本研究では,均質圧力の程度がコーヒーと苺フレーバード乳飲料の官能特性と嗜好性,およびレトロネイザルアロマのリリースに及ぼす影響について,官能評価とRASを用いたGC-MS分析により調べた.
分析型官能評価において,苺乳飲料は,均質圧力の高い方が,「濃厚さ」,「脂肪感」,「コク」が有意に強くなった(2<25 MPa).一方,嗜好型官能評価において,コーヒーフレーバード乳飲料は,均質圧力の高い方(2<25 MPa, 7<25 MPa)が有意においしいと評価された.以上の官能評価結果から,フレーバード乳飲料の官能特性または嗜好性は,均質圧力によって有意に影響を受けることが示された.
また,苺の主要な香気成分を含む乳脂肪乳化液において,log
P値の比較的小さい6成分(Ethyl acetate, Ethyl propionate, Methyl 2-metylbutyrate, Ethyl butyrate, Ethyl 2-metylbutyrate, 2-Methylbuthyl acetate)のRAS香気量は,均質圧力が高くなる(7<14 MPa)と,有意に増加することが示された.
しかしながら,均質圧力の異なる乳脂肪乳化液のRAS香気量の比を再現した,同均質圧力処理(同乳脂肪粒子径)の苺乳飲料の分析型官能評価の結果,全ての属性項目において有意な差は認められなかった.
以上より,フレーバード乳飲料の官能特性に及ぼす均質圧力の有意な影響は,RAS香気リリースの違いに因るだけではなく,牛乳で報告
11) している脂肪粒子径の影響と,RAS香気リリースとの相互の影響に因る可能性が示唆された.
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