日本食品科学工学会誌
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50 巻, 2 号
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  • 濱中 大介, 内野 敏剛, 胡 文忠, 田中 俊一郎, 荒巻 真介
    2003 年 50 巻 2 号 p. 51-56
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    B.subtilis胞子およびB.pumilus胞子の不活性化と損傷に及ぼす赤外線照射の影響について実験的研究を行った.滅菌蒸留水に懸濁した耐熱性の異なるこれらの胞子に対し,加熱履歴を同等とした温浴による殺菌処理と比較検討した後,原料穀物の状態を想定し,胞子懸濁液を風乾したものに赤外線を直接照射したときの細菌胞子の生存率および全生存菌数に対する損傷菌の存在率(損傷率)について調査した.さらに,高温空気の対流による加熱殺菌処理を行い,赤外線を直接照射した場合と比較検討した結果,以下の知見を得た.
    (1) 滅菌蒸留水に懸濁した細菌胞子に対するIR処理は,温浴によるHC処理よりも高い殺菌効果が得られた.
    (2) 懸濁状態では,99%の胞子の死滅にB.subtilis胞子では約8分,B.pumilus胞子では約12分のIR処理が必要であり,赤外線照射の場合,両胞子間で死滅時間と差があることが明らかとなった.
    (3) IR処理は,懸濁状態のB.subtilis胞子とB.pumilus胞子に対し,懸濁液全体の温度が同じでも,4分以内で菌体に損傷を与え,HC処理に比べて効果的であることが明らかとなった.
    (4) 乾燥した胞子懸濁液への赤外線の直接照射は,懸濁状態での照射や200°C一定のオーブンによる対流加熱処理よりも有効に細菌胞子を不活性化することが可能であった.また,胞子の耐熱性の高低にかかわらず,ほぼ同程度の時間(1.0kW:1分,0.5kW:2分)で90%の胞子を死滅することができた.
    (5) 直接照射ではB.pumilus胞子では,1.0kWで0.2分,0.5kWで0.5分後に50%の胞子が損傷し,照射時間に伴い損傷率は上昇したのに対し,B.subtilis胞子の損傷率は1.0および0.5kWでそれぞれ40および70%以下の値を推移したことから,乾燥状態では,B.pumilus胞子の方がB.subtilis胞子よりもIR加熱による損傷を受けやすいものと思われる.
  • 狩野 幹人, 中西 健一, 橋本 篤, 亀岡 孝治
    2003 年 50 巻 2 号 p. 57-62
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    最も単純なオリゴ糖である二糖類に着目し,構造および糖分子と水との相互作用が赤外分光特性に及ぼす影響について,溶媒効果に着目した解析を行った結果,以下の基礎的知見を得た.
    (1) D-グルコース2分子が結合した二糖類では,吸収ピークはグルコースとほぼ同じ波数に存在した.また,トレハロースは他の二糖類と比較して特異的なスペクトルパターンを有することが示された.
    (2) 同一濃度のH2O溶液中およびD2O溶液中の二糖類スペクトルにおいて,官能基の吸収はほぼ同じ波数に存在し,溶媒効果はピーク強度の違いに認あられた.
    (3) 同型のグリコシド結合を有するトレハロースとスクロースにおいて,トレハロースは溶媒種の違いや濃度変化の影響を受けにくい糖であることが示された.
    (4) 溶媒効果に対する官能基の挙動に着目することで,水溶液中におけるオリゴ糖について,糖の構造が赤外分光特性に及ぼす影響を把握可能であることが示唆された.
  • 須見 洋行, 長田 国彦, 矢田貝 智恵子, 内藤 佐和, 柳澤 泰任
    2003 年 50 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    高濃度のビタミンK1が海藻類および甘藷葉部中に認められた.海藻としてはフダラク(Pachymeniopsis lanceolata),ミル(Codium fragile)など日本で古来から食されていた種で含有量が高いこと,また甘藷は8種類のなかでも特にベニサツマの葉部には100g当り7.4mgと著しく多いことを初めて明らかにした.なお,この値はこれまでの食品分析で知られている抹茶での最高値(約4.4mg/100g)をはるかに越えるものであった.
    甘藷葉部のK1については,一般の試薬としてのK1よりもはるかに水に溶けやすい物であり,また光に対しても安定であることが確認された.
  • 竹中 敦司, 岡田 公, 岩井 健太, 綾木 義和
    2003 年 50 巻 2 号 p. 67-71
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アセトンで脱脂した4.0gのマゴイ鱗を200cm3の0.025∼1.0moldm-3(M)の希塩酸で温度15∼30°C,時間15∼60分の条件で処理し,粗コラーゲンを分離した.ヒドロキシプロリンの含量および電気泳動の結果から,粗コラーゲンはtype Iコラーゲンであると確認した.また,粗コラーゲンの収率は脱脂鱗に対しおよそ80%であり,コイ鱗には粗コラーゲンが以前に報告したマイワシの鱗の2倍程度多量に含まれていると考えられた.さらに,希塩酸処理の最適条件は,希塩酸濃度0.10M,処理時間60分,処理温度25∼30°Cであると結論付けた.
    脱脂鱗を1000°Cで加熱して得られた灰分の分析から,コイの鱗には,CdやCuがほとんど含まれていないため,分離されたコラーゲンの食品等への応用は可能であると考えられた.
  • 岡本 威明, 吉見 一真, 立花 宏文, 山田 耕路
    2003 年 50 巻 2 号 p. 72-77
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    マウス脾臓リンパ球の増殖および抗体産生に及ぼすカゼイン,ホエータンパク質,大豆タンパク質,小麦グルテンおよびペプチドの影響について検討した.牛β-カゼインは,マウス脾臓リンパ球のIgA,IgGおよびIgM産生を添加用量依存的に増強した.また,カゼイン由来ペプチドはIgA産生を増強し,小麦グルテン由来ペプチドはIgA,IgGおよびIgM産生を増強した.一方,ホエー,大豆タンパク質およびペプチドには脾臓リンパ球に対する抗体産生増強効果は認められなかった.また,β-カゼイン刺激により脾臓リンパ球における抗体産生細胞数の割合の増加が認められた.したがって,β-カゼインの抗体産生増強効果の発現には抗体産生細胞数の増加が関与することが示唆された.しかし,カゼイン由来ペプチド刺激による抗体産生細胞数の変化は認められず,カゼイン由来ペプチドのIgA産生増強効果には抗体産生細胞数の変化は関与していないことが示唆された.これらの結果より,カゼインおよび小麦グルテン由来ペプチドは生体内での免疫調節機能が期待され,免疫調節食品素材として利用できると思われる.
  • 三島 敏, 平岩 呂子, 荒木 陽子
    2003 年 50 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    様々な蜜源からのハチミツ54サンプル,中国産異性化糖9サンプルおよび国内産異性化糖2サンプルの糖分析をゲルろ過法とHPLC法との組み合わせ法(新法)で検討した.その結果,新法では従来のTLC法における(1)(1)分析に長時間を要すること(2)異性化糖の存在の判断が条件により異なりばらつくこと等の問題点を解決し,異性化糖添加ハチミツの検出に優れた評価手法であることが確認された.
    従来法は,分析機関により判断結果が異なることがあり,さらに新法の結果が従来法の結果とも食い違いが認められる場合がある.即ち,新法においてハチミツ試料からのオリゴ糖を損失することなく前処理し,さらにポストカラムHPLC法にて高感度で検出されるため,従来法では無添加ハチミツとされていたものでも異性化糖添加ハチミツと判断される場合がある.新法は正確にかつ再現性良く異性化糖の混入を判断でき従来法を代替する極めて有用な手法として提案したい.
  • 高下 崇, 石川(高野) 祐子, 小堀 真珠子, 八巻 幸二
    2003 年 50 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    動脈硬化症において,LDLは,活性酸素により酸化を受け,酸化LDLとなってその引き金となるため,LDLの酸化抑制は動脈硬化予防において重要と考えられる.そこで試料が微量で,検出感度の高いキャピラリー電気泳動法を用いて,抗酸化食品成分であるフラボノイドのLDLの酸化に対する効果を検討した.LDLの酸化反応を銅イオンを用いて行った結果,LDLのピークはインキュベーション時間と共に移動度が変化した.抗酸化剤として広く用いられているBHTを用いて銅イオンによる酸化実験を行ったところ,LDLの泳動時間延長が抑制され,銅イオンによるLDL酸化がBHTによって抑制されることが示された.さらにフラボノイドによるLDL酸化抑制効果を調べた結果,B環の水酸基の数が重要であった.銅イオンによるLDL酸化は,生体内で想定される活性酸素による酸化と類似しているため生体条件に近い系で行うことができる.さらにキャピラリー電気泳動を用いる本法は,感度や少量の試料で測定可能である点などで優れていると思われる.
  • 玉村 隆子, 和田 浩二, 種岡 文恵, 高良 健作, 石川 信夫, 仲宗根 洋子, 知念 功
    2003 年 50 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    蒸留直後の泡盛をカメ貯蔵した場合の香気特性の変化について,官能評価,香気成分濃度及びにおいかぎ分析により検討した結果,蒸留直後と貯蔵2ヶ月の泡盛は官能的に刺激の点で異なると判定された.貯蔵に伴いほとんどの成分で濃度の減少が確認されたが,古酒熟成に見られるような高級脂肪酸の酸化分解にともなう分解産物の増加は確認されなかった.においかぎを行った結果,におい強度を表すFDファクターの合計は貯蔵が進むにつれて減少したが,減少傾向は成分により異なっていた.
  • 神山 紀子, 松中 仁
    2003 年 50 巻 2 号 p. 96-99
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    大麦の加熱後の褐変に対する無機元素の影響を検討するため,大麦粉ペーストに内在する無機元素の0.3∼10倍に相当する濃度の無機塩やキレートを添加し,90°Cで2時間加熱した褐変後の色相に対する効果を調べた.銅と鉄では顕著に加熱後のL*値が低下し,濃度依存的な褐変促進効果がみられた.DTPA,EDTAやフィチン酸(0.1∼10mM)の添加で褐変が抑制されたことから,内在性の銅や鉄が褐変促進的に作用していることが示唆された.塩化亜鉛(0.05∼0.5mM)及びカルシウム塩(2∼20mM)は加熱後のL*値を増加させ,低濃度で褐変抑制効果があることが明らかとなった.
  • 2003 年 50 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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