玄麦,焙煎大麦,麦茶の化学成分について検討した.
(1) 焙煎処理で玄麦中のタンパク質と繊維含有割合は減少したが,エチルエーテル抽出物の割合は高くなった.焙煎大麦から得た熱水抽出物(麦茶,凍結乾燥物)中のタンパク質量は焙煎大麦中のタンパク質含有割合と同じであった.エチルエーテル抽出物と繊維の含有割合は麦茶で高く,逆に灰分とカルシウムの含有割合は麦茶で低い.
(2) 玄麦や焙煎大麦の脂質クラスでは,トリアシルグリセロールの占める割合が高いのに対し麦茶では低い.一方,麦茶では,遊離脂肪酸,ジおよびモノアシルグリセロール,ステロール,極性脂質の占める割合が高い.
(3) エチルエーテル抽出物の脂肪酸組成は,玄麦と焙煎大麦では組成に大差はないが,わずかに焙煎大麦の方がリノール酸とα-リノレン酸の割合は低い.麦茶では,リノール酸の占める割合が低く,玄麦や焙煎大麦の約1/2である.一方,パルミチン酸,パルミトレイン酸,オレイン酸の割合は麦茶で高い.
(4) トコフェロール組成では,玄麦,焙煎大麦,麦茶のいずれもトコトリエノールとβ-トコフェロールの占める割合が高い.トコフェロール含量は玄麦に比べ,焙煎大麦と麦茶で低い.
(5) 麦茶と緑茶の酢酸エチル分画物は280nm付近のにUV極大吸収がみられ,バナバ茶は268nm,柿の葉茶は274nm付近に極大吸収がみられた.
(6) HPLCクロマトグラムのパターンは,麦茶,緑茶,バナバ茶,柿の葉茶のいずれも異なり,緑茶はピーク数が少なく,カテキン類が主であった.麦茶,バナバ茶,柿の葉茶のいずれにも没食子酸,カテコール,ゲンチシン酸が認められ,バナバ茶にはルテリオンとアピゲニンの存在が推測された.柿の葉茶にはタンニンやその重合物と思われるピークが多数みられた.
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