日本食品科学工学会誌
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63 巻, 1 号
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報文
  • 守田 愛梨, 荒木 徹也, 池上 翔馬, 岳上 美紗子, 住 正宏, 上田 玲子, 相良 泰行
    2016 年 63 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/01
    ジャーナル フリー
    チェダーチーズを対象として,ステップワイズPLS-VIPとANNを直列に組み合わせた解析手法を提唱して,機器計測で得られた粘弾性パラメータと香気成分をデータベースとした品質特性パラメータと分析型官能評価スコアまたは嗜好度との相互関係を応答曲面で表示可能な品質評価モデルを構築した.
    まず,食感に関する品質特性として,破断,クリープおよびテクスチャの3試験法により17項目の粘弾性パラメータを測定した.次に,フレーバーに関する品質特性として,GC-O分析により43項目の香気成分を同定した.他方,日本人によるチェダーチーズ評価のための官能評価用語38語を選定し,これらを用いた分析型パネルによる官能評価および消費者による嗜好度調査を実施した.
    粘弾性と香気成分をデータセットとしたPLS回帰分析を用いて,官能評価用語38語のうち8語の評価スコアを高精度で予測する回帰式を得た.さらに変数選択のためにステップワイズPLS-VIPを実施し,回帰式の目的変数とした官能評価スコアと嗜好度に対する寄与度の高い品質特性パラメータを特定し,その寄与順位と寄与方向を明らかにした.その結果,品質特性パラメータと官能評価スコアおよび嗜好度の間の相互関係には,粘弾性パラメータと香味属性の官能評価スコアのように異なる評価属性であっても,高いVIP値,すなわち高い重要度を示す場合があることが確認され,それらをANNの入力層に直接適用することによって品質特性パラメータと官能評価スコアおよび嗜好度を高精度で予測するモデリングが構築可能となった.
    このステップワイズPLS-VIPとANNを直列に組み合わせたモデリング手法によって,複数の品質属性をデータセットとする場合でも,それらを区別することなく品質パラメータから官能評価スコアまたは嗜好度との相互関係を高精度で予測し,また,官能評価スコアまたは嗜好度に影響を及ぼす品質パラメータを特定して数値シミュレーションにより,これらを制御することが可能となった.そのためこのモデリング手法には,従来,サンプルの試作と官能評価を反復して実施されてきた新商品開発の労力や時間を軽減する効果が期待されている.
  • 田中 裕之, 江草 真由美, 竹村 圭弘, 岩田 侑香里, 永江 知音, 伊福 伸介, 上中 弘典
    2016 年 63 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/01
    ジャーナル フリー
    バイオナノファイバーは,自然界に広く存在するキチンやキトサンなどのバイオポリマーから作られる.バイオナノファイバーがもつ構造的特性は,食品加工において有用であると考えられるので,本研究では,それらを小麦粉に加え,製パン性を評価した.キチンやキトサンなどのバイオポリマーは,水に不溶なため,製パン性に求められるパン容積の増大に貢献しなかった.一方,キチンナノファイバーを加えた小麦粉では,有意にパン容積が増大された.キトサンナノファイバーを加えた小麦粉の場合,簡易評価ではSDS沈降量の高まりは見られたが,生地強度は強化されず,製パン試験でのパン容積も増大されなかった.キチンナノファイバーの構造は,他のナノファイバーと比べより強いため,製パン性の改良に貢献したと考えられる.
技術論文
  • 河口 俊義, 秋山 正行, 大西 正展, 岳上 美紗子, 小泉 玲子, 溝田 泰達, 大川 禎一郎, 住 正宏, 岩渕 久克
    2016 年 63 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,均質圧力の程度がコーヒーと苺フレーバード乳飲料の官能特性と嗜好性,およびレトロネイザルアロマのリリースに及ぼす影響について,官能評価とRASを用いたGC-MS分析により調べた.
    分析型官能評価において,苺乳飲料は,均質圧力の高い方が,「濃厚さ」,「脂肪感」,「コク」が有意に強くなった(2<25 MPa).一方,嗜好型官能評価において,コーヒーフレーバード乳飲料は,均質圧力の高い方(2<25 MPa, 7<25 MPa)が有意においしいと評価された.以上の官能評価結果から,フレーバード乳飲料の官能特性または嗜好性は,均質圧力によって有意に影響を受けることが示された.
    また,苺の主要な香気成分を含む乳脂肪乳化液において,log P値の比較的小さい6成分(Ethyl acetate, Ethyl propionate, Methyl 2-metylbutyrate, Ethyl butyrate, Ethyl 2-metylbutyrate, 2-Methylbuthyl acetate)のRAS香気量は,均質圧力が高くなる(7<14 MPa)と,有意に増加することが示された.
    しかしながら,均質圧力の異なる乳脂肪乳化液のRAS香気量の比を再現した,同均質圧力処理(同乳脂肪粒子径)の苺乳飲料の分析型官能評価の結果,全ての属性項目において有意な差は認められなかった.
    以上より,フレーバード乳飲料の官能特性に及ぼす均質圧力の有意な影響は,RAS香気リリースの違いに因るだけではなく,牛乳で報告11) している脂肪粒子径の影響と,RAS香気リリースとの相互の影響に因る可能性が示唆された.
  • 古谷 規行, 小川 昂志, 藤井 千晃, 川添 禎浩
    2016 年 63 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/01
    ジャーナル フリー
    高イソフラボン含有黒大豆 ‘高イソ黒65号’ は市場評価の高い ‘新丹波黒’ のイソフラボン含量を向上させた品種である.‘高イソ黒65号’ の煮豆や豆腐などを調製して,加工品のイソフラボンおよびアントシアニン含量を調査した.さらに子実や加工品の抗酸化能を調査した.‘高イソ黒65号’ は子実のイソフラボン含量が532.4 mg/100g-DWで,‘新丹波黒’ の2倍以上であった.‘高イソ黒65号’ の加工品のイソフラボン含量は ‘新丹波黒’ の2倍以上で有意に高かった.調理によりマロニル化配糖体が減少しグリコシドが増加した.調製方法により加工品のイソフラボン含量や組成が異なり,蒸し豆はイソフラボンの損失が抑えられ,豆腐ではアグリコンの生成量が多くなった.また,アントシアニン含量は子実や加工品で ‘新丹波黒’ と遜色ない結果であった.‘高イソ黒65号’ の子実や加工品の機能性は子実およびいずれの加工品においても ‘新丹波黒’ よりH-ORAC値が高くなった.このように丹波黒大豆系品種 ‘高イソ黒65号’ は,イソフラボンおよびアントシアニン含量が高く,機能性が高い大粒黒大豆で,その特性を生かす加工品として蒸し豆や豆腐が有望と考えられた.
研究ノート
  • 佐津川 満, 河本 哲宏, 山中 なつみ, 車 炳允, 禹 済泰, 小川 宣子
    2016 年 63 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2016/01/25
    公開日: 2016/03/01
    ジャーナル フリー
    ガックの種衣は栄養的に優れた食品であるが,健康機能を調べられた例はない.そこで,ラットにガック種衣凍結乾燥粉末を添加した高脂肪食を4週間与え脂質代謝への影響を調べた.その結果,5%および10%ガック食群では,高脂肪食群に比べて,肝臓中トリグリセリドおよびコレステロール量の有意な減少が認められ,10%ガック食群では高脂肪食群に比べて,血中HDL-コレステロール濃度の有意な増加が認められた.また,5%および10%ガック食群では,高脂肪食群に比べて,糞便中コレステロール量の有意な増加が認められた.以上から,ガック種衣の摂取は脂肪肝に抑制的な作用を示すことが明らかになった.
解説
シリーズ―研究小集会(第22回)果汁部会
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