日本食品科学工学会誌
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57 巻, 11 号
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総説
  • 高橋 仁, 柴田 智, 田口 隆信, 岩野 君夫, 小林 忠彦
    2010 年 57 巻 11 号 p. 447-455
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    We developed “Akita-sake-komachi”, which is the rice cultivar suitable for brewing. The refined sake produced from “Akita-sake-komachi” is characterized by the taste of refined sweetness and a light finish. We tried to make “Akita-sake-komachi” local branding. In order to make “Akita-sake-komachi” of high quality, we developed a cultivation method, which enabled us to get grains with low protein content, low expression of white-berry and less crack. Since the protein of “Akita-sake-komachi” had little glutelin, it was recognized that the peptidase activity of koji (malted rice) was stronger, but that there was little amino acid generation from the steamed rice. To develop a new type of sake of “junmai-shu” using the property of “Akita-sake-komachi”, the Aspergillus oryzaeGin-aji” was selected. The peptidase activity of the koji used by “Gin-aji” was less with “Akita-sake-komachi”. And the yeast “Akita-kobo No. 12 and No. 15” were selected for producing the “Junmai-shu” which fit to “Akita-sake-komachi” and the Aspergillus oryzaeGin-aji”, and we commercialized “Akita-sake-komachi” brand “junmai-shu”. Accodring to the result, the product amount of the rice “Akita-sake-komachi” increased to about 2 times (2009/2005), and the shipment amount of the “Akita-sake-komachi” brand sake increased to (2009/2005) more than 3 times.
報文
  • 榎 竜嗣, 大野木 宏, 小林 英二, 佐川 裕章
    2010 年 57 巻 11 号 p. 456-463
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    アシタバ中に豊富に含まれるカルコンである4HDによる抗糖尿病作用をさらに解析するために,すでに糖尿病を発症し高血糖を呈したKK-Ayマウスに投与することで血糖値低下作用がみられるかどうか,また,そのグルコース取り込み促進活性のカギとなる構造について種々のカルコンを用いて検討した.
    4HDは高血糖状態にあるKK-Ayマウスに対しても血糖値低下作用が認められた.インスリン抵抗性の病態を示す状態であっても効果が確認できたことより,インスリンとは異なる経路でグルコース取り込み促進作用を発揮し,血糖値の低下につながったことが示唆された.また,種々のカルコンによるグルコース取り込み促進活性を測定したところ,A環4′位がメトキシ基,3′位がプレニル基などの比較的大きな置換基であることが必須であることが示された.XA, 4HDについでアシタバ中に含有量の多いXA-Fについても,4HDと同等以上の活性が認められ,アシタバの抗糖尿病活性に貢献していることが示唆された.
  • 大田 昌樹, 入内島 斎, 野村 幸一郎, 佐藤 善之, 猪股 宏
    2010 年 57 巻 11 号 p. 464-471
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,未利用摘果みかん果皮を用いて超臨界抽出実験を行い,得られた抽出挙動に対して動的抽出モデルを適用することで希少天然成分の溶解度を推定することを目的とした.はじめに,溶解度データの報告例があるβ-カロテンを対象とし文献値との比較を行ったところ,推定した溶解度は文献値と良好に一致していた.続いて,これまでに溶解度データの報告のないα-カロテン,ノビレチンおよびタンゲレチンにおいて方法論を適用させ,これらの物質の溶解度を推定した.いずれの溶質においても推定した溶解度は,温度およびCO2密度に対する依存性を表現していた.以上より,β-カロテンの溶解度が文献値と一致したこと,また分子量が同じで二重結合の位置が異なるα-カロテンとβ-カロテンの溶解度がほぼ一致したことは,本モデルによる溶解度推定が妥当であることを示唆しており,希少天然成分に対して本推定法の有用性が示唆された.
  • 亀谷 宏美, 齊藤 希巳江, 菊地 正博, 小林 泰彦, 鵜飼 光子, 等々力 節子
    2010 年 57 巻 11 号 p. 472-478
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    ESR法は,信号強度が線量に依存して増大した.線量に対する信号強度すなわちラジカル量の増加率を検討することで検知法として利用できる可能性が示唆された.
    照射ニンニクのPSL測定により得られた発光増加量および発光積算量は,照射前の値より大きくなった.発光積算量を用いることで照射判別法として利用できる可能性が示唆された.50Gy以上の検知法を確立するとしても,今後,来歴の異なる複数ロットのニンニクについて測定を行い,非照射ニンニクと照射ニンニクの値の判別基準を設定することで実用化が可能であると考えた.
    TL法は照射処理直後および周年供給を想定した1年後の照射ニンニクでの検討を行った.貯蔵期間に関わらず発光極大温度は照射ニンニクで173~189℃,非照射ニンニクは284~301℃を示し,照射の判別が可能であった.狭い温度範囲(150~250℃)で算出したTL比により,照射の判別がより明確になることがわかった.TL法による照射ニンニクの検知は,TL比と発光極大温度により実用的な検知法として照射の有無の判別が可能であると結論した.
研究ノート
  • 三ッ井 陳雄, 村澤 久司, 関口 順一
    2010 年 57 巻 11 号 p. 479-482
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    納豆菌胞子を含まない納豆の開発および,胞子形成と納豆の品質の関係を明らかにするため,納豆菌胞子形成変異株であるspo0A, sigH, sigE, sigF, sigKおよびsigGの破壊株を用いて納豆を作製し評価した.その結果,胞子形成初期の変異株であるspo0AおよびsigHの各破壊株では菌膜の被り,糸引きが弱く,L-グルタミン酸含量も少なかった.しかし,胞子形成中期以降の変異株であるsigE, sigF, sigK, sigGの各破壊株では,L-グルタミン酸含量およびアンモニア含量の増加傾向がみられたが,官能評価では野生株との明確な差はみられなかった.これらの結果から,納豆製造には胞子形成の初期が重要であること,納豆菌胞子を含まない納豆を製造するためには,胞子形成が中期以降でストップする納豆菌変異株の利用が有効であることが示された.これらの変異株で作製した納豆は胞子を含まないので,胞子の汚染を避けたい加工食品工業で使用できる可能性がある.
  • 高山 侑樹, 稲益 和子, 横山 あゆ美, 西田 淑男, 古市 幸生
    2010 年 57 巻 11 号 p. 483-488
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,ニガイチゴ果実の成分組成および機能性について検討した.ニガイチゴはラズベリー,イチゴ(トチオトメ)と比較し,ビタミンC含量が少ない果実であった.総ポリフェノール含有量は,ニガイチゴ,ラズベリー,イチゴ(トチオトメ,サガホノカ,アキヒメ)がそれぞれ179.8, 108.7, 108.5, 94.8, 65.6mg/100gであり,イチゴの品種間で差が見られたが,ニガイチゴが最も高い値を示した.また,DPPHラジカル消去活性のIC50は,ニガイチゴが1.50,ラズベリーが2.31,トチオトメ,サガホノカ,アキヒメがそれぞれ2.32, 3.00, 4.25mg/mlであった.マルターゼ阻害では,予め吸着させたHP-20樹脂より40%エタノールで溶出した画分(40% EtEx)で最も強い作用を示した.正常ラットでのマルトース負荷試験でも,40% EtExを与えた群で血糖上昇が抑制された.これらのことから,ニガイチゴは抗酸化能が強く,血糖上昇抑制に有効な素材であることが示唆された.
  • 老田 茂
    2010 年 57 巻 11 号 p. 489-491
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    小麦単量体および二量体α-AIのエピトープの一つであるAVLRDCを含む13-merのペプチドを合成し,それを抗原とする抗ペプチド抗体を作製した.本抗体は,小麦単量体および二量体α-AIに対し,高い特異性を有した.小麦単量体・二量体α-AI,およびそれらのエピトープが,細菌B. licheniformisや放線菌S. griseus由来プロテアーゼによって分解されることが,イムノブロッティングとELISAで確認された.
技術用語解説
  • 田村 基
    2010 年 57 巻 11 号 p. 492-493
    発行日: 2010/11/15
    公開日: 2011/01/06
    ジャーナル フリー
    大豆に含まれる大豆イソフラボンは,種々の生活習慣病予防効果が期待されているフラボノイドの一種である.フラボノイドにはフラボノイド骨格のみからなるアグリコンとフラボノイド骨格に糖が結合したフラボノイド配糖体が存在する.ダイゼインやゲニステインはイソフラボンに属している.味噌や醤油などの大豆製品では,イソフラボンのアグリコンであるダイゼインやゲニステインの割合が多く,逆に,豆腐では,イソフラボン配糖体の割合が多いことが知られている.イソフラボンの一つであるダイジンからは,腸内フローラの代謝によってエクオール(Equol, エコールとも呼ぶ)を生成する(図1).腸内でイソフラボンから産生されるエクオールは,もとのイソフラボンよりもエストロゲン活性が強く,高機能性イソフラボン代謝物とみなされている.そのため,イソフラボンよりもエクオールの機能性の高さが注目されるようになってきている.エクオールは脂質代謝に影響すると考えられている.大豆加工食品を摂取したヒトの中で,エクオール濃度が高いヒトほど血中コレステロールおよび血中トリグリセリド低下効果が顕著であったことが報告されている.また,エクオールの癌予防効果が期待されている.乳癌リスクの低さとエクオール産生量の多さに相関があるという報告やエクオール濃度の高い男性では,前立腺癌のリスクが低い可能性があるといった報告がある.女性は閉経後に女性ホルモンの量が減少することや更年期において様々な障害が発生することが知られており,この更年期障害の緩和にエストロゲンを投与するエストロゲン療法が行われる場合もある.エクオールには弱いエストロゲン活性があるため,エクオールによる更年期障害予防効果や閉経後の骨粗鬆症予防効果が期待されている1).一方,エクオール産生性を有する腸内環境が健康機能を高めている可能性も示唆されている.しかし,エクオール産生能は,ヒトによって個人差が大きく,50~70%のヒトは,エクオール産生能が非常に弱いことが知られている.エクオール産生に関与する腸内フローラ(腸内細菌叢)の個々人の違いがこれらエクオール産生能の個人差を生み出していると考えられている.エクオール産生に関与する腸内フローラが,イソフラボン類の機能性発現を含めて生体内で重要な役割を担っていると考えられている.しかしながら,イソフラボン類の代謝変換に関与している具体的な食品成分についての情報はまだ乏しいのが現状である.このような現状に於いても,腸内でエクオールの産生を高める食品は新しい機能性食品(腸内フラボノイド代謝改善食品)としての魅力がある.エクオール産生を向上させる食品に関する研究が報告されている.この報告では,イソフラボンとフラクトオリゴ糖を同時に摂取させたラットのグループでは,イソフラボンのみを摂取したラットのグループよりも血漿エクオール濃度が有意に高く,フラクトオリゴ糖がラットのエクオール産生を向上させることが示唆されている.また,ヒトの調査では,肉食やお茶の摂取とエクオール産生性との相関が認められるとの報告があるが,エクオール産生性を顕著に高める食品成分はまだ見つかっていない.また,エクオール産生性の腸内細菌をエクオール非産生のヒトへ投与することで腸内でのエクオール産生性の向上が期待されるが,腸内細菌の中でエクオール産生性の菌種は非常に少ないと考えられている.内山らは,公的機関より購入したビフィズス菌29株(22菌種),乳酸桿菌184株(52菌種)を用いてダイゼインからのエクオール産生能を検討したところ,いずれの菌もエクオールを産生しないことを見出した2).しかし,内山らは,ヒトの糞便からエクオール産生性腸内細菌を見出し,この腸内細菌のヒトへの応用の可能性を論じている.ヒトの腸内でエクオール産生菌を増やしてやるとエクオールを産生できないヒトでもエクオール産生能力が得られることが推察される.現在,エクオール産生を高める食品の報告はほとんどなく,エクオール産生をヒトの腸内で高める機能性食品,腸内フラボノイド代謝改善食品の開発が期待されている3)
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