日本食品科学工学会誌
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54 巻, 5 号
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報文
  • 志村 晃一, 平澤 マキ, 清水 章子, 矢口 行雄, 村 清司, 徳江 千代子, 荒井 綜一
    2007 年 54 巻 5 号 p. 205-208
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    分画分子量20万の限外ろ過膜により,仙草多糖類を分画,洗浄を繰り返すことで,破断強度や弾性率および粘性率が増加することが認められ,より粘性のある硬いゲルが形成された.また電子顕微鏡によるゲル組織の観察によると,タピオカデンプンのみで作成したゲルの持つ網目構造と比較すると,HTPで作成したゲルはより細かな網目構造が全体に広がっていた.また,限外濾過による処理数を増加することにより,部分的に密な状態である組織が観察された.先ほど述べた,限外濾過による処理を繰り返すことによりゲルが強化されることと,ゲル組織が部分的に密な状態になることと相関関係があると考えられた.
技術論文
  • 川崎 晋, 山庄司 志朗, 浅川 篤, 川崎 友美, 田中 孝, 上門 英明, 川本 伸一
    2007 年 54 巻 5 号 p. 209-214
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    化学発光法による微生物検出法を用いて牛乳中の大腸菌群迅速検査法への応用の可能性を検討したところ以下の知見を得た.
    (1)大腸菌群選択培地として一般的に使用されているBGLB培地中であっても化学発光による計測は可能であり,105~104CFU/mlの検出感度であった.
    (2)代表的な大腸菌群を用いて市販牛乳への添加回収試験を行ったところ,BGLB培地で18時間の培養後,化学発光測定により1CFUの接種菌を検出できた.
    (3)自然汚染を想定して生乳を用いた添加回収試験を試みた結果,BGLB発酵管により48時間培養で大腸菌群陽性と得られたサンプルは,18時間培養で化学発光法により検出可能であった.
  • 平良 淳誠, 大見 のり子, 上地 邦彦
    2007 年 54 巻 5 号 p. 215-221
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    沖縄産カンショ茎葉の利用に向けて,16品種系統の葉,葉柄,茎の部位別の葉酸およびポリフェノール含量を測定した.‘沖縄100号’を除く全ての品種で葉と葉柄の可食部の葉酸とポリフェノールは,ホウレンソウ同様に高含量であった.‘宮農36号’の葉酸含量は他の品種に比べて高かった.ポリフェノール含量は‘春こがね’に多く含まれ,‘おきひかり’と‘アヤムラサキ’の含量は,他の品種に比べて比較的少なかった.‘備瀬’の葉酸含量は夏に含量が増加した.また,‘備瀬’と‘沖夢紫’のポリフェノール含量は春の収穫に比べて夏で2~3倍程度増加した.
    沖縄の主要耕作土壌(ジャーガル,島尻マージ,国頭マージ)で栽培したカンショ茎葉に含まれる葉酸およびポリフェノール含量は,一部の品種を除き島尻マージで栽培したカンショに含量が多い傾向にあり,最適土壌であることも明らかとなった.
    本研究で得られた結果は,カンショ茎葉が夏場の野菜収量不足になりがちな沖縄県の夏野菜としての利用や加工食品素材となる可能性を示唆した.また,品種の選択および栽培条件を検討していく上で,重要な基礎的データとなった.
  • 朝田 仁, 鈴木 寛一
    2007 年 54 巻 5 号 p. 222-228
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    化工澱粉糊化液にずり応力を負荷すると,ずり応力に依存して流動性が増加あるいは減少する流動挙動が確認された.この原因を化工澱粉の糊化とずり応力負荷に伴う澱粉粒子の膨潤の面から考察するために,市販のリン酸架橋度の異なる化工澱粉を使用し,これらの糊化液の濃度やずり応力負荷時の流動性,みかけ粘度,糊化澱粉粒子径,粒度分布を測定した.
    ずり応力負荷によって糊化液の流動性が増加する挙動は,負荷ずり応力によって膨潤澱粉粒子が崩壊して,糊化澱粉粒子径が小さくなることで,みかけ粘度が低下することが確認された.この澱粉粒子が負荷ずり応力で崩壊する現象は,低リン酸架橋度で高濃度の糊化液で見られた.逆に,流動性が減少する挙動は,負荷ずり応力の増加に伴って糊化粒子が再膨潤して粒子径が増大することで,みかけ粘度が発現して起こった.この流動性減少挙動は,高リン酸架橋の高濃度糊化液で認められた.
研究ノート
  • 小嶋 道之, 西 繁典, 齋藤 優介, 弘中 和憲, 小疇 浩, 前田 龍一郎
    2007 年 54 巻 5 号 p. 229-232
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    高脂肪食餌と同時に小豆ポリフェノール(APP)飲料を7週間与えた雌マウスの肝臓障害はほとんど認められず,糞重量にもコントロールとの差は認められなかった.しかし,APP飲料を7週間与えた雌マウスの体重は,コントロールよりも有意に低く,特に卵巣周囲の脂肪重量が顕著に低かった.また,APP飲料を与えた雌マウスの糞に含まれる脂肪含量がコントロールよりも有意に高く,糞中への脂肪排泄が示された.また,in vitro実験により,APPの濃度に依存した膵リパーゼ活性の抑制作用が認められ,活性阻害のIC50は38.0ppmであった.これらの結果より,長期間,高脂肪食餌と同時にAPP飲料を雌マウスに与えると,APPが膵リパーゼ活性を抑制することにより食餌性脂肪の消化・吸収を抑制し,脂肪が糞中に排泄されて,体重増加の抑制が起きていると推定した.
  • 中村 澄子, 鈴木 啓太郎, 原口 和朋, 大坪 研一
    2007 年 54 巻 5 号 p. 233-236
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    (1)清酒におけるPCR用鋳型DNAの抽出精製方法(各種清酒を凍結乾燥し,この粉末試料を酵素処理し,回収した沈殿から70%エタノールを用いDNAを溶出させると同時に,色素成分を除去する.)を開発し,適正なプライマー共存下のPCRによって増幅した清酒のDNAの塩基配列を決定した結果,原料米の塩基配列と一致し,原料米に由来するものであることが確認できた.
    (2)山田錦,五百万石,美山錦および雄町を原料酒米とする清酒において,麹菌,酵母由来のDNAでは増幅せず,原料酒米にのみ増幅する品種判別に有望な3個のPCR用プライマー(A7,B43,NG4)を開発した.
  • 工藤 重光, 伊藤 聖子, 内山 大史, 加藤 陽治, 高垣 啓一
    2007 年 54 巻 5 号 p. 237-240
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    サケ鼻軟骨由来PGと各種金属との結合に関して検討を行い以下の結果を得た.
    (1)PGは,不溶性FePO4のFe3+と結合し,可溶化する可能性が示唆された.
    (2)PGは,同一質量濃度でXGおよびPSよりもFe3+に対してより強い親和性を示した.
    (3)Fe3+は,PGと結合して不溶性複合体を形成したが,Fe2+は,PGと結合しなかった.
    (4)PGと二価陽イオン(Mg2+, Cd2+, Pb2+, Ca2+, Zn2+)は結合しないか,または,弱い結合であった.
  • 柘植 圭介, 渡部 弥生, 前田 徳秀, 阿部 真一, 鶴橋 亨, 吉村 臣史, 吉木 政弘, 立花 宏文, 山田 耕路
    2007 年 54 巻 5 号 p. 241-246
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    種々のがん細胞株の増殖に及ぼすスサビノリ水溶性低分子画分(WS-LMF)の影響について検討し,ヒト白血病細胞株HL-60およびマウス黒色腫細胞株B16細胞に対して増殖抑制効果を発現することを見いだした.WS-LMFは培地中の濃度15μg/mL以上で濃度依存的にHL-60細胞の増殖を抑制し,1000μg/mLの高濃度では細胞毒性を示した.
    WS-LMF中の細胞増殖抑制作用は,メタノール可溶性画分と不溶性画分の両方に認められ,その効果はメタノール不溶性画分により強く認められた.これらの結果は,WS-LMF中には性質の異なる複数のHL-60細胞増殖抑制因子が含まれることを示唆していた.
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