日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
63 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • (平成27年度日本食品科学工学会奨励賞)
    桝田 哲哉
    2016 年 63 巻 11 号 p. 499-509
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    Many low-molecular weight molecules, including amino acids, saccharides, polyols, peptides, and synthetic compounds, are well known to elicit the sensation of sweetness, whereas most proteins are tasteless and flavorless. However, some proteins do elicit a sweet taste response on the human palate. Sweet-tasting proteins have potential as low-calorie sweeteners and as substitutes for sucrose for industrial applications, and could be useful in clarifying the mechanisms by which we perceive a sweet taste. However, despite a number of investigations assessing the relationship between sweetness and the structures of sweet-tasting proteins, no common feature has been identified in either their tertiary structures or amino acid sequences. However, most sweet-tasting proteins are basic and have high isoelectric points. Here, we first review site-directed mutagenesis and chemical modification studies on the charged residues of thaumatin and lysozyme. Efforts to increase the production yield of recombinant lysozyme and thaumatin from the yeast Pichia pastoris are then described. We conclude by introducing our recent investigations into the atomic-resolution structural analysis of thaumatin, and a cell-based assay using sweet taste receptors.

報文
  • 海野 知紀, 駒込 乃莉子, 小野 かお里, 高田 ひかり, 藤田 倫子, 守屋 知穂, 小原 亜希子
    2016 年 63 巻 11 号 p. 510-515
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    ラットの腸内細菌叢および盲腸内容物の短鎖脂肪酸含量に及ぼす大麦若葉搾汁末の影響を検討した.予備飼育後,ラットを3群に分け,コントロール食,2% (w/w)大麦若葉搾汁末を含む食餌,10% (w/w)大麦若葉搾汁末を含む食餌で4週間飼育した.その結果,コントロール食群と比較して10%大麦若葉群では盲腸内容物重量と短鎖脂肪酸量が有意に増加した.また,糞中16S rRNA遺伝子の解析より,大麦若葉搾汁末の配合量依存的にPrevotellaの占有率が増加した.以上より,大麦若葉搾汁末の食餌投与は,腸内細菌の組成に変化を及ぼすとともに,盲腸代謝物である短鎖脂肪酸の生成に影響することが示唆された.

  • 植村 邦彦, 高橋 千栄子, 金房 純代, 小林 功
    2016 年 63 巻 11 号 p. 516-519
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    0.75MPaの圧力下で4秒間の連続通電加熱することにより98℃まで味噌を昇温させた結果,味噌に添加した枯草菌を2.7対数減少させることが分かった.一方,100℃60分の通常加熱では,枯草菌芽胞は1.6対数しか減少しなかった.このとき,通電加熱前後では味噌の色変化が認められなかったのに対し,温浴加熱では褐変が認められ,明度が20ポイント低下した.したがって,連続通電加熱は,味噌を褐変することなく,味噌の中の枯草菌芽胞のような耐熱性細菌を失活可能なことが分かった.本研究で用いたモーノポンプは吐出圧の制限のため内圧を0.75MPa以上とすることができなかったが,吐出圧のさらに大きなポンプを利用することにより,味噌の温度を100℃以上に安定的に昇温できれば,さらに耐熱細菌の殺菌効果を高めることが可能になると考えられる.本研究で用いた連続通電加熱装置と同等の装置は既にフロンティアエンジニアリングから市販されており,実用規模のスケールアップは実現可能である.

  • 中山 素一, 島谷 佳奈果, 斎藤 和広, 佐藤 惇, 園田 拓三, 宮本 敬久
    2016 年 63 巻 11 号 p. 520-528
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    高温菌A. acidocaldariusおよび環境·原料から分離したその近縁菌について,酸性飲料における増殖性を評価した.高温菌A. acidocaldariusおよび近縁菌は,200〜300mOsm程度の低浸透圧であるスポーツドリンクにおいては,製品によっては40℃において増殖し風味を劣化させたことから,飲料に混入した際は汚染事故を起こす可能性が有ることが明らかとなった.本菌群においては果汁が増殖因子となることから,低浸透圧の飲料の中でも特に果汁入りスポーツドリンクでの増殖の可能性が高いと考えられた.高浸透圧である市販の果汁飲料においては添加されているアスコルビン酸により制御が可能であることが示唆された.しかしながら,高浸透圧の果汁飲料においてもアスコルビン酸の濃度が低い飲料については増殖の可能性を評価する必要が有ると考えられた.また,これらの菌は環境や原料からの分離頻度が高く,高い耐熱性を有する芽胞を形成し,更には現行の酸性飲料で用いられている加熱殺菌条件で殺滅することが困難であることから,飲料中での増殖の可能性を見極め,高温菌A. acidocaldariusおよび近縁菌に対応するためには製造工程中のフィルター除菌や,原料の選別等の対策が必要であると考えられた.

技術論文
  • 原田 恭行, 小善 圭一, 横井 健二, 里見 正隆
    2016 年 63 巻 11 号 p. 529-537
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    魚味噌仕込み時にクエン酸を添加することにより,魚味噌中のヒスタミン蓄積抑制を試みた.また,クエン酸の添加時期が魚味噌中のヒスタミン蓄積抑制効果に及ぼす影響と,魚味噌の呈味性に及ぼす影響をそれぞれ検討した.その結果,終濃度0.6%のクエン酸添加がヒスタミン生成菌の増殖を顕著に抑制し,ヒスタミンの生成を抑制した.このため,ヒスタミンの蓄積抑制効果は,クエン酸の添加時期が早いほどが大きかった.また,クエン酸の添加は,好塩菌の増殖にも抑制効果を示し,好塩菌の代謝による乳酸や酢酸等の生成を減少させた.このため,呈味性への影響は,クエン酸の添加時期が早いほど酸味を弱め,かつ旨味の変化も小さかった.これらのことから,魚味噌熟成中のヒスタミンの蓄積を抑制するには,仕込み直後にクエン酸を添加することが望ましいと考えられた.

  • 百瀬 晶子, 池羽田 晶文, 上平 安紘, 三浦 理代
    2016 年 63 巻 11 号 p. 538-544
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    (1)日本食の主食である米飯との組合せにより,GIを低下させるような副菜の検討を行った.副菜である検査食品は植物性食品5種類(こまつな,キャベツ,トマト,だいず,ながいも)を供試し,全てにおいて平均GIは100以下となった.特にながいもの検査食では,基準食に比べ摂取開始2時間の最高血糖値,血糖上昇曲線下面積(IAUC)共に顕著に低値を示した.これについて,ながいもの粘性物質マンナンが胃からの排出を遅延させ,食後血糖上昇抑制に関与したものと推察された.

    (2)検査食品中の成分とGI低下との関連を検討するため,総ポリフェノール量と食物繊維量を分析した.これらの成分含量とGIとの間に有意な相関は認められず,検査食品中のその他の成分や糖質構成による影響が複合的に作用したものと考えられた.

    (3) GI測定に応用可能な非侵襲血糖測定法の確立を目指し,負荷試験中のSMBGと近赤外スペクトルの相関について検討した.血糖値変化量と吸光度変化量の相関係数が0.6以上となる波長は約95%の負荷試験において確認された.波長は負荷試験ごとに変動するものの,単回帰分析により算出した推定血糖変化量から求めたIAUC およびGIは,SMBGによる血糖実測値に基づく結果を良く再現していた.

研究ノート
  • 山元 裕太, 大薗 紅葉, 大石 智博, 大島 賢治, 満生 慎二, 柿原 秀己, 迎 勝也
    2016 年 63 巻 11 号 p. 545-549
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/12/23
    ジャーナル フリー

    養殖ヒトエグサから得られた硫酸化多糖であるラムナン硫酸のヒアルロニダーゼ阻害活性を,異なる濃度(0.1〜0.2mg/mL)のラムナン硫酸を用いて調べた.その結果,ラムナン硫酸はヒアルロニダーゼ阻害活性を示し,その阻害率は濃度上昇と共に増加した.さらに,他のヒアルロニダーゼ阻害試験により,硫酸化多糖であるフコイダン,ポルフィラン,κ-カラギーナン,λ-カラギーナンおよびラムナン硫酸の硫酸基含有率とヒアルロニダーゼ阻害率の関係を調べた.ヒアルロニダーゼ阻害活性率は硫酸化多糖の硫酸基含有率の上昇に伴い増加する傾向を示し,ヒアルロニダーゼ阻害活性と硫酸化多糖の硫酸基との間に強い関連性があることが示唆された.

feedback
Top