDNA遺伝子による相同性検索の結果,それらの一部はVibrio rumoiensisHalomonas marinaCobetia属と非常に高い相同性を示した.また亜硝酸生成能力が異なる3株について,亜硝酸生成に最適な培養条件を検討した結果,培養温度20~30℃,塩分3~5 %が適していた.上記3株をたらこおよび辛子明太子に接種した再現試験の結果,Vibrio属に属する菌株No. 19接種区で亜硝酸根値の増大が確認された.一方,辛子明太子の各原料について細菌数と硝酸根値の測定を行なったところ,検査した輸入原卵全てから亜硝酸生成菌が検出され,原料によっては1 gあたりCFUで平均340個もの亜硝酸生成菌が検出された.また,原卵を除く全ての原料から硝酸根が検出され,とくに唐辛子は220 ppmもの硝酸根を含有することが分かった.以上の結果より,たらこおよび辛子明太子の冷蔵保管に見られる亜硝酸根値の上昇は,原卵に付着していた低温性の亜硝酸生成菌が他の原料に由来する硝酸イオンを還元することが原因である可能性が示唆された.従って今後,工程中に亜硝酸が生成するリスクの軽減として,原料の洗浄,環境の清掃,使用する原料や食品添加物の硝酸値チェック,レシピの見直しなどが重要になるものと考えられる.
  • 伊藤 良一, 杉谷 政則, 稲垣 宏之, 瀬戸口 裕子, 内田 裕子, 伊藤 建比古
    2013 年 60 巻 6 号 p. 278-285
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    低タンパク食の継続摂取により,コラーゲン合成が低下し老化状態に類似したモデル動物が得られることが報告されている.今回加齢モデル動物でのコラーゲンペプチドの有効性を検討するために,タンパク含有率6 % の低タンパク飼料を3週間与えたWistar系の雄ラットにホルマリン濾紙法により皮下肉芽組織形成を誘導し,コラーゲンペプチドの経口投与が肉芽組織コラーゲン量の増加に及ぼす影響を検討した.また,他の食品由来ペプチド,タンパクの作用とも比較した.次の結果が得られた.
    (1)低用量群0.2 g/k体重,中用量群1.0 g/kg体重,高用量群5.0 g/kg体重のコラーゲンペプチドおよび対照群として水を7日間経口投与した.その結果,肉芽組織湿重量の濃度依存的な増加がみられた.また肉芽組織中に含まれるHYP量は肉芽組織湿重量と正の相関(相関係数0.837)を示した.
    (2)コラーゲン線維を特異的に染色するシリウスレッド染色により組織画像解析を行った.画像デジタル処理により肉芽組織の量,コラーゲン線維の密度,コラーゲン線維の量を求めたところ肉芽組織の量,コラーゲン線維の密度はコラーゲンペプチド摂取によって増加傾向が見られ,同じくコラーゲン線維の量に関しては有意に増加が認められた.
    (3)コラーゲンペプチド,カゼインペプチド,大豆ペプチド,乳タンパクをタンパク濃度1.0 g/kg体重となるよう経口投与し対照群と比較した.タンパク源投与群全ての群で肉芽組織湿重量の増加が認められた.特に,肩甲骨の肉芽組織湿重量はコラーゲンペプチドおよびカゼインペプチドで有意な上昇がみられた.仙骨両側の肉芽組織湿重量も肩甲骨の肉芽組織と同じくタンパク源投与群全ての群で湿重量の増加傾向が示されたが,有意差はコラーゲンペプチドのみみられた.肉芽組織中の水分含率に差はみられなかった.肉芽組織中に含まれるHYP量については肉芽組織湿重量と同様の傾向を示し,コラーゲンペプチド摂取によるHYP量増加が有意差をもって確認された.その他のタンパク源についても増加が示されたが,対照群と比較して有意な差ではなかった.
    これらの結果より,加齢モデルラットにおけるコラーゲンペプチドの経口投与は肉芽組織でコラーゲン量を濃度依存的に増加することが示された.また,ペプチド,タンパクの投与は種類に関わらず肉芽組織湿重量を増加させたが,本実験においてHYP量の増加とあわせて有意差が認められたのはコラーゲンペプチドのみで,組織コラーゲン量の増加におけるコラーゲンペプチドの優位性が示唆された.
  • 鷲家 勇紀, 西川 友章, 藤野 槌美
    2013 年 60 巻 6 号 p. 286-294
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    市販のコーヒー焙煎豆は,通常エージング処理が施されている.エージング処理によるコーヒー抽出液中の揮発性成分量の変化を検証した結果,多くの成分に減少が認められた.マウスに,エージング処理時間の異なる焙煎豆の抽出液を投与したところ,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆に最も高い腸管IgA産生増強効果が認められた.関与する成分は2-methylpyrazine,2,5-dimethylpyrazine,2,6-dimethylpyrazineの3成分であり,何れもエージング処理時間の経過と共に減少する成分であった.以上の結果から,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆は,腸管IgA産生増強効果を有することが分かった.またエージング処理は焙煎豆中の有効成分の減少を招き,腸管IgA産生増強効果を弱めることが分かった.
  • 勝見 直行, 石川 豊, 北澤 裕明, 遠藤 昌幸, 鬼島 直子, 安達 あい
    2013 年 60 巻 6 号 p. 295-300
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    市販されているエダマメのMA包装の現状を調査するとともに,微細孔フィルムを用いて最適な包装条件について検討した.
    (1)市販されている5種のエダマメについて調査したところ,袋の加工は微細孔,有孔包装,孔加工なしのものなどで,袋内酸素濃度は9.3~19.7 %までさまざまであり,4種については十分なMA効果が期待されるレベルにあるとはいえなかった.
    (2)3種の市販品の袋の酸素透過度とエダマメの酸素消費速度から袋内の酸素濃度についてシミュレーションを行ったところ,5℃における平衡酸素濃度は14.0~17.2 %であり,また20℃では平衡酸素濃度は10.7 %付近に低下することが示された.
    (3)袋当たりの微細孔の数を0~4個に調製したところ,袋内のガス濃度は,微細孔なし(0個)の場合には極端な低酸素濃度となり5℃保存1週間目の時点で異臭が発生したが,微細孔1~2個程度で鮮度保持に十分な低酸素,高二酸化炭素濃度となり,また異臭の発生も確認されなかった.
    (4)生およびゆでエダマメの子実の色調・硬度を測定した結果,硬度については試験区間の差はみられなかったが,色調については微細孔の数が少ないほどより緑色の保持につながった.
技術論文
  • 沖 智之, 菅原 晃美, 古川(佐藤) 麻紀, 須田 郁夫
    2013 年 60 巻 6 号 p. 301-309
    発行日: 2013/06/15
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    豆類中の総プロアントシアニジンを定量するために,DMAC法にもとづく96穴プレートを用いた方法の最適化を行った.本法での添加回収率は,プロアントシアニジン当量で1.0,2.0,4.2 mg/gの黒大豆種皮抽出物を大豆粉砕試料に添加した場合,96.1~97.9 %であった.8種の異なる豆類について,2反復の測定を異なる3日間で行った結果,併行相対標準偏差(RSDr)と中間再現性相対標準偏差(RSDint)が,それぞれ0.5~4.1 %,0.9~4.7 %の範囲であり,本研究で提案された分析法は良好な室内再現性を示した.DMAC法で定量した59試料の黒大豆中の総プロアントシアニジン含量は0.33~2.97 mg/gの範囲であり,バニリン硫酸法での定量値と高い相関を示した.しかしながら,バニリン硫酸法による定量値は,59試料のほぼすべての試料において,DMAC法での定量値より高く,両分析法による定量値を直接比較する場合には,留意すべきである.
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