日本食品科学工学会誌
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52 巻, 7 号
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総説
報文
  • 肥後 温子, 和田 淑子
    2005 年 52 巻 7 号 p. 297-305
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    低水分のクッキー様生地と吸湿市販菓子を加熱することにより, マイクロ波加熱による破断物性の特徴を調べ, 変化要因を検討した.
    1. マイクロ波焼成品はオーブン焼成品に比べて破断エネルギーが3倍前後増大し, 生地の含水率が約10~20%高いオーブン焼成品の破断物性値と近似した. 官能検査の結果でも, マイクロ波焼成品は硬い, もろくない, かみ砕きにくい, 歯ごたえがあるなどの項目で, オーブン焼成品と明らかに異なることが示された.
    2. 破断物性値と糊化関連値 (膨潤度, デンプン溶出率, α化度) との間には高い正の相関が認められ, 硬化要因として糊状物質の充填補強効果が示唆された.
    3. マイクロ波焼成品は含水率15%前後の吸湿試料においても, 糊化が開始され, 破断物性値が増加することがわかった.
    低水分域での昇温速度が速く, 試料内部が高温になるマイクロ波加熱特有の昇温特性が, 物性変化を加速すると考えられる. しかし, この現象が起きる要因として, 自由水の一時的な増加などの水の状態変化を考慮しないと説明できない部分が多い.
  • 福井 敬一, 松ヶ野 一郷, 寺原 典彦, 松井 利郎, 松本 清
    2005 年 52 巻 7 号 p. 306-310
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    紫かんしょ色素 (PSP) を弱酸性下で加熱し, 主要アシル化アントシアニンのうち, YGM-5bからの3―位糖鎖フラグメントである6-O-Caffeoylsophorose (CS) の生成量を測定した. 温度, 酸の種類及びpHを変えて加熱し, CSの最大濃度が得られる加熱時間及び量的な生成効率を比較した.
    CS濃度は, 130℃までの加熱では加熱温度が高いほど短時間で最大値に達したが, 量的な生成効率は変わらなかった. 一方, 酸の種類による影響は少なく, pHによって得られるCSの最大濃度が異なっていた. pH3.0が最も高いCSの最大濃度が得られ, pH2.0及びpH4.0では低下した. 酸の種類では, 酢酸を用いることが量及び安定性の点で優れていた.
    以上の結果から, 紫かんしょ色素からのCS産生の条件として, 酢酸水溶液を用いてpH3.0とし, 120℃, 2時間の加熱処理が最適であると考えられた.
技術論文
  • 植村 寿一, 宮原 晃義, 松本 力, 伊藤 敞敏, 櫻井 英敏
    2005 年 52 巻 7 号 p. 311-314
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    凍結肉の低温解凍は長時間を要し, 解凍後の肉質の劣化や復元性などが検討事項となる. 本報は電場付与による氷と凍結肉の解凍時間の短縮, ならびに解凍肉の性状への影響について氷とモデル化した凍結豚ロース肉を用いて検討した. 解凍法は電極間解凍法により針状電極と平板電極との間に試料を置き5, 10および12kVの電圧を印加して電場を発生させた.
    電場付与による解凍時間の短縮は, 氷の解凍率では電圧10kVおよび12kVでそれぞれ25.1%, 28.8%と高い解凍率を示し, 解凍促進効果がみられた. モデル化した凍結ブロック豚ロース肉 (20×20×20mm) の解凍時間は対照区が86分に対し10kVでは62分, 12kVでは30分で解凍した. 凍結薄切豚ロース肉 (20×50×100mm) の解凍時間は5kVでは337分, 10kVでは168分, 12kVでは165分となり, 電圧10, 12kVで対照区の約1/2の時間で解凍が終了した.
    電場付与による氷の融解水のpH低下は電圧10kVで0.39, 12kVで0.89低下した. pHの低下は放電によって窒素酸化物などが生成され, それが融解水に溶解したことが原因と考えられる.
    電場を付与した解凍肉の性状において, 肉の色調, pH, 水分含量, 保水性およびドリップ量の変化は電場付与による影響は確認できなかった.
研究ノート
  • 猶原 順
    2005 年 52 巻 7 号 p. 315-318
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    3%塩化ナトリウム水溶液を無隔膜電極により電気分解し, 酸化剤 (次亜塩素酸, 二酸化塩素, オゾン, ヒドロキシルラジカル等) を生成する装置 (MIOX) を用いてMIOX溶液を作成し, そのカット野菜 (キャベツ, レタス, ニンジン, キュウリ) 殺菌効果を検討した. その結果, 有効塩素濃度20mg/lのMIOX溶液は, 同有効塩素濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液と同等の殺菌力を示した. 有効塩素濃度20mg/lのMIOX溶液に5分間カット野菜を浸漬すると, キャベツ, レタス, ニンジンは3logCFU/g以上の生菌数の減少が見られた. キュウリの生菌数の減少は2logCFU/gと他のものより小さかった. 有効塩素濃度20mg/lのMIOX処理によりいずれのカット野菜も105CFU/g以下となった.
  • 伊藤 智広, 伊藤 裕子, 樋廻 博重, 勝崎 裕隆, 今井 邦雄, 古市 幸生, 小宮 孝志
    2005 年 52 巻 7 号 p. 319-323
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    アズキ熱水抽出物からヒト胃ガン細胞KATO III細胞の増殖を抑制する物質を単離した. 本物質をFT-IR, 1H-NMR, 13C-NMR, DEPT, COSY, NOE, HSQC, HMBC, ESI-MS, APCI-MSにより構造解析したところ, 新規セスキテルペノイド配糖体であったことから, Vignosideと命名した. Vignosideは低濃度ではヒト胃ガン細胞KATO III細胞の増殖を抑制しないが, 750μMでは約60%の増殖抑制効果を示した. その増殖抑制機構はアポトーシスによるものではないことが判った.
技術用語解説
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