日本食品科学工学会誌
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62 巻, 11 号
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報文
  • 逢阪 江理, 田中 八壽子, 武士末 純夫, 開 俊夫, 西村 理子, 玉井 敬久
    2015 年 62 巻 11 号 p. 521-526
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    大麦の一種であるはだか麦(マンネンボシ)を使ったパンの開発を行った.はだか麦をピンミルにて粉砕し0.2mmの篩を通してはだか麦粉を調製し,その特性と製パン性についての評価を行った.製パン試験では,はだか麦粉をグルテンと8 : 2で混合し,製パン性を評価した.その結果,
    (1)はだか麦粉の特徴として,強力粉と比較して,粘度が高いこと,吸水量が多いことが挙げられた.また,これらの特性ははだか麦中の食物繊維に由来することが示唆された.
    (2)はだか麦粉とグルテンを用いて製パン試験をしたところ,はだか麦の製パン性を低下させる原因として食物繊維が考えられた.そこで,セルラーゼ(セルロシンAC40)を添加したところ,強力粉のパンと同様の比容積と柔らかさを持つパンを作製することが可能となった.
    (3)開発したはだか麦パンは食物繊維が小麦パンの約1.5倍含まれており,日常の食生活で食物繊維を取り入れる効果的な手段になることが分かった.
  • 辻井 良政, 風見 真千子, 後藤 元, 浅野目 謙之, 高野 克己
    2015 年 62 巻 11 号 p. 527-533
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    稲の登熟温度が低いと米胚乳中の澱粉および細胞壁分解酵素活性量が大きくなり,米飯食味に影響していることが示唆された.山形県産の3品種を用いて,2009∼2013年に生産された産地特定が可能な玄米サンプル139点の解析を行った.その結果,5年間の8種類の米胚乳中の酵素活性量の変動係数(標準偏差/平均値)は,0.466 (β-ガラクトシダーゼ)∼0.174 (β-グルカナーゼ)となり登熟温度により各酵素活性量に差異があった.登熟温度と米胚乳中の酵素活性量との間にはα-アミラーゼ(r=-0.749),β-アミラーゼ(r=-0.519)およびα-グルコシダーゼ(r=-0.730)と負の相関(p<0.05)が得られた.β-グルカナーゼ,α-マンノシダーゼおよびβ-キシラナーゼに関しても負の相関の傾向がみられた.すなわち,登熟温度が低いと米胚乳中の酵素活性量が大きいということが示唆された.各試験年に実施した食味官能値の総合値と米胚乳酵素活性量間には,α-アミラーゼr=0.392∼0.535)と4ヵ年で正の相関が得られ(p<0.05),最も高温障害が出た2010年も傾向がみられていた.α-マンノシダーゼ(r=0.162∼0.542)およびβ-グルカナーゼ(r=0.209∼0.495)とついで正の相関関係がみられた.これらの結果,食味官能値と米胚乳中の酵素活性量間には基本的に正の相関がみられ,活性量が大きいほど食味が良い傾向が示唆された.
  • 鷲家 勇紀, 西川 友章, 藤野 槌美
    2015 年 62 巻 11 号 p. 534-540
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    コーヒーの機能性に対するエージング処理の影響を明らかにするため,本試験ではマウスの血中サイトカイン量に対する影響を検証した.
    市販のコーヒー焙煎豆は,通常エージング処理が施されている.エージング処理によって,コーヒー抽出液中の多くの香気成分の減少が認められている.マウスにエージング処理時間の異なる焙煎豆抽出液を投与したところ,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆は血中IFN-γ,IL-2,及びIL-12に対し最も高い増加効果が認められた.IFN-γの増加には2種類の含硫化合物と3種類のketone類が,IL-2の増加には3種類の含硫化合物と2種類のpyrazine類が,およびIL-12の増加には4種類のpyrazine類がそれぞれ関与し,何れもエージング処理時間の経過と共に減少する成分であった.以上の結果から,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆抽出液は,血中のIFN-γ,IL-2,およびIL-12の増加効果を有することが分かった.またエージング処理は焙煎豆中の有効成分の減少を招き,血中のIFN-γ,IL-2,およびIL-12の増加効果を弱めることが分かった.
技術論文
  • 植村 邦彦, 高橋 千栄子, 小林 功
    2015 年 62 巻 11 号 p. 541-546
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    豆腐の周囲の水の初期温度を40°Cとし312 s間の短波帯処理により,豆腐中心部の温度を82°C,豆腐周辺部の温度を85°Cとほぼ均一に昇温可能なことが分かった.このとき,充填液の大腸菌を7桁および豆腐中心部の大腸菌を4桁以上低減した.一方,従来加熱処理で75°Cの温水に20分浸漬した場合は豆腐中心部の大腸菌を1桁しか低減することができなかった.
    また,短波帯処理と従来加熱処理が豆腐のゲル強度に与える影響は,短波帯処理では,処理温度に対するゲル強度の低下は認められなかったが,従来加熱法では,有意に破断強度が低下した.短波帯処理は従来加熱処理に比べて10°C高い温度まで加熱処理しているが,豆腐表面が高温になっている時間が短いことから,豆腐の表面の熱変性が小さく,破断強度の低下が抑えられたものと考えられる.プラスチック包装した豆腐の加熱処理に短波帯処理を応用することにより,短時間の処理で,固形物内部に侵入した細菌の殺菌効果を高め,製品の品質を向上できることが分かった.本技術は,豆腐以外のプラスチック包装された固形食品に全般に応用することが可能であり,今後の応用展開が期待される.実用化に向けた今後の課題としては,短波帯電源や整合回路の低価格化と短波帯交流の変換効率の向上が必要である.
  • 山田 大樹, 伊勢木 智行, 井上 俊逸, 吉野 信次, 坪井 一将, 村山 大樹, デニス· サンチャゴ, 小疇 浩, 山内 宏昭
    2015 年 62 巻 11 号 p. 547-554
    発行日: 2015/11/15
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    湯種製法で製パンしたパンにおける湯種製造中に糊化した小麦澱粉の製パン性に及ぼす影響について,凍結乾燥グルテンと小麦澱粉で調製した疑似湯種を用いて検討を行った.その結果,疑似湯種中の糊化した小麦澱粉は,GP,GRD,SLVをコントロールに比べて有意に低下させ,擬似湯種中の小麦澱粉の糊化度とGRD,SLVとの間には非常に高い負の相関があることが判った.これより,湯種中の糊化小麦澱粉は生地の製パン性を低下させる主要因であり,湯種パンの外観,色相の特徴であるクラストのL*の低下とケービングに対しても,大きく影響していることが明らかになった.
    さらに,糊化した小麦澱粉を製パンに用いることによって,得られたパンの水分含量と保水性が増加し,それによりパン中の澱粉の老化が抑制され,保存中のパンクラムの老化を抑制できることが明らかになった.
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