日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
64 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
報文
  • 髙橋 あずさ, 奥村 純子, 森田 祐二, 知地 英征
    2017 年 64 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    ベタレインは赤紫色のベタシアニンと橙黄色素のベタキサンチンからなる色素であり,アントシアニンやルチンなどのフラボノイドとは全く異なったベタラミン酸系含窒素色素である.この色素は中心子目(ナデシコ目)植物に特異的に含有しているが,その生体内吸収動態や生理機能については未だ不明な点が多い.本研究では,ベタレインの吸収動態と生体内抗酸化性を解明するために,小腸結紮ループおよび胃結紮ループ実験による血中代謝産物の経時的変化と生体内抗酸化性を調べた.下大静脈および門脈血清のベタシアニン濃度を分析した結果,配糖体(ベタニンおよびイソベタニン)が検出され,下大静脈では10分後に,門脈では15分後にそれぞれ色素量が最大値に達した.一方,門脈血清中のインディカキサンチン(ベタキサンチン)を分析した結果,5分後に色素量が最大値に達した.また,胃からの吸収動態を調べた結果,ベタシアニンは安定的に吸収されるが,インディカキサンチンは胃から吸収されない事が明らかになった.これらの結果から,赤紫色のベタシアニンは,主に胃と小腸から急速に吸収され,配糖体のベタニンとイソベタニンのまま生体内を循環することが明らかとなった.また,橙黄色のベタキサンチン(インディカキサンチン)は胃からは吸収されず小腸から急速に吸収され,ベタシアニンとは異なる吸収経路を辿ることが推定される.

  • 中村 善行, 増田 亮一, 藏之内 利和, 片山 健二
    2017 年 64 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    β-アミラーゼ活性の異なるサツマイモ6品種の塊根を蒸した後の肉質と残存デンプン含有率との関係を調べた.活性の比較的高い品種「べにはるか」および「ひめあやか」の蒸した塊根では加熱前のデンプンの約47%が残存したが,活性が中程度の品種「高系14号」および「タマユタカ」,活性を殆ど持たない品種「オキコガネ」および「サツマヒカリ」のデンプン残存率はそれぞれ約62%,約93%であった.蒸す前後のデンプン含有率の差は蒸した塊根のマルトース含有率から見積もった塊根重量当たりのデンプン分解量とよく一致した.また,デンプン分解率(蒸した塊根のデンプン含有率/未加熱塊根のデンプン含有率×100)と未加熱塊根のβ-アミラーゼ活性との間に高い正相関が認められた.これらのことから,蒸したサツマイモ塊根におけるデンプンの減少はβ-アミラーゼによるデンプン分解に起因し,蒸したサツマイモ塊根にはβ-アミラーゼによって糖化分解されなかったデンプンが残存すると考えられた.蒸した塊根の肉質は未加熱より蒸した塊根のデンプン含有率との関連が深かったことから,デンプン含有率とともにβ-アミラーゼ活性が蒸した塊根の肉質に関わると考えられた.β-アミラーゼ活性極低品種が同程度のデンプン含有率でβ-アミラーゼ活性を有する他の品種に比べ,蒸した塊根の肉質が粉質傾向であるのは,蒸してもデンプンが殆ど分解されないためと推察された.

  • 成田 正直, 古田 智絵, 宮崎 亜希子, 佐藤 暁之, 清水 茂雅, 蛯谷 幸司, 佐々木 茂文
    2017 年 64 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    ホタテガイの軟体部を貝柱,小柱,生殖腺,鰓,中腸腺,外套膜の6部位に分離した.これらを5°Cで2日間保蔵し経時的に臭気の強さ,不快感の有無について官能評価を行った.また,GC-MSによる臭気成分の分析,VB-N,TBA-RS,低温細菌数の測定を行った.その結果,いずれの部位も水揚げ直後から臭気が認識されることがわかった.また,臭気が強まるにつれて不快感が強くなっており,保蔵中に不快臭物質が増加あるいは生成していることが示唆された.GC-MS分析から,主な臭気成分としてDMS,(5Z) -octa-1,5-dien-3-ol,1-penten-3-ol,hexanalなどが検出された.これらの成分は部位によって異なっており,貝柱と中腸腺は硫化物,小柱と生殖腺はアルコール,鰓と外套膜はアルコールおよびアルデヒドが主な臭気成分と考えられる.生鮮ホタテガイの臭気はこれらの物質によって形成されていると考えられる.また,VB-Nは不快臭生成の指標になることが示唆された.

  • 氏原 ともみ, 林 宣之, 陳 栄剛, 羽原 正秋, 池崎 秀和
    2017 年 64 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    味覚センサ装置を用いたリーフ緑茶の渋味強度とうま味強度測定法について,室間共同試験を行った.8試験室のデータより,併行標準偏差および室間再現標準偏差を算出した.味強度の評価に用いるスケールの一目盛りを,1.44倍の濃度差を持つ2つの標準物質溶液に対するセンサ出力値の差と設定すると,本試験で観測された最大の室間再現許容差は,この一目盛りを超えることはなかった.

技術論文
  • 広瀬 直人, 前田 剛希, 恩田 聡, 正田 守幸, 宮城 一菜, 和田 浩二, 太田 英明
    2017 年 64 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    シークワシャー搾汁残渣を原料として,市販シークワシャー果汁と同程度の7.5mg/100mLのノビレチンを含有するシークワシャー抽出酢の製造条件を開発した.

    (1)搾汁残渣より種子とじょうのう膜を除去して搾汁果皮を調製し,乾燥処理を行わずに醸造酢で抽出すると,ポリメトキシフラボン類を含有し,リモニンが少なく苦味が弱い抽出酢が得られた.

    (2)搾汁果皮20% (w/w)と醸造酢80% (w/w)を用いると,ノビレチンを7.5mg/100mL含有する抽出酢が得られた.抽出処理の破砕回数は10秒間で4∼5回が適した.

    (3)抽出酢を常温保存すると,ポリメトキシフラボン類は安定であったが,モノテルペン類は急激に減少し,モノテルペンアルコール類は緩やかに減少した.

  • 山田 大樹, 井上 俊逸, 吉野 信次, 坪井 一将, 小疇 浩, 山内 宏昭
    2017 年 64 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    湯種製法での製パンにおいて,湯種製造中に加熱変性した小麦グルテンが生地の製パン性にどのような影響を及ぼすかについて,グルテンと小麦澱粉を用いた疑似湯種を用いて検討を行った.結果として,湯種中のHGはコントロールに比べて生地形成時間を延長させ,生地のGRD,パンのSLVを増加させた.これらには,湯種中のグルテンが加熱部分変性し高分子化したことが関係している可能性が示唆された.

    さらに,HGを製パンに用いることでパンの保存中の含水率が増加し,パンの老化が抑制されることが判った.この老化抑制には,湯種中のHGがより多く保水することでパン中の水分含量を高い状態で維持し糊化澱粉の老化を抑制することが関係していると考えられた.これらの結果から,HGの添加(湯種製造中のグルテンの部分加熱変性)は,これまでの報告と異なり湯種製法のパン生地の製パン性を向上させ,得られたパンの老化を抑制することが明らかになった.

研究ノート
  • 宮脇 長人, 表 千晶, 小栁 喬, 笹木 哲也, 武 春美, 松田 章, 北野 滋
    2017 年 64 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    小型円筒型界面前進凍結濃縮試験装置およびスケールアップ用装置としての循環流壁面冷却型界面前進凍結濃縮装置を用いて日本酒の凍結濃縮を行った.前者においては,市販清酒のアルコール度数を12.5vol-%から24.0%に,また,後者においては市販日本酒原酒のアルコール度数を17.0vol-%から27.1%に濃縮することができた.後者の濃縮酒については,これをアルコール濃度基準で濃縮還元し,濃縮前試料と有機酸分布および香気成分分布を比較した結果,濃縮前後でほとんど変化はなく,界面前進凍結濃縮法により成分分布プロフィールを維持したままの濃縮が可能となることがわかった.このことは,濃縮前と比較して成分分布が大きく変化するこれまでの蒸留酒とは異なる,これまでにない新カテゴリーの日本酒および各種アルコール飲料の製造が可能となることを意味している.

解説
シリーズ—研究小集会(第27回)卵部会
  • 久能 昌朗
    2017 年 64 巻 2 号 p. 102-103
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー
  • 大池 秀明
    2017 年 64 巻 2 号 p. 104-107
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    Japan has become a “super-aged society” in which over 21% of the population is aged≥65 years. Many Japanese people are seeking functional foods that can prevent age-related diseases. Thus, we developed and applied a method of evaluating anti-aging foods based on age-related hearing loss (AHL) in mice. We found that the intake of a diet containing whole egg (8% or 20% of the diet) or 13.6% egg yolks for 6 months delayed the development of AHL, whereas a diet containing 6.4% egg whites had no effect. This indicates that egg yolk has the potential to prevent age-related diseases.

  • 美濃口 直和, 中村 和久, 木野 勝敏
    2017 年 64 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2017/02/15
    公開日: 2017/03/01
    ジャーナル フリー

    Eggs of the Nagoya breed of chickens are characterized by a bright cherry blossom-colored eggshell and a thick, full-flavored yolk. The eggshell is covered by white spots of calcium carbonate, while the yolk has a deep color and a higher ratio of yolk weight compared to that of White Leghorn chickens. As for nutritional characteristics, the lipid content of the yolk is significantly higher in Nagoya compared to that in White Leghorn. As for physical characteristics, the yolk viscosity of eggs is higher in Nagoya than that in White Leghorn. Recent findings using an artificial taste sensor revealed the high umami taste intensity of Nagoya egg yolk compared to that of White Leghorn. As for processing properties, the emulsifying ability of the yolk of Nagoya is superior to that of White Leghorn. The hardness and elastic modulus are high in the boiled eggs of Nagoya compared to those of White Leghorn. From these findings, Nagoya eggs are characterized by the yolk. Thus, it is proposed that this characteristic is one of factors responsible for the palatability of eggs of Nagoya chickens.

feedback
Top